東京都現代美術館で「日本現代美術私観」を見て脳のOSがアップデートされた(気がする)

台風が去った三連休の中日、8月から見に行こうと思いつつ先延ばしになっていた、東京都現代美術館で開催中の「日本現代美術私観」へようやく行ってきた。埼玉の自宅からだと距離があるのが先延ばしの理由。行ってみると実際遠い。高田馬場から東西線へ乗り換えて木場駅で下車。そこから木場公園内経由で20分くらい歩く。

 

到着したのはお昼少し前。客はそこそこ、荷物ロッカーはまだ空きがいくつもあった。東京都現代美術館へ来るのは初めて。箱がモダンでかっこいい。

 

先に感想を書くとわざわざ見に行った甲斐は十分あった。物凄い展示の質と量に圧倒された。

 

現代美術って難しい。これがアートなの? とか、何が描いてあるかわからん…みたいなのの連続。なので自分はそれを語る言葉を持たない。その、俺から見たら「なんでもあり」だからこそプリミティブなパワーを感じたり面白かったりする。作品について考えたり他者と語り合う余地もあるように思う。

 

今回の展示は精神科医高橋龍太郎のコレクションであるという。これだけの量のコレクションを個人が? という驚き。90年代から始まった現代美術のコレクションはそのままバブル崩壊後の日本の「失われた30年」と重なっている。日本の現代美術に疎いので自分と同時代にこんなに豊穣なアートがあったんだ、と新鮮な驚きに打たれた。展示は時代ごとに6つのパートに分かれている。とくに4つめの、東日本大震災福島第一原発事故の時代を扱った「崩壊と再生」が圧巻だった。そこを過ぎるとあまりに前衛的すぎる作品が続いてついていけなくなってしまった。今の俺の限界。

 

入るとすぐに草間彌生の初期作品が多数展示されている。草間彌生というと生を肯定するようなカラフルな水玉模様のイメージだが初期作品は内省的な印象を受けた。基本的に企画展って入ってすぐが混雑する。みんな最初だからか気が張ってじっくり見ようとするからだろう。進んでいくとだんだん流れるようになる。今回の展示も同じで、最初が草間彌生だからってのもあったかもしれないが入り口付近はかなり渋滞していた。

以下、いいなあと思った作品。

 

ヤノベケンジ《イエロー・スーツ》。『JUNK HEAD』的な世界観の造形かと思いきや美浜原発事故直後に製作された放射能防護服をモチーフにした作品だという。青と黄の組み合わせがインパクトある。

 

奈良美智人面犬》。足の数多くないか? どこかで見たことあるような顔。かわいいのに目つきが悪い女の子たちの絵も展示されていた。

 

写真は撮れなかったのでないが千葉和成の「ダンテ『神曲』現代解釈集」も見応えあった。現実に起きた事件やその関係者を『神曲』の地獄篇と絡めて造形したり描いたりする。現在も存命の(元)犯罪者を天使が処刑してたりして怖い。ところどころでマクドナルドのハンバーガーが描かれているのが可笑しかった。

リンク先で見られる。見てるとこの世こそが地獄なんだなって気持ちになる。

kazumasachiba.com

 

加藤泉《無題》。目当ての展示の一つ。プリミティブなパワーを感じる。内股がかわいい。何かに怯えているのか? 今回の展示では絵や写真などの平面的作品より造形などの立体的作品に惹かれた。大きいサイズのが多くてこれは図録じゃわからない、生で見てこそだなと思った。

 

玉本奈々《心眼》。これ見た瞬間、あっと思った。まどか☆マギカ『叛逆の物語』にこんなようなのが出てこなかったっけ。瞼の中に歯だったか? 遠目には絵のようにも見えるけどテキスタイルで作られている。

 

塩田千春《ZUSTAND DES SEINS(存在の状態)-ウェディングドレス》。不気味。幸福を象徴するモチーフのウェディングドレスが宙吊りに囲われて雁字搦めになっている。結婚とは束縛であるってことを言ってるのか? 結婚への心理的葛藤の表現? 

