今週の休日

土曜日。9:35から109シネマズ菖蒲にて「天気の子」IMAX2D鑑賞。圏央道を使っても40分程度かかってしまうのだが、最寄りのIMAXシアターはおそらくここ。新しくできた池袋や新宿TOHOより若干近いし、車で行けるし、混んでいないのでIMAXを見たいときはここを利用している。会員カードも作った。同料金なのでエグゼクティブシート利用。いつもの癖で端にしたら、巨大なスクリーンは湾曲しているため若干見づらく。次回からは中央寄りにしたい。映画の感想としては、決して退屈はしないが「君の名は」を初めて見たときのような衝撃はなく。

「君の名は」の時は予備知識ゼロの状態で見に行き、「言の葉の庭」の監督がこんな長篇を作ったことに驚嘆したものだった。「君の名は」は「ガキっぽい」だの何だのと叩かれもしたようだが、そう言った人たちは以前の新海作品をよく知らない人たちではないか。自分が新海誠を知ったきっかけはニコニコ動画にアップされていた「秒速5センチメートル」だった。初恋に呪縛された男性が、奇跡のようなすれ違いのあとで遂に過去の幻影から解放される3話のオムニバス。話の筋も、当時、陰キャで童貞的ロマンティシズムに浸りがちだった自分のハートを撃ったが、何より魅せられたのは現実と見紛う、いやそれ以上に美しい風景の数々だった。新海誠の手にかかると、電車の窓から見える雑居ビル群や、空き缶でカゴがいっぱいになった自転車や、水道の蛇口さえも美しくなってしまう。ましてや、種子島の田舎道や歩道に降り注ぐ桜の花びらなどは、ほとんどアニメを見ていなかった自分のような人間には、こんな表現が可能なのか、と素直に驚いたものだった。その後ブルーレイを買って何度も視聴し、報われない主人公に自分を重ねて酔うという、えらく気持ち悪いことをしていた。小説も漫画も読んだ。今でも自分は「秒速」が新海作品の中で(最良とは言わないが)最も好きだ。それから「ほしのこえ」「雲の向こう」を視聴。どちらも荒いと感じた。新海作品を初めて劇場で見たのは「星を追う子ども」で、期待していたのだが、何が描きたいのかいまいちわからず、「これジブリ?」と友人には言われ…主人公は先生でよかったんじゃ…などと思いモヤモヤ。二度見る気にもなれず。「言の葉の庭」は最寄りのユナイテッドでは上映せず、さいたま新都心まで見に行った(これがMOVIXさいたまへ行った最初だった)。上映時間が短くて、料金が通常より安かったように記憶している(うろ覚え)。上映したばかりなのに劇場ではもうブルーレイを販売していて珍しいバターンだった。こんなマイナーポエットの監督が、「君の名は」のような大スケールの作品を作ったのだから、初回鑑賞時の自分の感想はとにかく「新海誠すげー」に尽きた。隕石直撃による町の消滅(同年上映した「シン・ゴジラ」同様震災のメタファー)、ヒロインの死亡、と言う中盤の展開には驚いたし、山奥での束の間の再会の場面も、整合性とかどうでもよくなるほどに感動的だった。マイナス点と言えば音楽かけすぎでうるさかったくらい。ラストをハッピーエンドで締めて、監督は随分と趣味嗜好を抑えて、万人向きのエンタメ作品を作ったなあと思った。

