映画館でジブリ映画4本鑑賞

現在、全国の多くのシネコンで『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ゲド戦記』を特別上映している。なんとなく『千と千尋』を見たら感動したので、宮崎駿監督作品を全て見る流れになった。テレビの録画ならこれまでに何度となく見た3本をすべて劇場で見、せっかくの機会だからと昨日『ゲド戦記』を見て4本コンプリート。4本どれも劇場で鑑賞するのは初めて。自分は宮崎駿監督作品は『ハウル』『ポニョ』『風立ちぬ』を劇場で見た、遅れて来たジブリファン。他のジブリ映画は『アリエッティ』『コクリコ坂』『かぐや姫』は劇場で見た。結構見ているな。今更過ぎるが、いい機会なので見た感想を少し書いておく。

 

千と千尋の神隠し

平日夕方の回で30人くらい。高校生グループが目立った。宮崎駿監督作品で一番好き。冒頭の、道に迷って異世界に紛れ込む流れがスムーズで、フィクションは最初が一番負担を感じるものだが、それを感じさせないのだから凄い。終始絵が賑やかで、画面を見ているだけで楽しい。カオナシ、湯婆婆、坊、頭、釜爺などどれもキャラクターデザインが秀逸で、カオナシが暴走するシーンとか怖さもあるのに不快にならない。キャラクターの動きに躍動感があっていい。終盤、千尋とハクが空から落下していく時、千尋の涙がネズミと虫? を濡らすシーン、いいな。河の神からゴミを引き抜くシーンは気持ちいい。これは大人のために子供が頑張りやがて成長する話、なのだろうか。神話、民話の再話もあると見る。神隠しはもとより、異世界から出る際に後ろを振り返るな、とは日本やギリシアの神話だろう。この映画でもっとも好きなのは、海上の列車のシーン。音楽と相まって不思議な郷愁に誘われる。横に座ったカップルが、よりにもよってこのシーンで喋りはじめて台無し。このシーンに没頭しないなんてセンス悪いなあと思った。「いつも何度でも」は声、歌詞、メロディーのどれもが素晴らしく、胸に沁みる名曲。これを最初に見たから、他のジブリ映画も劇場で見ようという気になった。

 

風の谷のナウシカ

平日夕方の回で15人くらい。高校生グループはいなかった。中高年が大半で、ほぼ一人客だった。おそらくもっとも何度も見たジブリ映画。千と千尋の翌日に見たので、さすがに絵に古さを感じた。自分は普段、映画館では真ん中からやや後方の両端どちらかに座ることが多いのだが、初めて、かなり前方中央に座ってみた。スクリーンすべてを視界に収めるにはやや前過ぎて見辛さがあったが、前に誰もいなかったのでスクリーンを独占している感覚が味わえて新鮮だった。一番楽しみにしていた「焼き払え!」のシーンは、確かに迫力あったが、肌が粟立つほどではなかった。

 

もののけ姫

日曜日昼過ぎの回。50人くらいかもっと。日曜日だからか性別年齢層様々で、小さい子供のいる家族連れも何組かいた。娯楽としても教育としてもいいなあと思ったが、もののけ姫は小学校低学年くらいだと少し難しいかもしれない。中盤くらいで小さい子供と父親が出て行ったきり戻ってこなかった。この映画は冒頭からアクションで始まるのでいい。宮崎駿監督作品でもっともアクションが迫力ある映画だろう。ナウシカも自然と人間の共生がテーマだったと思うが、こちらの方がより直截。エボシが行う自然破壊によって、古くからの住処を追われた獣たち(古い神々)がタタリ神となり、恨みと呪いが広まっている。アシタカはその犠牲となった。しかしエボシの行いは自分の村の人々に豊かな暮らしをさせるため。実際、村の女たちは元気で、ここの方が下界よりよっぽどいい、と言い、病人たちの居場所もある。獣たち、人間たち、双方に言い分があり、彼ら各々の立場からは自分たちが正当と思える。ここに争いの難しさ、むなしさがある。アシタカは両者の間で板挟みになる。サンに向かって「ともに生きよう」と言うものの、人間と自然の共生についての落とし所は見つからないまま終わったように思う。

 

ゲド戦記

平日夕方の回。30人くらい。大学生くらいの年代の二人連れが多かった。初見。この映画は退屈だった。絵が、構図なのか色なのかのっぺりしていて見ていて単調な感じがする。キャラクターデザインがずんぐり過ぎて好みでない。中盤のテルーの歌うシーンが長過ぎてだれる。全体的に声優の演技が下手(特にウサギはひどかった)。中盤くらいから生と死についての哲学的な(しかしありきたりの域を出ない)やりとりが出てくるので面食らう。序盤にそんな話、していたか? 唐突なテーマ。世界やキャラクターたちの背景が説明不足でよくわからない。本当の名の重要性、アレンと父親との関係、テルーの正体は映画の根幹に関わる部分だからもっと掘り下げてほしい。父親を殺した動機は? 影のせいだというのは雑過ぎて納得しがたい。終盤の戦いではそれまで強かったハイタカが無力化して、アレンは魔法の剣で戦うが、そんな大層な武器だったのか。剣を抜くシーンがテンプレ過ぎて興醒め。よかったのはホートタウンに到着した場面くらい。これは見なくてもよかった。が、見ないとそれが分からない。

 

以上。映画館とテレビを比較すると、自分としては画面よりも音響の違いを大きく感じる。テレビだと音を「聞く」だが、映画館だと音を「浴びる」になる。自分にとっての映画館で見る醍醐味。「もののけ姫」以外の平日夕方に見た映画すべて、スタッフロール中に席を立つ観客がいなかったのはさすがジブリ、という気がした。自分は週末よくシネコンに行くけれど、普段見かけない若者グループが多かったのは新鮮だった(「翔んで埼玉」くらいか)。ないだろうけれど、もし第二弾があるなら、ラピュタ紅の豚ハウルかぐや姫がいい。