角川武蔵野ミュージアムへ行ってきた

角川武蔵野ミュージアム、自宅からさほど遠いわけでもないのでまだ新しく綺麗なうちに一度行っておきたかった。去年行くつもりでホテルも予約したのだが前日になって体調崩してキャンセル。そのまま延び延びになっていたが今回ようやく行く気になった。ホテルも予約した。ちなみにこの記事を書いている現在、EJアニメホテルは旅行支援対象外の模様。

 

ホテルのチェックインが16時からと遅めなので15時に東所沢駅で同行者と待ち合わせ。この駅で降りたのは初めて。駅から目的地までは10分程度歩く。改札を出ると行く人の流れが自然にできているので着いていけばよかった。途中公園があって中には卵型のオブジェがたくさん並んでいた。チームラボの展示で暗くなると光るらしい。公園を抜けるとすぐにホテルやミュージアムがあるサクラタウン。角川武蔵野ミュージアムの外観は何度も写真で見ていて知ってはいたが実物を見るとその巨大な偉容に感動する。すげえ。実物を見なければわからない迫力ってたしかにある。

この日は日曜で子供用自転車メーカー? のイベントをやっていた(写真左下のカラーコーンのスペース)。キッチンカーも3台くらい来ていた。人出は、日曜午後としてはどうなんだろう…少なくはないが混雑しているというほどでもなく、自分が予想していたよりは空いていて歩いていてストレスを感じることはなかった。この日は川越まつりの二日目でもあり、そっちへ行っている人も多かったのかも。ミュージアムをしばし眺めたのち、隣にある武蔵野坐令和神社へお参りを。しかしアニメのタイトルが書かれた幟を通って、ガラスの向こうにいるらしき神様にお参りするというのは…建屋の新しさもありご利益があるのか懐疑的な気分に。といいつつ帰り際にも再度お参りしていったのだが。寺社は古ければ古いほど、辺鄙な場所にあればあるほど有難いみたいな固定観念が俺にはある。

俺はもう何年もほとんどアニメを見ない生活を送っているのでこの幟や授与所にあったキャラのお守りみたいなのを見てもピンとこない。たぶん文豪ストレイドッグスのだったと思う。俺が人生で一番アニメを見ていたのは震災前後の時期で、そのあと無職になって実家に戻ってからはあまり。話題になってるやつをちょっと見てそのうち見るのをやめる、を繰り返し。最後にちゃんと見たのは『ケムリクサ』で、これは面白かった。けもフレは知らない。『ヤマノススメ』は途中まで見ているのでまた続きを見ようと思っている。ここ何年かで一番好きなのはfateで、スピンオフのじゃなくてオリジナルのやつ*1新海誠監督は全部見てて『星を追う子ども』からは毎回劇場へも行っている。あと印象に残っているのはエヴァハルヒまどマギ、シュタゲ…など。『イノセンス』のブルーレイは持っている。なんたってガンダムをちゃんと見たことがない人間だから。今やってる『水星の魔女』は見ていて、これが初ガンダム…と思ったが『閃光のハサウェイ』を見ていた。全然意味がわからなかったしもう内容忘れているが。そういえば『ロードス島戦記』は角川アニメだった。OPには「制作総指揮 角川歴彦」とデカデカと。

 

話が逸れたが、お参りのあとはキッチンカーで地ビールらしい野老ゴールデンというのを。味はよく覚えていない。同行者と千人テラスに座って飲みながら、先日見た『スペンサー』の話をするのに夢中になっていた。なぜここで『スペンサー』なのか。ダヴィンチストアで何かお土産代わりに本を、できれば角川の何か…復刊したらしい『魔女の子供はやって来ない』があればそれを買おうかと思ったのだが見当たらず、ピンとくるものもなく手ぶらで出る。店内の一角に松岡正剛の本棚とリンクしているらしいスペースがあった。この本屋の棚の並びは多分「文脈棚」だったと思う。出版社や判型ではなくテーマごとの並び。品揃えは店の規模の割には面白い。ダンテ『神曲』平川訳のハードカバーが4冊もあった。

