ねんがんの クヌルプに泊まったぞ!

今年は『かまいたちの夜』30周年であるという。少し前にこちらの記事を読んで知った。

www.4gamer.net

発売当時自分は高校生だった。

スーパーファミコン推理小説を読む。

途中の選択肢次第で複数の展開へと分岐していく。

その体験が斬新でハマった。とはいえチャート管理をするようなマメな性格ではないので一通りのシナリオをクリアできたくらいでピンクの栞にはたどり着けなかったが。もうどんな話だったか忘れてしまったがヒロインが活躍するスパイ編が面白かった記憶がうっすら残っている。

ストーリーの他にも写真を取り込んだ美麗な背景、シルエットで表現されるキャラクター、印象的な音楽が忘れがたい。

サウンドノベルというかスーファミソフトとして名作の一つだろう。

 

物語の舞台となるのはペンション シュプール

このシュプールのモデルになったペンションが実在するとは当時何かで教えられて知ってはいた(エンドロールにも名前が登場する)。が、インターネットなんてない時代、詳細を知るまでにはいたらなかった。

ずいぶん後になってからそれが白馬にあるペンション&コテージ クヌルプであると知った。

www.knulp.jp

 

いつか行ってみたいなあとぼんやり思い続けてきた。

十年、二十年、継続的にではなく断続的に。

でもなかなかきっかけがなかった。

自宅から車で行けば決して近くはないが遠すぎもしないという微妙な距離。

白馬だから冬から春までは積雪がすごい。行くなら夏のオフシーズン。

距離と季節、ゲーム体験の記憶の薄れ(1994年発売のゲームなのだ)による憧れの弱まり、あとは単純な忘却。きっかけのなさは大体そんなところだった。

 

ただ、俺も中年になって残り時間、残りライフ(体力)を意識するようになった。

今年の初めには「未来志向から現在志向へ切り替えてやっていく」を抱負として述べている。

hayasinonakanozou.hatenablog.com

まだ元気なうちにやりたいことを可能なかぎりやっておきたい。人生で最上の宝とは経験とその記憶なのだ。

30周年という記念すべき年でもあるし、今年は覚えてもいたのでようやく行くことを決意。

一人で行ったらテンション上がって暴走するかもしれないので目付け役として同行者を誘った。彼女は『かまいたちの夜』を全然知らないのでこの任に相応しい。

 

ナビだと自宅から関越利用で3時間程度の距離。途中で休憩を何度か挟んだので実際には4時間弱かかった。長野は何度も旅行しているが白馬は初めて。クヌルプは山の中にあるが最後の数百メートルを除けば二車線の舗装路が続くので道に難儀はない。一車線に狭まっても幅広なので大型車でない限り端に寄ればすれ違える。山道に入る少し前にローソンがあるので何か不足がある場合はここで買っていくといい。

午後4時前、目的地到着。

 

外観を見た瞬間、初めて来たのに懐かしい、不思議な感覚に襲われた。

続いて、本当にシュプールはあったんだ、という嬉しい驚きが込み上げてきた。いやシュプールじゃなくてクヌルプだが。

興奮する俺。その様子を冷ややかに観察する同行者。

 

チェックインを済ませ鍵を渡される。
事前にSNSや旅行サイトの写真を見ていたのでわかってはいたものの、やっぱり実物をこの目で見ると、ゲームまんまだ、と楽しくなる。談話室のソファに座ってきょろきょろしてしまう。30年という長い期間、色々あっただろうに当時のままにしてくれているオーナーに感謝の念を抱く。旅ノートを開くとほぼみんなかまいたちと書いており笑ってしまった。発売から30年経ってもファンが訪れる聖地なのだ。でもオーナーはパンフや公式サイトで『かまいたちの夜』には一切触れていない。媚びない姿勢がクール。

 

1階は談話室のほかに食堂と男女別のトイレ、男女別の風呂がある。風呂は人工温泉で24時間入浴可。2階は客室と男女別のトイレ、その前に洗面所がある。寝巻き、タオル、ドライヤー、歯ブラシ、髭剃りはないので各自で用意する。

 

今回宿泊したのはゲームでは美樹本が宿泊していた部屋。この日の関東は6月なのに気温が35℃近い真夏日で、長野に着いてからも暑さに変わりはなかったが、部屋の窓を開けていると次第に涼しくなってきた。エアコンが部屋にないということはなくても夏を過ごせるということなのだろう。実際、日暮れ後は窓が開いていると涼しいを通り越して肌寒いほどだった。

写真で見てわかるとおり客室にユニットバスはない。実際に入ってみると館内はゲーム内の描写よりコンパクトに感じる。ゲームは人物のシルエットをうまく使って広く見せていたのだろう。

 

汗を流したかった。館内の風呂を利用してもよかったが500メートルほど離れた場所に温泉があるのでそこまで歩いて行った。おびなたの湯。白馬には八方温泉を引いている施設が複数ありその一つ。露天オンリー。高アルカリ性の泉質でぬるぬるしている。格別熱くはない。平日午後だったからかほぼ貸切状態でゆっくりできた。

 

夕食。クヌルプは食事がいいとは聞いていたがたしかに美味だった。前菜、スープ、サラダ、メイン、デザート、食後のドリンクのコース。自分たちは追加で信州ワインとミシシッピマッドケーキを注文した。メインは白馬豚という地元のポーク。脂があっさりしていて食べやすかった。マッドケーキはチョコが濃厚。1時間ほどかけて食事を堪能。美味しかったし量も十分で大満足。

