MOVIXさいたまで鑑賞。さいたま新都心へ行くのは昨年のあいみょんのライブ以来だったので半年ぶり。「まん防」発令中だが人出多し。自分もそのうちの一人だが。14:30の回が7割ほど埋まっていたので19:30の回で鑑賞。土曜日とはいえ雨の日の最終上映回、客少なめで快適だろうと思ったが、いざ行くと案に相違してなかなかの客入り。80人くらい? えーMOVIXさいたまってこんな埋まるんだ、同じ埼玉県内でも地元はブロックバスター映画でさえこんな入らないのに、と軽くカルチャーショックを受ける。上映始まってからも何人かポップコーンやドリンクを持って入ってくるし、都心の映画館みたい、とコロナ禍以降都心の映画館へ行かなくなった自分だが、そう思った。わりと自分の周囲の席は人少なめで、横にいた男性が前のめりになって前後に揺れる挙動を何度か繰り返した以外は個性的な客もおらず、環境としてはまあまあ快適に見られた。
母親が娘に執着する映画。ポスターに「母の愛からは逃れられない」とコピーがあったので毒親の過干渉に苦しむ娘の物語と予想していたが、実際見ると母に娘への愛はなく、ただ支配したいだけ。『ミザリー』もこういう映画だったっけ、もう忘れてしまった。二年前に見た『グレタ』は素晴らしかった。あれも、この映画と同じで娘を亡くした女の話だったか。
深夜にパソコンで調べ物をしていた娘が椅子を後ろに引くと奥からこちらを窺う母親のシルエット。あのシーンは不気味でよかった。母親が娘に変な薬を飲ませているのか、娘が新しい薬が合わず被害妄想的な幻覚を見ているだけなのか、どちらか判然としない展開であれば見ている側も緊張感を保てるのだが、早々に母親が薬局に口裏合わせの電話をしてしまうから悪いのはこっちだと分かってしまうのは興醒め。娘が映画館を抜け出して薬局へ行くシーンは間延びしていてスリルに乏しい。二階の窓から抜け出して別の部屋の窓を割るのに、はんだごてで硝子を熱する→水で冷却して温度差で割る、というのは煩雑すぎて違和感。何か工具で叩き割るのじゃダメだったのだろうか。口中に含んだ水ではかなりぬるまっていただろうし。どっちがリアルだろう。この映画、主人公が車椅子に乗る瞬間のシーンは確かなかった(乗っているのではなく、乗る瞬間)。難癖かもしれないが、そういうところにリアリティの欠如を感じてしまう。クライマックスというべき死亡診断書発見のシーンも、え、そうだったの、という驚きは確かにあったのだが、あれだけ用意周到な母親が証拠書類一式をあんなわかりやすい場所に置いておくだろうか。処分してしまうか、隠しておくのではないだろうか、と思ってしまっていまいち入り込めなかった。結局鍋で何を煮込んでいたのだろう。
終盤の病院のシーン、警備スタッフに撃たれて階段から落ちるよりも、主人公が動くようになった足で蹴飛ばして落とす、でよかった気がするが、いくらなんでもそれでは、それこそリアリティの欠如になってしまうか。ラストの「お薬の時間」はどうだろう。暴力に対して暴力で応じるのでは後味はよくない。主人公は正しい側の人間として描かれていたのにそれが最後になってひっくり返ってしまっている。『search/サーチ』もつまらなくないしアイデアも斬新だったのに今いち乗れなかったので、監督と相性が合わないのかもしれない。『 search/サーチ』では母親が、本作では父親が不在だったのは何か理由があったのか。