高尾山へ行ってきた

弊社カレンダーにより休日。日曜の夜、せっかくの平日休みだし、土日だと混んでいるどこかへ行きたくなり、アウトドア趣味などまるでないのに高尾山を登ってみようと思い立つ。5:00に起きて5:30過ぎに出発。まだ日の出前で真っ暗、車もほとんど走っていない。現地に到着する頃には明るくなるだろうが、暗い圏央道は正直少し恐怖心があった。若い頃はなぜあんなに自動車の運転が楽しめたのか今となっては不思議でならない。中年の今は運転は面倒なもの、怖いものである。いでたちはユニクロのドライTシャツ、無印のパーカー、パタゴニアのシェルジャケット、ユニクロのスエットパンツ、オニツカタイガーのメキシコ66(だいぶ靴底が擦り減っている)。五年くらい前に買って今は使っていないアークテリクスのリュックを久々に出す。舗装された1号路を行く予定なので服装はこんなでいいかなと楽観。水、ポカリ、飴、ウィダーは途中のコンビニで調達。ついでに朝食としてタマゴサンドとコーヒー。御朱印集めが趣味の連れに誘われ、高尾山には人生で5回くらい来ているが、ほぼ毎回ケーブルカー利用のためちゃんと登るのは今回が多分初めて。

 

暗いのと車が多いのとで圏央道はちょっと怖かったものの途中から太陽が昇って明るくなり、余裕を持った運転で無事到着。高尾山麓駐車場はがら空き。6:50頃、駅の前を通る。何年かぶりで来たらずいぶんモダンになっていて意外の感を受ける。駅前には人影なし。

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少し歩いて蕎麦屋の前を直進。肌寒いが手袋が欲しいほどではない。この先をもう少し行くとゲートが閉まっていて、一瞬入山できないのかと思ったが、車が入れないようにするための措置だった。ゲートの脇から入れた。登山スタート。 

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というか、振り返って思うのは、1号路は最初の登りが最大の難所だった。散歩の延長気分で来たのを後悔する程度にはきつかった。マスクで鼻と口を覆っていたのもあまりよくなかっただろう。少し進むと前方に数人いた。スタートして間もないのに水分補給して、暑くなってきたので上着を脱いだ。思いきり手を振りながら大股でゆっくり歩く。人はまばらだったので鼻マスク状態。疲れてくるとひたすら下を向いてしまう。運動習慣のない43歳、体力の衰えが悲しい。同時に、かつて、喘息持ちの同行者にこの道を登らせた己の酷さを反省する。

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しんどい思いで登ること30分、ようやくセーブポイントに到着。下の写真からもう少し進むとケーブルカー駅に出る。繰り返しになるがここまで来るのがきつかった。ケーブルカー駅を過ぎてからの道はかなりなだらか。登山靴はおろかスニーカーでなくても、ケーブルカーを利用すれば薬王院の参拝は余裕で可能だろう。自分はこのとき、今は小休止でこの先またここまで来るのと同じ程度の登りがあるのだろうと身構えていたが、結局なかった。この時間帯、人はほとんどいない。ここまで来るのに視認できたのは30人くらいではなかったか。

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山門を潜り、灯籠の並ぶ参道を行く。分岐は男坂を選択。

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第二のセーブポイントを過ぎると、まもなく薬王院。御神木がたくましい。自分は花粉症なので家を出るときアレグラを飲んできた。歩いている最中ずっと鼻が詰まっていて呼吸しづらかった。

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薬王院到着。うろ覚えだが多分このとき7:50くらい。ちょうど出発してから一時間。朝の寺社は神々しさが増して見える。全然人がいないシチュエーションも相まって、半ば夢のようだった。今年一年の健康。仕事運。金運。家族のことや親しい人のことを祈る。山頂まで20分との看板表示あり。最初のセーブポイントでは疲れるばかりでちっとも楽しくねえな、と思っていたが、ここまで来て、お参りをしたら少し気分が上がってきた。自分はもともとインドア派で、子供の頃から運動はあまり好きではない。体を動かすことが大儀であるのは小さい頃から一貫している。それでも歩くのはわりと好きである。しかしここまでの登りで足は疲れていた。肉体疲労は現実。映画『来る』で、柴田理恵演じる霊能者が亡霊に向かって、「神も仏も関係ない。信じられるのは痛みだけだ」と諭すシーンがあった。痛みではないが、疲労やだるさといった肉体の重み。肉体の哀しさ。これが人を現実に繋留するアンカーであるのかもしれない…などと歩きながら思う。

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奥の院を過ぎてからは未舗装の箇所もあるがそれでもウッドデッキ(ステアウェイ?)やらで固められているので山中を歩いている感はさほどない。ふと脇を見ると結構な山の中にいるのが意外に思えるほど。いつだったか、ここらへんまで来たものの雪が残っていて進めず、引き返したことがあった。しばらく行くと右側に黒いトイレの建物。これが見えたらもう山頂は目と鼻の先。ケーブルカー駅を過ぎてからはかなりゆるい道のりでありがたかった。

