少し前にはてブを見ていたらこんなエントリが上がっていた。
前に洋画オールタイムベスト10を挙げた。
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上の記事は作品のよさもさることながら、見た映画にまつわる自分の思い入れが重視されてるのでラインナップが古め。これ書いたあと邦画でもオールタイムベスト10を選んでみようとしたんだけど、俺は子供の頃から洋画ばかり見てきた人間なので選べなかった。選ぶほどの蓄積がない。映画は洋画ばかり見てたし小説は海外の翻訳ものばかり読んでいた。普段の日常から遠く離れた物語への憧れが強かったのだろう。
邦画おもしれえな、と思うようになったのはここ何年か。最近は洋画より邦画の方が公開が楽しみ。いい映画、いい監督が増えたように思う。歳食って好みが変化したのもある。なので俺にとって親しい、2000年代以降の比較的最近の(と言っても2000年はもう25年も前なんだが)邦画から、何度でも見たいと思える映画を10本、監督の重複なしで選んでみた。実写限定。公開年はFilmarksを参照した。
- オーディション(2000年)
- バトル・ロワイアル(2000年)
- アウトレイジ(2010年)
- 八日目の蝉(2011年)
- 海街diary(2015年)
- シン・ゴジラ(2016年)
- あのこは貴族(2021年)
- アンダーカレント(2023年)
- 正欲(2023年)
- 悪は存在しない(2023年)
オーディション(2000年)
怖いとかグロいとか聞いていたのでなかなか見られなかった映画。去年の夏にようやく見た。面白かったのであとで村上龍の原作も読んだ。
再婚相手を、でっちあげた映画のオーディション応募者から選ぶ発想がイカれている。でもこの映画の少し前の時代、バブル期のテレビ業界なら実際にやってたとしてもおかしくない気もする。某局なんかとくに。
公開当時はヒロインの異常性が際立ったホラー映画だったかもしれないが、今の時代の目で見ると少し見方が変わる。心の隙間を埋めたい中年男が、自分は42歳なのに再婚相手の希望年齢を20代から30代に限定するキモさ。マッチングアプリの普及で素性のわからぬ他者と遭遇する可能性が上がったことによるリアリティ*1。「欲望される側」だった女による反攻というフェミニズム要素*2。俺の解釈ではこの映画の1年前に公開された『カル』も『オーディション』と同じテーマを扱っていた。『カル』のルーツの一つだろう『羊たちの沈黙』も男たちの性的な視線に常に晒されている女性のしんどさを描いていた。
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この方の指摘に同意。
『羊たちの沈黙』
— ぽよこ (@poyoco666) 2024年12月28日
「サイコスリラー」という部分が強調されがちだが、男性から若い女性に向けられる気持ちの悪い(性的な)目線を常に描いている点でも特筆すべき作品だ。性的対象として値踏みされている際の女性の居心地の悪さと漠とした恐怖感が映像で見事に描かれている。 pic.twitter.com/7znCt1Mknl
と言っても『オーディション』の山崎麻美はサイコパスの猟奇殺人者なので彼女に同情はできないが。中に人が入った頭陀袋が転がる部屋で俯きながら誘いの電話を待っている(獲物が罠に掛かるのを待っている)シーンのビジュアルは強烈だった。
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バトル・ロワイアル(2000年)
リバイバル上映で見た。デスゲームものの元祖。今見るとすごい豪華キャスト。そしてみんな若い。当たり前だが…。制服で銃を撃ち白いシャツが血で染まるビジュアルと暴力描写のインパクトは絶大で後続の映画に大きな影響を与えたと思う。中年になった今、生徒たちよりキタノに関心が向く。家にも職場にも居場所がないからお気に入りの女子生徒を道連れに死のうとしたのか、逆に彼女に最後の一人として生き残って「価値のある大人」になってほしかったのか。生きていたってしようがないけど、死ぬのは怖いし、一人で死ぬのは癪だから、かわいい生徒たちを巻き込んで派手にやりたかったのかな。支離滅裂だけどわかるような気もする。最後の、水鉄砲、携帯電話、クッキーのコンボがたまらねえ。
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アウトレイジ(2010年)
見るとこの野郎とか馬鹿野郎とか言いたくなる。三部作のうち無印が頭一つ抜けてるように思う。一番面白くて一番笑える。歯医者のドリルを口の中に突っ込んで血まみれにするシーン、舌出させて殺すシーン、中華包丁で切断した指が丼に入るシーン、どれも残酷な描写なのにユーモラスで笑える。恐怖と笑いは紙一重。
ビヨンドはキャストは豪華だけど笑えるシーンが少ない。「野球やろうか(ニッコリ)」くらい。
最終章だけ公開当時劇場で見たけど、重要キャラはビヨンドで死んじゃってるし、生き残ったキャラもみんな歳をとって、西田敏行と塩見三省は病み上がりだし、全体的に元気がなくて寂しかった。
八日目の蝉(2011年)
自分を誘拐した女なのに、その女との日々が幸福だったから彼女が母親のように思えてしまう。そして彼女と同じように父親になってくれない男の子供を妊娠する。主人公の境遇がきっつい。ラストはハッピーエンドなのか? 俺にはわからん。
キャストが素晴らしい。井上真央、無表情すぎ。幼児期に犯罪被害に遭ってるからなのか。何考えてるかわからなくて怖い。小池栄子も気味悪い。森口瑤子は情緒不安定。白髪混じりの頭が心労を物語る。田中哲司のダメそうな感じ、劇団ひとりの軽薄そうな感じ。余貴美子のカルト教祖と田中泯の写真屋はハマってる。でもこの映画は何と言っても永作博美でしょう。不倫の挙句の誘拐犯、だけど善き母親。フェリー乗り場での「その子はまだ御飯を食べていません!」のシーンは思い出すだけで涙が出そうになる。最後、すれ違いになってしまってかつての「母子」が結局会えないのもいい。
