春の連休その一

ここ五年間くらい、春、夏、冬の長期休暇をどう過ごしたかをメモして残しているのだが、今回はここに記す。最終日にまとめて書こうとしても、忘れていること、書き漏らすことが確実に出るので、小分けにして書いていく。と言っても、子供部屋おじさんなので帰省はなく、旅行へも行かないので、せっかくの連休も持て余しているのだが。移動費も宿泊費も高騰し、道中も観光地も大混雑、家族がいればこんな時でも出かけねばならないだろうが、独り者の気楽さ、渋滞・人混み大嫌いの自分としては絶対に遠出はしないと決めている。なぜ高い金を払って不快を耐えねばならない。都内の映画館を巡ったり、本棚をDIYできれば自分としてはこの連休、大変有意義に過ごせたと満足できる。あとは、行ったことのない店で食事をしてみたい。何事も初めて、という経験はいい。日常に対するいいスパイスになるし、気分転換になる。通常の土日休みでも、家でだらだら過ごしたのと、普段乗らない路線で初めての店へ行き、買い物したり食事をしたりしたのとでは、明けの月曜日の朝の気分が違う。前者に比べ後者は前向きになれる、ような気がする。以前、一年間で三つの部署で研修させられたことがあったが、その年の暮れには、一年がとても長かったように感じたのを覚えている。学校でも四月は長く感じた。つまりは、普段と違う過ごし方イコール濃密な時間を過ごすということなのだろう。逆に、刺激なくルーチンワークを反復することで時間は瞬く間に過ぎていくのだろう。

月曜日。午後散髪。アマプラで「スターシップ・トゥルーパーズ」鑑賞。結構古い映画なのに特撮技術が今見ても違和感ないのに感心。バグズが本当気持ち悪い。やたらと血が流れるのも迫力あっていい。登場人物に花がないのが残念。「バトルロワイアル特別編」を続けて見ようとして、40分程度で止す。少年少女の演技が軽く感じられて無理だった。図書館で「承認欲求の呪縛」を借りて50頁ほど読む。昼・夜ともにスーパーの惣菜。火曜日。雨、しかも寒い。ホームセンターを二軒周り、DIY用の板の下見。結局工作はやめ、板を積むだけにする。また明日改めて買いに行く。昼はホームセンター内フードコートのモス。帰宅して五年前買ったASUSのラップトップ内の写真を整理。起動するのも一苦労。動作がフリーズしたかと思うほど重い。プルースト読書。できれば連休中に「ゲルマントの方Ⅱ」を読了したい。夕方、イオンシネマ板橋で「岬の兄妹」鑑賞。解雇されて無職の、足の不自由な兄が、生活苦から自閉症の妹に売春をさせるという重すぎるストーリー。つげ義晴か川崎長太郎かというような掘っ建て小屋での暮らしは「万引き家族」の比じゃない貧しさ。坂道を転げ落ちるように物事がどんどん悪い方へと向かっていき、フィクションとわかっていながら見ていて甚だ辛い。これは映像だけが持ち得る一種の説得力のようなもの、パワーだろう。凄い映画だけど重いし、暗いし、救いがないし、で、一度見れば十分、というか二度と見たくない。なんか、人間が、時に露悪的なまでに醜く描かれていて、ウンコの場面とか若干引いてしまうレベルで汚いし、内容を知ってしまうと二度見るのはしんどい。妹役の人の演技は凄い。この映画を見ているとき、後ろの方に座っていた老人夫婦が90分間ずっと喋っていて、しかもひそひそ小声でなく普通の音声で、映画館って声が響くし、客は20人程度で周りは静まり返っているのに(内容も内容だけに)、あまつさえ上映前に「携帯の電源切れ」「前の席を蹴るな」と並んで「上映中は静かに」と注意が出ていて、自分だってコナンやアベンジャーズみたいなかしこまって見るものじゃない、おもいきり楽しみながら見るタイプの映画なら喋っている人がいても仕方ないと許容できるが、「岬の兄妹」では止めてくれよとイライラ。よっぽど、うるせえと怒鳴ってやろうかと思ったが、いかんせん誰が喋っているのか自分の後方なので把握できないし、それが老夫婦だとわかったのは上映後、館内が明るくなってからだった。案の定、近くにいたらしき男性に注意されていたが、どうせなら上映中に注意してくれたらよかったのにと身勝手にも思ってしまった。自分は物音に敏感なほう。しかし爺さんの方は他の客が見終わって帰りかけているのに席に座ってスマホいじっていて、想像するにイオンに買い物にでも来て、せっかくの連休だから夫婦揃って普段は見ない映画でも見ようとして、けれどもアベンジャーズやコナンやキングダムではないし…と消去法で「岬の兄妹」を選んだけれど入り込めなかった…のではなかろうか。あんなに耳障りな客は自分は映画館で初めて遭遇した。高校生の頃の自分だって、少なくとも上映中はもっと行儀よくしていたものだが。と愚痴めいたことを書いているうちに平成が終わってしまった。