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ついに山頂到着。6500歩、75分の運動だった。山頂にいたのは15人くらい。展望台から望むと遥かに富士山が見えた。到着したものの特に感慨はなく。ここが折り返し地点、と思ったくらいで、足は疲れていたが歩きたくないと思うほどではなかったので、気分転換を兼ね、帰りは来たときの1号路とは別ルートで帰ることにする。

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はじめ、滝が見られる6号路を行こうとしたのだが、工事中のため通行禁止だった。6号路から途中で分岐する3合路は思い切り山の中へ入りそうで、スニーカーでは心許ない。結局、吊り橋のある4号路を選択。この道は過去に一度歩いたことがあった。進んですぐに泥っぽい路面に出くわして若干後悔。あまり汚れずに済みそうなところを恐る恐る踏みながら行く。変に跳んで転倒するのだけは避けたい。結構斜面が急な箇所があるので自然と勢いがついてしまう。すれ違う人たちと挨拶するのは、狭い山道で互いへの警戒心をとくマナーなのだろうか。伐採された倒木があったり、幹と幹の間を通ったりとだいぶ山中の風情があり、降りで通るなら悪くないルートだと思う。登りだと登山靴でないとかなりきつそう。で肝心の吊り橋は…。どんなだったか忘れていたので、見て、そして渡るのを楽しみにしていたのだが、実際に目の当たりにすると冬枯れの中で荒んでいるような印象を受け、ちょっと滅入ってしまった。吊り橋自体はしっかりしていて危険はないのだが、周囲の環境がワイルドに過ぎた。

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4号路はどこに出るのかと思ったら最初の山門のところで1号路と合流した。なるほど、ここだったか。来るときは全く視界に入っていなかった。トイレへ行こうとケーブルカー駅前まで行くと、ちょうど到着したらしくぞろぞろと30人くらいが降りてきて、ぼちぼち人が増え始めていた。緊急事態宣言下の平日とはいえ、高尾山である。ミシュランの観光ガイドでも高評価の観光地である。相当の人出があるはず。トイレへ行って驚いたのは、手洗いの蛇口が自動だったのと、なんとハンドソープが備えてあった! さすがはミシュランの観光ガイドでも高評価の観光地である(二度目)。足が疲れていたのと、せっかく来たからケーブルカーに乗りてえな、という誘惑から帰りはケーブルカーにした。空いていたので運転席の隣の先頭席、子供なら絶対座りたいであろう席に陣取った。ここに座ったのは初めてだったかもしれない。少し待って発車。ものの5分程度で登山口に着いてしまう。文明、テクノロジーは素晴らしい。

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すれ違ったケーブルカーにも大勢乗っていたし、降りて駅前広場に出るとかなりの人出だった。自分が来たときはほぼ無人だったのに。ケーブルカー駅から道路を挟んでのルートに多くの人が行くので確認すると、稲荷山ルートと表示されていた。山登り感がありそうなルートと見た。しかし数珠繋ぎで人が登って行くのを見てやや興醒め。登山とかキャンプとか、よくわからないけど、周囲に人が少ない方が楽しいと思う。人で渋滞して自分のペースで登れないとか、自分のテントのすぐ隣に見知らぬ他人のテントが幾つもあるとか、それでは町と変わらないじゃないの、という気がするのは素人の感想であろうか。もっとも、しばらく前からアウトドアがブームになっているし、コロナ禍でますます促進されている部分もあるだろうし、仕方ないのだろうが。自分が今日薬王院を独り占めできたのは、もしかしたらレアケースだったのかもしれない。『ダンケルク』のIMAXを一人で見られたときのような奇跡。

 

山麓駐車場は10時前でもう満車だった。高速料金がもったいないので帰りは下道にしたが、16号がえらい渋滞続きでうんざりした。腰が痛くなるし、車内は暑いし、途中催してくるしと三重苦。登山より渋滞の運転の方が精神的にも体力的にもきつかった。圏央道の脇を走ったが圏央道の上り方面もノロノロ運転だったようで、日曜と旗日の狭間ゆえの渋滞だったのだろうか。よくわからない。昼前に帰宅。サラダを作り、チリトマトのカップヌードルを食べてから少し昼寝。とりあえず、平日休みのメリットを活かす1日を過ごせたことに満足。しかし足が痛い。明日は筋肉痛でやばそう。登山を趣味にしたい、と思うほどに楽しい経験ではなかったが、近場の低山あたりにはまた行くことがあるかもしれない。とりあえず今度はちゃんとした靴で行きたい。ガチ登山でなければ服装は適当でいいだろうが靴は大事。今日の格好は近所のコンビニに行く時と同じだった。

本日の登山による歩数は11600歩、運動時間は136分。

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