 

チェックイン時間になったのでEJアニメホテルへ。エレベーターで上がり、降りた先のロビーが広く、プロジェクターによる巨大な投影画像に驚く。綺麗なロビー。でも部屋はオートロックでなく、カードキーでもなく、今時珍しい物理キー。室内設備の操作は専用スマホをリモコンにする。150インチ投影のエプソンのプロジェクターが天井に備え付けてあり(スクリーンではなく壁に投影)、7.1ch相当だというヤマハサウンドバーが置かれ、洗面所は綺麗、トイレはタンクレス、なのに冷蔵庫が妙にレトロ、とちぐはぐさが不思議な雰囲気を醸している。今回泊まったのはデラックスツイン。ベッドの間に観賞用の二人掛けソファがある。部屋はかなり広く、テラスも付いている。防音用か、サッシも扉も分厚く重い。実際、滞在中他の部屋の物音はほとんど聞こえなかった。何かの振動みたいなのが何度か聞こえたくらい。スタッフの接客も親切だった(男女とも皆さん若かった)。ブルーレイプレイヤーがフロントで無料レンタルできる。それでヘブンズフィール3部作の6時間耐久鑑賞をするつもりでいた(同行者には迷惑だったかもしれんが…普通に見ていたのでよしとする)。

ロビー 左側がフロント

 

ロビーにいた「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの…」の人たち

 

このデカさでテレビ番組も見られた

一度ホテルを出て餃子816という中華料理屋で夕食を。四川風麻婆豆腐、辛いと聞くがどのくらい辛いのか知りたく、注文*2。運ばれてきたのを口にした瞬間、後悔。辛すぎる。そして熱すぎる。金属製の匙が熱伝導するので火傷しそうに。熱すぎるから啜ったら派手にむせちまった。恥ずかしい。麻婆豆腐は啜るもんじゃない。帰り道、ヤオコーでドリンクやつまみなど購入。夜になったのでチームラボのどんぐりが点灯していた。ミュージアムも一部照らされ、日中よりむしろ夜の方がフォトジェニックな感じを受けた。ミュージアムが18時までのせいか、19時にもなると人の数はめっきり減る。

外から見るとこんな感じ 中に入るにはチケットが必要

 

これ後ろ側なんだがこっちから見た方が外観いい気がする

 

部屋に戻ってヘブンズフィール鑑賞。同行者はアニメに疎いので俺が横で解説しながら。1は序盤の穏やかな日常が徐々に暗く異様になっていく過程が見応えある。派手なバトルがランサー対アサシンしかないので2や3と比較すると満足度で少し劣る。2はセイバーオルタ対バーサーカーのバトルがド迫力で、見終わって疲労を感じるほど。桜のエロいシーンが3回くらいあって楽しい。2の途中あたりから眠気に襲われ、見終わってすぐに就寝。23時頃だったか。「3枚目見ないの?」との問いには答えずベッドに潜り込む。風呂にも入らず。3時頃目が覚め、風呂に入り、同行者が眠っていたのでスマホをいじり、夜明け少し前に散歩に出発。1時間ほど歩き、写真を撮り、コンビニで朝食を買う。サクラタウン周辺は住宅地で朝は近所の人たちのウォーキングコースになっているようだった。近くにスーパーやゴミ処理場やヤマトのセンターがある。川がすぐ近くを流れている。

 

同行者が起きたので飯を食いながらヘブンズフィール3を飛ばし飛ばし鑑賞。セイバーオルタ対ライダーのバトルは、音楽の素晴らしさも相俟って、俺が知っている(乏しい)アニメ鑑賞歴の中で今でも至高だと思っている。3は映画館に4回くらい行ったんだったか。感想はこのブログにうんざりするほど書いてある。

 