「秒速」の頃から新海誠を知っている人間としては「天気の子」だって十分及第点だと思う。しかし今回はほぼ新宿周辺のみが舞台で、それと異常気象とはスケール感がちぐはぐな印象を受けた。「決定的に変わった世界の形」の意味には驚いたが。ヒロインはこれまでの新海作品では一番可愛かったと思う。しかし家出した主人公の両親が最後まで登場せず、ヒロインも小学生の弟と二人暮らし、大人と言えるのは須賀くらいで、この大人の不在、家族関係を無視してのボーイ・ミーツ・ガールはちょっと幼稚な感じがする。今作は、過去の新海作品ではほとんど描かれなかった社会のリアリティすなわち貧困の問題が堂々と扱われていて、その点は新鮮に感じた。作中の食事が貧乏飯ばかりで、ポテチ入れたチャーハンとか、ラブホテルのカップ麺や唐揚げを「ごちそう」と言ったり、少し胸が痛くなる。言の葉の庭とか、もっと食事美味しそうじゃなかったか。「君の名は」で描かれた東京が陽、「キラキラ」イメージの東京だったとしたら、今作のは陰、冒頭の求人トラックに始まり、都会の汚い部分が描かれていて新鮮だった。やたらとスポンサー企業の宣伝的な描写があったのは大人の事情か。やりすぎな気がしたが。「君の名は」のキャラクターを出す演出はやめてほしかった(嬉しかったという人もいるだろうが)。ヒロインはビル屋上の鳥居を潜っただけで巫女になれたようだが、こういう日本的?というのか、伝承とか儀式とかそういう要素も、「君の名は」以前の新海作品にはなかったものだ。廃ビルに見えたが、お供え物があったのだから誰かお詣りしていた場所なのか。昔の新海誠なら、最後は「雲の向こう」のようになっていたかもしれないが、今作もちゃんとハッピーエンドになっていて、自分はよかったと思う。報われない想い、届かない声、忘れられる恋、そんな話は現実だけで十分という気持ちがある。愛情が無になるストーリーを、誰が好んで見たいだろう。監督インタビューによると今後もこの方向性で行くということで応援したく思う。ただし今後は少年少女の恋愛だけでなく、彼らを取り巻く社会、環境、大人たちという異質な他者との関係といった要素も含まれるのを期待したい。「雲の向こう」の塔、「秒速」「言の葉」の独白にあったようなロマンティシズムへの憧憬は今作にもあって(自転車で日光を追いかける場面)、そういうところ、嫌いじゃないけど臭く感じてしまう。そう考えると「君の名は」の主人公は、新海作品の中でちょっと毛色の違うキャラだったな。もう一度劇場で見てもいい(見たい、というほどではない)と思える程度にはよかった。

映画を観たあと「かつや」にて期間限定マグロカツ丼を食す。安くてうまい。素晴らしい。帰宅して昼寝。プルースト読書など。

日曜日。10:20から恵比寿ガーデンシネマにて「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」鑑賞。プライベートシート利用。最近、金の力に頼ることが多くなってきたか。恵比寿へ来たのは一年ぶりくらいか、ガーデンプレイスのあたりは程よい賑わいでいいなあと思えた。映画館もおしゃれな感じ。映画自体はかなり退屈だった。図書館が市民生活のライフライン的な役割を担い、就業・起業支援、幼児への読み聞かせ、高齢者のサークル活動、読書会、演奏会、講演、演劇、さらにはルーターの貸し出しまでを行なっている。彼我の差に驚くし、見聞を深くするが、ナレーションなしで3時間半、しかも断片的に挿入されるので見ていて疲れる。職員たちのミーティングでは、予算、電子化、蔵書管理、若年者へのアピール、ホームレス対策などが議題に上るが、当然ながら結論が出るはずもなく。ただ、電子化はだいぶ進んでいるようで、また自宅にネット環境がないことを「闇」と述べていることから、情報格差、その不平等性を職員が強く感じていることが伝わってきた。確かに、公的なサポートの情報にすぐアクセスできるのと、役所へ行って相談しなくては何もわからない人とでは人生の難易度は変わるだろう。グーテンベルク聖書の展示が一瞬映ったり、書籍(電子ではない)の重要性を職員が訴える場面もあるのだが、図書館のドキュメンタリーでありながら、書籍そのものや読書という営みについての言及はほどんどなかったように思う(途中で寝ているが)。読書の効用、学ぶことの意味、そういった話も絡めてあると嬉しかったけれど、映画はこの図書館が現在置かれている状況、図書館を取り巻く環境、の話が多かった。人種問題への言及もかなり多かったように思う。自分は、図書館内部の案内や、現代における書物と読書のあり方(電子化の問題も含め)、職員、閲覧者へのインタビューなどを勝手に期待していたので思っていたのと違ったな、という残念さがある。何度も欠伸が出た。

帰宅途中、本屋で「中井久夫集11」と文芸文庫「異邦の香り」野崎歓を買う。後者は、2500円超の文庫なので、マケプレで単行本を買うつもりだったのだが、東大最終講義が付録だったので購入した。この人の「フランス小説の扉」というエッセイは、作者、作品に関する知識は小説の読書をさらに面白くしてくれることを教えてくれた。帰宅して洗濯。投票。夕飯は成城石井の弁当。