映画館で旧作を二本。
『隠し砦の三悪人』は4Kリマスター。「午前十時の映画祭」で。昨年のジブリ映画のキャッチコピーではないが、一生に一度は黒澤映画を映画館で見ておくべきかと思い。結構客の入りはよかった。30人くらい。客の平均年齢はかなり高かった。もしかしたら自分が最年少だったかもしれない。43歳なのに。
初めて見る映画。三作くらいしか見ていないが自分は黒澤映画を面白いと思ったことがなく。よかった記憶があるのは『天国と地獄』の前半までくらい。『隠し砦』はユーモアあり、アクションもあり、スリルもあり(馬から荷車に変わって一度は追手を誤魔化すところとか)、ところどころでちょっとだれたが、退屈せず最後まで見られた。が、面白かったかというと微妙。4Kのおかげで画質は鮮明、モノクロだが見づらさはない。しかし音が悪い。台詞が全体的にくぐもっていて聞き取りづらい。実際、何と言ったのか聞き取れなかった箇所が何箇所かあった。とくに聞き取れなかったのが当時新人だった上原美佐の台詞。激昂したような発声が多いからなお聞きにくい。小津映画でも思うのだが昔と今で俳優の演技って違う。昔の邦画で見る演技は舞台っぽい。三船が馬を走らせながら刀を両手で構えるシーンは鳥肌が立った。そのあとの槍試合は長くてだるかったが。火祭りのシーンは期待したほどの迫力はなく。このシーンで横のおっさんが手拍子取り始めて鬱陶しかった。ずっと凸凹だった百姓コンビが最後に仲良くなって終わるのは気持ちいいラスト。
黒澤映画は、自分には純粋に娯楽として楽しむには賞味期限が過ぎているように感じられた。見るのがお勉強になってしまうところがある。
『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』はIMAX、エグゼクティブシート前列中央で快適。結構客が入っていた。40人か、50人か。これ1995年の映画だったんだ。スマホによってネットは今や日常、生活に必須のインフラ、そして商業の場。自分が20年くらい前に初めてWindowsMeでネットに触れたときは、日常とは異質な空間に可能性というかロマンというか、もう忘れかけているが、ワクワクしながら漠然とした期待を抱いたような記憶があるが、今はもうそういうのまったくない。そんな現在から見返したときこの映画は古く感じてしまうかなと思ったけれど、今回5年ぶりくらいで見返して、古くなったと感じる部分もあれど(「ネットは広大だわ」という台詞は以前より陳腐に感じられた)最初から最後までとても楽しく見られた。素子は「ある限界に制約される」状態から脱する機会を望んでいた、人形使いはその望みを叶える好機だった(素子と人形使いは鏡に映った実体と虚像)、で、融合して人間であることをやめ、ネットワークと同化した。最後はやっぱりちょっとネットに対するロマンみたいなのがあったのかな。『イノセンス』で、素子の一部が衛星経由でドールにダウンロードされてバトーと再会するのから遡って考えると、やっぱりロマンだよなあと。白眉は対戦車のシーン。何度見ても格好いい。「そう囁くのよ、わたしのゴーストが」。田中敦子さんの声いいよなあ。
4Kとのことだが画質はややぼやけた感じで、4Kといわれて連想する鮮明さはなかった。音が古いと聞いたことがあったがとくに違和感なく。上映時間90分足らずとちょうどいい長さ。体感的には60分くらいに感じた。え、もう戦車のシーンだっけ、と。