 

工藤麻紀子《もうすぐ衣替え》。半袖を着ていてもうすぐってことはこれから冬服になるってことで季節は夏の終わりなのかな。ペンギンが喜んでいるようにも見えるからこれから寒くなるのか。女の子たちがアンニュイな表情をしてるのは夏の終わりが寂しいから? 上の子は下の子の髪を撫でているようにも頭を押さえつけているようにも見え(上の子は気が強そうだ)、親しみと憎しみの両義性を窺わせる。下の子のいる地面だけ色が違うのに不穏さを、愛と死みたいなものも感じる。

 

森靖《Jamboree - EP》。プレスリーに何か付いてる。これ、ちょっとした大仏レベルでめちゃくちゃ大きかったんだけどどうやって個人で所蔵してるんだろう。

 

鴻池朋子《皮緞帳》。牛革が繋ぎ合わされている。中央に脊椎のようなもの、左の方に生き物たち。大きさと色彩に圧倒されてしまって目が滑ってしまいよく覚えていない。もっとじっくり描かれているものを見てくればよかった。

 

小谷元彦《サーフ・エンジェル(仮設のモニュメント2)》。これも目当ての展示だった。震災をテーマにしたパートに設置。天使がバカンスで福島の海にサーフィンしに来たのかな。これも高さが6メートルだそうでどうやって所蔵してるのか気になる。水着の皺や膝の生々しさがすごい。サモトラケのニケや映画『タイタニック』もモチーフになっているそう。顔の光は希望か。

 

この展示スペースはかなり広く、《サーフ・エンジェル(仮設のモニュメント2)》《皮緞帳》のほかにも廃車にガラスのキノコが生えている青木美歌《Her songs are floating》などもあり圧巻だった。現代美術すげえって思った(語彙力)。

 

KOMAKUS《GHOST CUBE》。真っ暗な部屋の中、複数のスピーカーから多数の日常会話が音声として流れる。フォルムが面白い。

 

「崩壊と再生」のパートは他にも映像作品などありかなり充実。写真はすべてiPhone15で撮っていたんだけどここを過ぎて以降はほとんどフォルダに残っていないのでたぶんこのあたりで力尽きた。これは何を意味しているのか、何が描かれているのか、抽象度の高い展示の数々を見て、頭使っているうちにめちゃくちゃ疲労を覚え、最後の方は「疲れた…」と同行者にぼやくていたらく。あとで確認したら見て回るのに2時間弱を要していた。美術館でこれだけたくさん展示された作品をこれだけ時間をかけて鑑賞した経験は記憶にない。最後の方の展示ではコロナ禍の東京でスケボーする若者を撮影した映像作品がよかった。当時、みんなステイホームして外出を自粛していたよな、と数年前のことなのにもう随分昔のように思い出された。

 

見終わってぐったりしたので一服するべく美術館内のカフェ「二階のサンドイッチ」で軽く食事。朝飯食ってこなかったせいで疲れたのかな。

 

チケット売り場を見ると自分たちが来たときにはなかった行列ができていたので午後はさらに混んだものと思われる。自分たちのときも人は少なくなかったが展示室が広いおかげでストレスほぼなくゆったり鑑賞できた。どれほどいい展示でも人混みの中たくさんの後頭部越しに見るんじゃあ感動も対話()もない。そういう意味でタイミング的にツイていた。

 

ミュージアムショップをひやかしたのち常設展も見ていった。ここの展示もなかなか難しかった。常設展も基本的に撮影可能だったが、思ったのは、スマホでのみ撮影可にして一眼は不許可にした方がいいのでは…ということ。というのも、でかいレンズ付けた一眼片手に持ったおっさんがろくに鑑賞せずピッピピッピ撮っては早足に進んでいくのを見て、何しに来てんだよ…とちょっと不快に感じたので。俺もこの日はカメラを持ってきてたんだけど、カメラで撮るのはなんか違うよな…とへんな遠慮が出てロッカーにしまってきた。単焦点レンズだったからどのみち思うように撮れなかっただろうけど。美術館、昔は撮影禁止が当たり前だったのに最近可のところが増えてきてるのは、SNS等で画像付きで宣伝してもらうのを期待しているからかな。無料で宣伝してもらえるわけで美術館側としたら美味しいっちゃあ美味しいんだろう。