普段外食はチェーン店ばかりだけど、たまにはこういうかしこまった料理を食べると新鮮な気持ち、豊かな気持ちになれていいな、と感じた。コース料理や懐石、ハレの日のイベントとして生活に取り入れたい。

 

夜の2階廊下。猫のジェニーが奥の掃除用具入れから飛び出してくるシーンのグラフィックは当時見応えがあった。実際に掃除用具入れなのかどうかは未確認。この日は自分たち以外の宿泊客は2名しかおらず静かだった。この2名も巡礼者だったように見受けられた。

 

公式ファンブックにクヌルプの紹介記事が掲載されている。美樹本が登場しない小説版を読んで就寝。前を流れる川の音がまるで雨音のよう。

 

翌朝。

5時前に目が覚めた。普段旅行先では早朝に目が覚めたら周辺を散歩するのだが玄関の扉に鍵がかかっていたので(防犯上当然だろう)散歩は諦めて風呂へ入った。

 

7時に朝食。野菜が美味かった。食後のドリンク付き。

 

この日は長野市へ移動して善光寺へ、そのあとは小布施へ移動して北斎館へ行きたかった。

なので移動時間を考慮し8時半頃チェックアウト。

旅ノートに記念の記入をし、お土産としてクヌルプTシャツを購入した。

オーナーに挨拶して出発。お世話になりました。

 

クヌルプから車を走らせること1時間。善光寺に到着。2013年に一度来たことがある。

お宮参りの日なのか、子供連れが多かった。そういう家族の一つに記念撮影を頼まれる。人生で何度目だかもうわからないイベント。「コイツならいけそうだ」と舐められてるようでうーんって感じなんだが(自分より「格上」そうに見える人には頼まないだろうから)、最近はオーラが出ているからだと前向きに考えるようにしている。しかし若い頃ならともかく俺もうアラフィフだぜ? なのに声かけしてくるとはよっぽど無害な顔に見えるんだろうな。外国人にも写真撮らされたり道聞かれたりするので日本人のみならず外国人からもそう見えるっぽい。その様子を見て「また頼まれてる」と同行者が笑った。

urbanlife.tokyo

 

料金払って山門を登ると周囲が俯瞰できる。高いのでよく見える。写真奥の門の向こうにもまだ参道が続いている。善光寺周辺は寺や店が固まっており一大エンタメスポット。

 

参道の先も道がまっすぐに整備されており町の作りとして面白い。規模は違うが小樽駅前の通りを連想した。

 

参道を散歩がてら遊歴書房まで歩いて行って吾妻ひでおを1冊購入。戻りがてら、あまりに暑いのでソフトクリームを求める。マロン味。長野は栗推しらしくマロンなんちゃらの幟がやたらと出ていた。このあと向かう小布施への途中では栗の木を大量に見た。

ソフトクリームを食べても暑さは和らがなかったので自販機でドリンクを購入。ものの数分で一本飲み終えた。熱中症の季節到来。こまめな水分補給を心がけよう。

 

善光寺から車を走らせること30分ほど、小布施にある北斎館に到着。

知らなかったが小布施は80代の北斎が何度か訪れているゆかりの地だという。

小布施に北斎の美術館があるとは旅行前にたまたま知ったのだが行ってよかった。箱がモダンで洒落てるし展示も充実。現在、企画展「北斎進化論」開催中。

北斎は為一、画狂老人卍時代の作品がやっぱり面白い。85歳のときに描いた東町祭屋台天井絵の「鳳凰」はド派手・ド迫力でこれが見られるだけでも料金分の価値がある。北斎漫画の動きの描写、集中線の表現、デザイン等、日本の漫画のルーツにあたる人なのかな。天井絵の鳳凰手塚治虫火の鳥としてデザインしたと言われても違和感さほどないように思えるんだがどうだろうか。

19世紀の日本で90歳まで生きて、そんな高齢であっても倦むことなく表現を極めようと努力し続け、死の間際にあと5年生きられれば本物の画工になれるのにと言い残したというのだから破格の画家だろう。中年の危機とか言ってる己が恥ずかしくなる。画狂老人卍先生、マジリスペクト。元気が出てきた。

 

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北斎館には1時間ほど滞在。休日なのに人は少なめでゆっくり見られたので幸運だった。駐車場も帰るまで空きがあったしマイナーな美術館なのだろうか。美術館の周囲にもカフェや食事処や土産物屋などがあったが割と高めに思えたので飯時だったがスルーして出発した。小布施ICのすぐそばにあった大きめな道の駅にて信州そばを食い、両親への土産に蕎麦を購入して帰路に就いた。

 

帰りの車中、何度か眠くなり、SAPAでマメに休憩していたら時間がかかって夕方近くなり渋滞に巻き込まれ遅くなった。疲れた。200キロの運転となるとかなり疲労する。帰宅したときにはぐったり。荷物もほどかず、帰り道で買ったほっともっとののり弁を食い終わるなりベッドに横になって爆睡した。

 

疲れはしたが、念願のクヌルプに宿泊し、善光寺にお参りし、北斎の絵も見られたのでなかなか充実した2日間を過ごせた。こういう充実の経験を今後多くしたい。限りある時間を無為にせず大事に。体調、時間、懐具合と相談しながらやっていこう。

 

 

 

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