原作のモデルになった実際の事件は悲惨だった。
海街diary(2015年)
公開当時劇場で見た。是枝監督の映画だと『誰も知らない』と『万引き家族』がインパクト強いんだけど、どちらも悲しくてしんどいので一度見たら十分、何度も見たいとは思わない。『海街diary』は映像が綺麗でロケーションが最高でキャストが豪華で叙情に満ちていて、是枝監督の映画では一番好き。俺も四姉妹に混ざってあの家で暮らしてえ。「お兄ちゃん」って呼ばれてえ。
シン・ゴジラ(2016年)
公開当時劇場で見た。人生初4DXだった。揺れるわ、水降ってくるわ、遊園地のアトラクションみたいで楽しかった。庵野監督に実写のイメージがなかったのでどんなもんかと思ってたけど、見てみたら「エヴァより面白いじゃん」と思った。
ゴジラがブチ切れて都心を破壊しつくすシーン。最後の審判の日かのように何もかもが破壊され世界が燃え上がる。初めてこのシーンを見たとき動悸がして、それから不思議とカタルシスを覚えた。疲れてたのかな。瓦礫のシーンは震災のイメージ。ゴジラは自然災害の象徴。だから兵器ではなく重機で倒す。
恋愛要素が一切ないのもいい。
あのこは貴族(2021年)
公開当時劇場で見た。すごくよかった。感動した。自分らしい生き方を模索する女性たちの物語。恋愛より友情の尊さを謳っているのがいい。主人公二人、どちらにもいい友だちがいる。
夜の都心で水原希子と山下リオが自転車にニケツして走るシーンが大好き。「田舎から出てきて搾取されまくって、もう私たちって東京の養分だよね」は名台詞だと思う。東京と地方、階級格差、文化資本、親ガチャ…インターネットの煽りテンプレ的テーマを描きながら対立ではなく融和を志向する。
門脇麦のお嬢様演技がすごい。『ここは退屈迎えに来て』と真逆のキャラ。
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アンダーカレント(2023年)
今泉監督は『愛がなんだ』と『街の上で』も好きなんだけど、どれか一つとなると劇場で見てるのでこれ。夫の失踪、主人公のトラウマ。彼女がトラウマを抱えていることは中盤で明らかになる。真木よう子が急に過去を思い出してパニクるシーンがある。それまでは穏やかだった映画のトーンがこのあたりから不穏になっていく。
夫は最後まで見つからなくてよかったと思う。なぜ何も言わずに出ていってしまったのか、そして連絡をよこさないのか、その謎は解明されず宙ぶらりんのままにして、見た人それぞれが考えるオープンエンディングの方が、失踪した本人によってネタばらしされるより余韻があったんじゃないか。真相がわかってしまうと興醒め。
リリー・フランキーがいい味出してた。
正欲(2023年)
岸監督は『二重生活』も好きなんだけど、一つとなると劇場で見てるのでこれ。ダイバーシティや多様性を謳う現代への諷刺。多様性と言っても人に害を与えず大多数に理解できる範囲に限られる。主人公たちの性的指向は世の中の理解が得られない。だから攻撃されず済むよう必死に普通の人に擬態して生きている。
稲垣吾郎演じる検事は、自分の生き方は絶対に正しいと信じてきたのに最後には家族に去られ一人きりになってしまう。一方で異常者であるはずの二人は困難に遭っても互いへの信頼を微塵も失わない。
結婚は同級生同士、職場が地元だから同級生が来店する、既婚者から独身者へのナチュラルなマウンティングなど地方あるあるがきつい。家族でテレビを見ていて子供が映ると気まずくなるのはいい歳した独身実家暮らしあるある。
新垣結衣がよかった。いい意味でイメージが変わった。アイドル的なかわいい/きれいな役よりこの映画みたいな陰キャの役を今後もやってほしい。美人が睨むと迫力すごい。
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悪は存在しない(2023年)
濱口監督は『寝ても覚めても』と『ドライブ・マイ・カー』も好きなんだけど、どれか一つとなると直近劇場で見たこれ。この映画を見るたびにコロナ禍を思い出すだろう。予告を見てもどういう話なのか全然わからず、予備知識なしで見に行って、途中までは経済優先の環境破壊や人と自然の共生といったありがちなテーマなのかなと思いきや、それまで悪人のように思われた人物が実はごく平凡な、どちらかというと善良な人物だと判明するあたりから先がわからなくなり面白くなった。男女二人が車中で会話するシーン、ユーモラスで素晴らしかった。どんな会話してたかもう覚えていないが。
ラストが衝撃的で解釈が難しかった。自分ではスッキリした答えが出せずネットを検索して一番腑に落ちるのに同意した。
監督はインタビューでこう答えている。
「ああいう終わり方にしようと意図してそうしたというよりは、まず自然にそう書いてしまった。その後で、そう書いたことに自分で腑に落ちたっていう流れです。自分のなかでは全部を言語化しているわけではないですが、全体の流れとしてそんなに整合性がないわけでもないと思っています。
ただ、もし映画は何か答えを提示するものであって、その答えを示してくれるかどうか、ということが映画を観ることの一番の関心事だとしたら、それはちょっと貧しい考え方なのではないかと一映画ファンとして思います。映画は何かの問題に答えを出すものではなく、どちらかといえば、問いそのものというほど大げさではないけれど、我々が解決できないような問題と一緒に生きて行くことを促すものだと思うので、何か答えを提示する必要があるとは思ってないです」
俺としてはあのラストだからこそ記憶に残る映画になったと思う。
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