浜辺美波が最高すぎたんだが? ──映画『シン・仮面ライダー』感想

 

仮面ライダーはブラックをたまに見ていたくらい。もっと小さい頃スーパー1を見ていたような記憶もおぼろげにあるがムックを読んだだけかもしれない。どのみち覚えていないのだから見たことにならない。自分の仮面ライダーはブラックである。アマプラのブラックサンは少し見たけどチープに感じて途中で見るのをやめた。YouTube仮面ライダーとブラックの第一話が公開されていたのでそれは見た。ブラックの第一話は今見てもかっこいいと思う。初代の方は見るのがつらかった。ブラックの第一話は初代の第一話を踏襲しているとの発見はあった。

 

『シン・ウルトラマン』を見たときにも書いたが自分は特撮を見てこなかった人間である。変身ヒーローにあまり興味がなかった。サンバルカン宇宙刑事ものはわりと見ていたがそれくらい。にも関わらずこの映画を見に行ったのは庵野秀明監督作品だから。気になるよな。

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「悪の組織によってバッタ人間に改造されてしまったヒーロー」という設定くらいしか仮面ライダーを知らない人間が『シン・仮面ライダー』を楽しめるのか、チケットを予約するとき一抹の不安はあった。理解できるとは期待していない。楽しめればいい。そんな気持ちで映画館へ。日曜夜のレイトショー、観客は20人くらい。全員男性(と思う)。まあ、そうだよな。

 

で、感想。以下ネタバレあり。

まず、かなり楽しめた。映像はしょぼい。頑張っているんだろうけど予算の都合なのか技術的な問題なのか見ていてガッカリ感があった。冒頭の血飛沫とか、コウモリオーグの一連のシーンとか、仮面ライダーと第二号が空中移動しながら殴り合うシーンとか、2023年の映画とは思えないほどお粗末。アクションに関しては多分最初のクモオーグとの戦いがピークで、後半になるにつれ画面が暗くなり何やってるのかよくわからなく(見えなく)なってしまう。

ストーリーも最後の方はついていけなかった。ルリ子が仕込んだプログラムがうまいこと作動したんだろうな、くらいのふわっとした理解。本郷は死ななくてよかった気がするが…。ショッカーの「人類の幸福を追求する」みたいな理念は昨今のカルトを意識していたのかな。撮影時期的に微妙か? すべての人間の魂を別の世界に送る云々とか(もう忘れた)、他者との関係性どうこうとか、また人類補完計画か? と思った。殴り合いの最中にあれこれ語るのは漫画ならいいが実写だと滑稽に見えてしまう(キャシャーンぽい)。

音もよくなかった。登場人物たちの台詞が聞き取りづらかった。邦画全般、音声軽視の傾向がある気がする。偏見かな。

 

上記の残念ポイントをキャラクターの魅力で補っている。とくに自分がいいなと思ったのが浜辺美波演じるルリ子、西野七瀬演じるハチオーグ、柄本佑演じる一文字隼人。浜辺美波は演技こんなうまいんだ、と感嘆。笑わないクールキャラが「遺言」撮影中にカメラに向かって話しかけるのに照れたり、最後の最後でデレたり、最高にかわいかった(「SOUND ONLY」は笑った)。この映画は浜辺美波で保っていると言っても過言ではないのでは(池松壮亮はなんであんなに台詞棒読みだったんだ? わざと?)。

かわいさで言ったら西野七瀬も同じくらいよかった。『孤狼の血LEVEL2』のときはとくに印象に残らなかったのに今回のハチオーグ役はえらいかわいくてもっと見ていたかった。髪型が似合ってたのか? この人は顔もいいが声もいい。ルリ子に対する歪んだ百合感情みたいなのはなくてよかった気がする。

あと柄本佑。本郷が面白味のない真面目キャラなのに対して、こっちはちょっと斜に構えて軽口を叩くタイプ。こういうキャラ好き。ラスト近くの「なんだよ、また一人かよ…」の呟きはグッときた。「群れるのは嫌い」「バイクのいいところは孤独を楽しめるところ」「人間死ぬ時はどうせ一人」…そう口にしてはいたものの、内心では本郷と一緒にいられる時間を大切に思っていたんじゃないのかな。

あと、キャラじゃないけどサイクロン号もよかった。走っている最中に変形していくのはカッコよかった。それだけに最後の扱いがムカついた。愛車はもっと大事にしろ。

今回キャストがすげー豪華で、予算の大部分をそっちに使ったんじゃないか? とすら思える。しかしあんなに大勢過去の『シン』シリーズのキャストを出す必要あったのだろうか。やりすぎるとマンネリ感が出てくる。こういうのは1カット1シーンで出すだけの方が却って存在感が増すように思える。そういえば『すずめの戸締まり』は過去の新海作品からの出張者がいなかった。その方がオタクっぽくなくていい。

 

見終わってからネットの感想をいくつか読んでみたけどわかる人にはわかるネタがたくさん仕込んであったらしい。俺はそういうのを一切拾えなかったけれどでも一本の映画として楽しめた。楽しんだのは主にキャラの言動。そしてロケーション。江川海岸や角島大橋をこんなに衒いなく撮るんだ…という驚き。そういうところもオタクっぽいといえばぽいかもしれない。エンドロールはやりすぎ。もう少し曲数を絞った方がよかった。

終。