映画館で寝たのはひさびさ。映画『メモリア』感想(というほど覚えていない)

 

週末は大森にいた。初めて来る土地だった。水曜日から金曜までは県内ながら出張的なあれをしていてホテルに三泊。慣れないベッドと知らない人たちに囲まれて緊張があったのか、三日間とも寝付けず日中は睡眠不足気味。辛かった。しかし無事に金曜日に終えることができ、三日振りにアルコールをまだ世の中の皆様が働いているうちから満喫。結局金曜の夜もちょっと寝た後は深夜から目が冴えて眠れずそのまま朝を迎えた。

 

で、土曜日に大森である。安いホテルがあったので女の人と二人で。何かしようというあてはない。ただ知らない土地にぶらっと行きたかっただけ。出張的なあれを無事終えた自分へのご褒美的な意味もあったかもしれない。大森といえば日本初のシネコン、キネカ大森がある土地である。自分は映画を見るのも好きだが映画館という箱自体も好きである。映画見るついでにあちこちの映画館へ行ってみたい気持ちがある。何か目的があって大森に来たわけではない。時間はある。なら行ってみるか、となった。プログラム的に『メモリア』が都合よかったのでこれにした。アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の映画はこれが初めて。予告だとアート系映画と思えた。こういう映画、同行の女性はまず見ないし、見ても寝る。なので自分一人で。

 

キネカ大森は西友の5階で、エレベーターでないと行けないっぽい。エレベーターを降りたらすぐロビー。フロアの印象は渋谷や有楽町のヒュートラと似ている。フロアの広さの割に椅子が多くて座れるようになっているのが前二者との違いかな。吉祥寺のアップリンクも座るところ多かったような記憶がある。パワハラ騒動以降、コロナ禍もあり足が遠のいてしまっているが…。今後ウィズ・コロナな感じになるにつれまた2019年のように都内のテアトルグループ劇場へ行く機会もあると思うのでTCGメンバーズカードを作った。有効期間一年で入会金1000円。特典の1100円鑑賞券は早速使用。時間になってシアターに入ろうとしたら、いることがあるらしいとは知っていたが本当に片桐はいりさんがスタッフと一緒にもぎりのところに立っていたのでびっくりした。でも他の観客はいるのが普通、みたいな落ち着いた様子。「いらっしゃいませ」と頭を下げられたのでこちらも頭を下げる。観客は30人くらいだったか。

 

で、『メモリア』である。頭の中で謎の爆発音を聞く女性がその謎を解明しようとする物語。なのだが筋自体がよくわからんのに加えて途中で何度も寝てしまったので内容はまったく理解できていない。元々寝不足だったところにこの映画じゃあ、そりゃあ寝るわ。自分がこれまで映画館で見てきた映画の中でもトップクラスに退屈で、とくに最後の方は苦痛を覚えるほどだった。サタンタンゴは7時間寝ずに見た自分なのだが。動きが少ない。音楽がほとんどない。絵が単調。仄めかす台詞による説明されないストーリー。中でも絵の力なさ。日の出や日没といった光が変化するショットが少なく、日中の街や室内や森でのシーンが多くて飽きる。『ノマドランド』もストーリーはつまらなかった。が、絵が美しかったから飽きずに見られた。本作は絵もイマイチ。音は記憶であり、主人公は特殊な能力によってそれを感知しているらしいことが徐々に明らかになる。でも仄めかしばかりだからそう解釈できる、というくらいか。爆発音の原因がSFになったのは笑った。あれは超古代の出来事か、それとも未来の出来事か。途中から男が入れ替わったのも意味がわからん。最後どうなったんだっけ? 覚えていない。予告で流れるシーン、頭蓋骨に穴が空いているとか、美術館で照明が消えるシーンとか、見た覚えがない。俺どれくらい寝てたんだろう? 飛び飛びながら合計したら30分か、あるいはもっと寝たかもしれない。いやー、途中で席立って帰ろうかとも考えたが(インベスターZであった映画の損切り)、途中で出ていくのって勇気が要る。初めて来た映画館、真っ暗で足元もルートも覚束ないし。だから結局ラストまで我慢した。いいところを見つけようとも思って見ていたのだが…見つからないまま終劇。登場人物が少なくロケも大掛かりに見えないからエンドロールはすぐ終わるだろうと思っていたらこれがまた長くて閉口。劇場内が明るくなったときはようやく帰れるとの喜びが。倉橋由美子だか四方田犬彦だかがつまらないと思う本を我慢して読み続けていると人間の頭は狂ってしまう、みたいなことをエッセイで書いていたが、映画に対してもいえると思う。終わったのは夜9時過ぎ。即エレベーターに乗り、西友の食品売り場で夜食用に値下げ品を適当に買ってホテルへ戻った。雨の降った痕跡があったが帰り道では止んでいた。