映画『由宇子の天秤』『マリグナント 凶暴な悪夢』を見た

約一ヶ月ぶりの映画館。土曜日に『由宇子の天秤』、日曜日に『マリグナント』を。

 

前者、町山さんがラジオで絶賛していたので見るのを楽しみにしていたが、かなり退屈で苦痛を感じるレベルだった。二時間半の上映時間は長すぎる。音楽が流れないせいで盛り上がりに欠ける。画面も常に暗くて気が滅入る。押井守監督の奥様じゃないが、登場人物の台詞が聞き取りづらい、アパートを出たり入ったりしている映画、という印象。

 

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報道が孕む諸問題というテーマはいい。でもそれをドキュメンタリーでなくドラマとしてやるんだからもっと観客が楽しめるように見せ方を工夫してほしい。音楽やユーモアがいかに重要か。ドストエフスキーの深刻な長編にだってユーモアはある。途中から後ろの方でおっさんが大いびきかきはじめて、普段なら腹が立つところだが今回に関してはまあしゃーないよな、と(席が遠かったからさほど気にならなかったし)。しかし台詞聞き取りづらかったなあ。

塾の経営は父ではなく由宇子の夫という設定ではダメだったのかな。その方が女子高生と関係を持つという点でリアリティがあったように思うが。で、その後由宇子の妊娠が発覚する展開になれば彼女が隠蔽に傾く経緯もより説得力が増したのでは。「重大な事実誤認」のトリックは興醒め。推理小説であれやられたらムカついて放り投げると思う。報道の舞台裏の描写は興味深かった。「編集したものが真実になる」。父親に向かって「真実を告白したいなんて大層なこと言ってるが本当は自分が楽になりたいだけだ、得るものと失うものを秤にかけたら背負っていくしかないんだからその覚悟をしろ」と啖呵を切った由宇子がラストであっさり変節したのも、そのあとの悶着も、展開的に不自然に感じた。会計が遅い高齢者とか、キレるティッシュ配りとかの小ネタは面白かった。一番感心したのはアパートにあった自筆の貼り紙。あれは怖くてよかった。観客は20人から30人くらい。年齢層高かった。

 

 

後者もわざわざ映画館まで行くほどではなかった。配信で十分。バケモノのアイデア、デザインは斬新でよかったが。見所は妹のシドニーの可愛さ。あと、珍しく刑事が比較的有能だった。男性刑事の方。彼が追跡する中盤のシーンは楽しかった。廃墟のような精神病院とか、世紀末感漂う留置場とか、ああいうテンプレ的というのか漫画的というか、わかりやすい表現は興醒めだからやめてほしい。いろいろツッコミどころはあったが一番は事件があった家で呑気にその後も暮らし続けてんじゃねえよと。続編が作れそうな感じで終わったがどうなんだろう。こちらも観客は20人かそこら入っていた。

 

 

今週は変な客に遭遇せず比較的快適に見られたが肝心の映画が二本ともつまらなく残念。土日で二回映画館へ行くと上映時間はむろんのこと移動時間もかかるので貴重な休日の大半を費やしてしまう。どちらも見るの楽しみにしていたんだが…。『マリグナント』を見終わって、面白いアイデアを活かして楽しく見られる怖い映画を作るシャマラン監督ってやっぱ偉大だな、と思った。