EJアニメホテルのチェックアウトは10時と早い。その足でミュージアムへ。月曜で40人くらい並んでいた。当日券の列と予約済み列でちょうど半々くらい。意外だったのが年齢層が高かったこと。若い女性もちらほらいたが若い男性はほぼおらず、初老以降のカップルや中年以降の女性グループが目立った。この人たちがアニメとかラノベとか本棚劇場とかに興味あるのか? と疑問に思っていたら、入館するとすぐにゴッホ展の方へ向かったので合点がいった。俺たちはスタンダードチケットなのでゴッホ展へは入れない。エディットタウンへは俺たちともう一組のみで、この日最初の入場者だった。

右下に「元」KADOKAWA会長の御言葉が

エレベーターで4階で降り、写真はいいが動画撮影は禁止との説明を受けたのち、エディットタウンへ。今回の旅行の目的はここだった。以前丸の内丸善内にあった松岡正剛による松丸本舗、行ってみようと思いつつ行かないまま閉店してしまい、そのことを悔やむ気持ちがあった。松岡正剛はその後有楽町だったかの無印良品でも本のセレクトをやって、今度こそはと行ったけれど、規模がしょぼくてわざわざ行くほどのものではなかった。で、今回のエディットタウン(ブックストリート)である。25000冊(もっとありそう)の本が、松丸本舗的なセレクトでテーマごとに並べられている。借りるのも買うのもできないが読むのは可。松岡正剛による私設図書館みたいな感じ。入り口から入って並んでいる本の背表紙、表紙を眺め読んでいると、この世の中のあらゆることについて人は本を書いてきたし、書こうとしてきたし、残してきたのだと思われ、圧倒される。誰でも、ここに並んだ本やテーマに、最低一つは関心あるものを見出せるのではないだろうか。逆に、これだけあれば全然関心ないテーマや本も無数にある。もちろんここにある本はこれまで出版されてきた本のごくごく一部、世界を含めれば規模的には砂浜の砂粒に等しい。でもそれですら一人の人間にとっては広すぎて眩暈を覚えるほど。

違い棚や箱を組み合わせた棚の作りがカッコいいし、天井からポスター吊ってあってタイプライターや模型や豆本なんかが一緒に置かれていて、本をあえて横に積んだり面陳したりお洒落すぎなんよ。この空間にいるだけで偏差値が10アップしたかのごとき錯覚を覚える。写真3枚目、岡崎京子のポスターにグッとくる。ここを図書館的なスタンスにしたのは正解だったと思う。売れ線の本しか置いていない本屋はたしかに退屈だが、松丸本舗のような尖った本屋が、丸の内ですら3年しかもたなかったということは、本を読む人間がいかに特殊でいかに少ないか、まして文脈棚となるとある程度本を読んでいる人でないと「この本とこの本が結びつくのか」という意外性や面白さを理解しづらく、それができる人はかなり絞られるという事実を証している。「鉱物」の棚につげ義春の「無能の人」があったりする面白さって「無能の人」を知らないとわからない面白さで、そしてそういうのがわかる人の数は決して多くはない、松丸本舗のような書店の経営を維持できるほどには、あるいはそれほどの人たちはもう松岡正剛のガイドを必要としなくなっている、というのはあると思う。

 

先日我が家をリフォームし、こどおじたる自分の部屋が5畳から10畳に「昇格」したのでこれまで一部収納に押し込んできた蔵書も出して壁一面に並べようと思い、その参考にできたら、というのが今回ここへ来たかった理由だったが(俺の蔵書は400冊ちょっとなので大したものじゃない)、実際に見ると高級すぎて参考にならなかった。松岡正剛のセレクトはちゃんとしているというか、低俗な本がない。バカが読みそうな本もない(小保方晴子さんの自伝があったのは面白かった)。エロ関連の棚なのに全然下品じゃない。漫画で置いてあるのがカムイ伝デビルマンあさきゆめみしだった、といえば伝わるか。俺としてはもう少し低俗な棚の方が親しみやすく、楽しい。松岡正剛と、パチンコ攻略情報や殺人事件実録みたいなのの中間くらい…だと範囲が広すぎるが、そのへんがちょうどいい。それが俺の背丈だから。ちょうど今切り裂きジャック関連の本を読んでいるので置いてあったアラン・ムーアの『フロム・ヘル』を読みたかったが時間がかかりすぎるので断念。

