映画『さがす』を見た

たまむすびで町山さんが絶賛していたので見たくなり、この三連休は映画館へ行く予定はなかったのだが変更して2019年の夏以来のテアトル新宿へ。コロナ禍以降都心の映画館へは行かないようにしていたのにその禁も破ってしまった。ただ昨年『由宇子の天秤』を町山さんが絶賛しているから見に行ったのに陳腐で退屈な映画だったので今度も過度に期待しすぎないようにしようとは一応心がけていた。アタリかハズレか見てみるまでわからないのが新作映画を見る楽しみ。

 

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土曜10時の回で混んでいた。自分は前目の席を予約していたので前方は人がほぼおらず快適だったが後ろの方はかなり埋まっていた様子。テアトル系列のシートがなだらかな傾斜なのを忘れていたので想像していたより見上げる姿勢になったのは誤算だった。テアトル系列で見るときは席を気持ち後ろ目にした方がいいかもしれない。

 

ネタバレ厳禁らしいので予告動画を貼って感想は核心にふれず軽めに。

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まず、面白かった。まだ早いが年間ベスト級。結構な怖さもある。実際に起きた殺人事件がモチーフになっている。自殺志願はテーマの根幹をなす。彼らは死にたいのであって殺されたいわけではないのでは、と自分は思っていて、だからこの映画でその望みはこういうことかもしれないんだと示すことは意味があると思う。どうせ殺されるなら自分の家族に殺されたい、その気持ちはわかる。懇願された方は自分の手を汚す覚悟もないくせに安易に他人に縋るから取り返しのつかないことになる。ストーリーの軸になる二人の人物の関係は最悪のタイミングでの最悪の出会いというか、もどかしくもあり、やるせなくもあり。ラストはああでなくてもよかった。政治的には正しくないかもしれないが、それでも秘密を秘密のまま二人で抱えて「共犯」として生きていく…その方が後味悪く、それだけに訴える力が増したように思うのだが、どうか。あの終わり方だと切なさはあるが、そのためにカタルシスが得られてしまって物足りない。もっと苦い終わり方でよかった。それとも最後の行動は「覚醒した」ってことだったのか。

 

いくつか印象的だった点。

・『はるヲうるひと』の佐藤二朗はしゃべりすぎでイマイチだったけどこの映画では寡黙で、それが人のよさや怖さにつながっていてとてもよかった。伊東蒼との父娘はハマっていた。

・冒頭の素振りや、序盤のチュッチュッ(?)が意味を持っているのはうまいと思った。

・自転車で追跡するシーンのアクションは見応えあった。気づいたら力入りすぎて拳握っていた。

・廃墟のようなアパートの一室が現場なのはリアリティがあってよかった。韓国映画の現場もああいう場所が多い。公衆トイレとか。

・果林島って素晴らしいロケーションだったがどこが舞台なのだろう。ちょっと調べたけどわからず。エンドロールを見てもそれらしい表記がなかったような。

品川徹演じる爺さんのインパクト凄かった。爺さんの、というかあの部屋の。性欲じゃなく収集欲ゆえのあのコレクションだろう。

・回想シーンに娘がまったく登場しないのは不自然だった。

・クライマックスのシーン、ベルトに指紋が残ったと思うのだが後で拭き取ったのだろうか。

・ラストの球のない打ち合いのシーンの意味?

 

『岬の兄妹』はすげー映画だけど辛すぎてもう一度見たいとは思わない。でも『さがす』はもう一度映画館で見たい。上映拡大するらしいから今後近所のシネコンでかかったらいいが…どうだろう。今回は町山さんの紹介に裏切られなかったけれど、さすがに「とんでもない展開」やら「この世の地獄」やらはちょっと誇大かな、と。まあ地獄度は高めだとは思うが…。もっと地獄度が高い映画といったらなんだろう…パッと思いつくところでは『チェイサー』『モンスター』『プリズナーズ』『プロミシング・ヤング・ウーマン』とかか? いや、何より『岬の兄妹』か。 

 

 

これもまあまあの地獄度だったか。

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