まあ、どうでもいい俺のお気持ちに過ぎない。一応書いておく。

 

「日本現代美術私観」を見て脳のOSがアップデートされた(気がする)あとでは何を見てもアートに見えてしまう。美術館を出て清澄庭園へ向かう道すがら、並んだたくさんのガスメーター、壁が蔦に覆われた家、玄関先の鉢に置かれた色褪せた置物、錆びた車止め、割れたバンパーをテープで補修した車…などなどなんでも。自分はアートとは「自分という人間がここに存在していることの表明」だと思っていて、だとしたらたしかに人の生活のすべてがアートたりうるのかもなあと思った。いやあ、マジではるばる埼玉からこの美術展を見にきてよかった。充実感やばい。

 

清澄庭園。来るのは二度目。一度目は、今は鶯谷にある古書ドリスが清澄白河にあった当時訪問のついでに寄った。あの頃は古書店巡りをよくやっていた。ブルーボトルコーヒーにも行った。

 

写真を撮るには一番つまらない午後3時前という時間帯。人が映らないタイミングで撮ってるから嘘のようだがかなり混雑していた。外国人観光客と、小学生は入場無料だからか子供連れ。前に来たときも混んでいた。そのときはポケモンGOが流行っていた頃でみんな夢中でスマホの画面を見ていた。ポケモンGO、今どうなってるんだ? スマホゲーをやらない俺は何もわからない。

ところでこの3枚は一眼で撮っている。レンズはお散歩用M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8。一番上の涼亭が映っているのだけiPhone15。見比べると一眼で撮るよりiPhone15で撮ったほうが綺麗に撮れてる気がする。

 

同じような構図で撮ってこっちが一眼。全体的にぼやっとしていて締まりがない。左側の松の緑が明る過ぎるわりに右側は暗すぎる。見ていて気持ち悪くなる写真。設定が適切じゃない? f8だけどもっと絞るべき? めんどくせえ。iPhoneで綺麗に撮れるならiPhoneでもうええやん。帰宅して写真を見て、アホらしくなってカメラぶん投げたくなった。少なくともミラーレス一眼の焦点距離標準域単焦点レンズはもはやオワコンなのでは? いや、すべて俺の能力不足なだけか? でもぶっちゃけ美術展の写真見返していてiPhone15の写真に不満まったくないんだよな。綺麗に撮れてる。ズームとかするとなるとまた話は別だけど。

 

乗り継ぎの都合で清澄白河駅だと不便なので散歩がてら門前仲町駅までだらだら歩く。東京は川が多くていい。今日は美術館で食べたサンドイッチしか腹に入れていなかったので途中飯が食えるところがあったら入ろうと思ったがなく、結局駅横のフレッシュネスへ。

 

食事したのちすぐそばにある成田山東京別院深川不動堂へお参り。中が無料で観覧できる。熱心に祈っている人がいて人生いろいろあるんだろうなあという気持ちに。中を周りながらかなり熱心なファンが大勢いるお寺さんと見受けられた。短いけど参道を歩いていてふとここが東京であるのを忘れた。かといってじゃあどこだと思ったのかというと特定のどこかということはなく、なんだか参道ってどこであってもどこでもないような趣がある。単純に疲れていただけかもしれない。この日の歩数18000歩。

 

帰りは高田馬場崎陽軒で夜飯としてシウマイ弁当を購入した。まさかこのあとベイスターズが26年ぶり日本一になるとは思ってもみなかった。

常温で食べたらいまいちだったのでレンチンした方がよかったのだろうか。

 

ここのところよく出かけたが少し疲れているし睡眠も不足気味なので来週の土日はゆっくり過ごそうと思う。読みたい本も溜まっている。