高価な本が盗まれないか心配になる

 

高尚なエロ

ン十年間、多少…いや少々本を読んできた者として思うのは(本だけじゃなく映画でも漫画でもそうかもだが)家族や友人の前では読めない本、そういう本が一番楽しい、ということ。そして親が与えてくれた/親が子に読ませたい少年少女名作選より、暴力、死、エロス、狂気、タブーについて書かれた本、世の中の表向きの常識や綺麗事に抗う、そういう読んでいることを身近な人に知られたら人格を疑われてしまうような本こそが自分を形作っている/いくように、自身を顧みて思う。「罰せられざる悪徳」としての読書。

 

本棚劇場はブックストリートの奥にある。黒っぽい本と角川文庫のカラフルな背表紙の混合がカオス。物量が凄い。でも天井が高いから圧迫感はない。脇の階段から上に行けて、荒俣さんの蔵書なのかな、オカルトや幻想系、博物誌、少女漫画の古書が壁に並んでいた。プロジェクションマッピング文豪ストレイドッグス。見たことはないが実在の作家が戦うやつだというくらいは知っている。わざわざ本棚へ投影する意味がわからない…と思っていたら、まさに本棚への投影だからこそ、という演出で感心した。

写真はすべてiPhone12miniで 広角にすると画質が粗くなりすぎる

 

上から見たところ

荒俣さんの秘宝館や世界ネコ歩きの写真展も見て2時間ほど滞在したのち出る。スタンダードチケットは3時間までと前にどこかで見た記憶があったが、今回チケットを買うにあたってサイトを見てもその記載は見当たらず、メールにも記載なく、もしかしたら時間制限なかったのかもしれない。とはいえこれだけの数の本に囲まれていると精神的に圧迫され疲労を覚える。一日いられる、という本好きもいるのだろうが俺は無理だ。音楽聞くのもイヤホンだと耳が塞がれる感じがあって抵抗があり、そういう神経過敏なところが俺にはある。自分の部屋なら本があっても大丈夫だから(数が違いすぎるが)、俺に無縁の本に囲まれているかかそうでないか、という違いなのだろう。本屋なら目当ての本があり、それを買うついでに興味あるお決まりの棚を巡って終わり。だがここへは棚自体を目的として来ている。そのため普段関心を持たない棚も含めて大量の情報を眺めていくことになるわけで、そりゃあ疲れるに決まっている。マンガ・ラノベ図書館には興味がなかったので寄らなかったがせっかく来たのだから行ってもよかったかもしれない。漫画は子供の頃から今に至るまでずっと読んでいるけれどもラノベってロードスとスレイヤーズしか読んだことがない。あー、ベニー松山のWizノベライズってラノベに含まれるのだろうか。なら『隣り合わせの灰と青春』『風よ、龍に届いているか』も。

 

昼飯は角川食堂でカレー。外に出ると雨。ブリッジを渡ってお土産ショップみたいなところで一服。そこを出ると雨はまた止んだ。この日は降ったり止んだりだった。帰る前にもう一度神社にお参り。電車が帰宅者で混雑する前に帰途についた。

 

自分は最近買う本を物理から電子書籍へ移行しつつあり、物理で買うのは収集的な意味合いが強くなってきている。読むだけなら電子でいい。場所を取らないし、端末に落としていくらでも持ち歩けるし、どこでも読めるし、セール多いし、文字サイズも変更できると便利尽くしだから。でも、本の並んだ棚を見ると、物体として景観として美しさを感じるし、他者と共有できるのは物理ならではの利点だと思った。松岡正剛はCDやDVDを再生するのにプレイヤーが必要なように本にもプレイヤーが要る、それが棚だ、本は棚に並べてこそ活きるんだ、みたいなことを何かに書いていたが、そういうことができるのも物理本ならではだよな。色々刺激を受けた。行ってよかった。

 

*1:俺が当時勤めていた会社の後輩にstay nightのディスクを借りたのももう10年以上前だ。

*2:これからFateを見るという心理状態も影響していたか