趣味がなくても生きてゆけます。

少し前に、中年になって以降、「生きてても何も楽しいことない」と書いた。

偽らざる今の心境。

 

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俺は独身中年なので世間が同世代の男性に求める、あるいはイメージする役割(夫だったり父親だったり)を担えていない。だから楽しいことに家族との団欒や子育て関連は含まれない。

有能な働きマンではない。労働は金のためにやっている。だから仕事も含まれない。

付き合いが悪いので友達もいない。ゼロ。だから交友も含まれない。職場の人と飯食いに行ったりすることはたまにある。

というわけで、独身で、仕事ができなくて、友だちもいない俺にとって楽しいことになりうるのは趣味しかない。

 

俺の趣味。

本を読んだり、映画を見たり、旨いと評判の店へ食いに行ったり、近郊へ一泊旅行したり、写真を撮ったり(たまに)、そんなところ。

でも最近、上記のそれらをやる気があまりしないんですね。なんだかもうかったるくって。目を使う趣味は疲れるし。

なのでやらなくなってきた。

 

映画や外食がとくに顕著。2019年から映画館で映画を見るのを趣味にしはじめて一時は年間100本近く見に行ったものだけれど、去年あたりから映画見るためにわざわざ出かけるのが億劫になって今年から見に行く回数がかなり減った。今のところ10本。俺の場合新しい映画を見たいんじゃなくて面白い映画を見て楽しい時間を過ごすことを求めているのでそれが映画館でやる新作である必要はないんだよな、ということに気づいたのもある。今は、家にいてもつまらないときの外出先としての映画館って考えになりつつある。『ルックバック』と『悪は存在しない』は見たいから見に行くけど。

 

外食も、少し前まではラーメンやうどんを食べに行ってたけど、行くまでの時間や交通費や行列に並ぶことの馬鹿馬鹿しさにだんだん嫌気が差してきてあまりしなくなった。もともと味に疎いので料理を食うより情報を食っているようなもんだったし。最近は価格の値上がりで外食自体回数が減った。代わりに家で適当なもの作って食べてる。

 

何をしても楽しくない。

何をするのも面倒くさい。

これって更年期の症状なのか?

俺は中年クライシスの真っ只中に今いるのか?

 

小説や映画に飽きるのは、かれこれもう30年以上も読んだり見たり続けたせいで自然と目が肥えて求めるハードルが知らず知らずのうちに上がっているからだろう。俺にとってドストエフスキー作品──『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』を超える小説との出会いは今後おそらくない。

 

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そういう今の俺がしている自問。

かったるいなら無理して趣味やらなくていいんじゃねえの? 

 

一日は24時間。平日ならそのうちの大半は労働と睡眠に充てられる。食事や風呂や買い出しなどもする必要がある。

余った時間を余暇時間として趣味に費やすのは尊い生き方だ。だが、どうにも気乗りがしないなら無理にやらなくてもいい。楽しくないことを無理に続けるのは精神衛生上よろしくない。

 

では仕事にのめり込めず交友もない独身中年、趣味をしないで代わりに何をするのか?

生活をするのである。

 

部屋やトイレや風呂をはじめ家の掃除は始めればキリがない。床や水回りや窓の桟や棚の後ろや棚の天板を綺麗にする。玄関を掃く。整理整頓して不要な物を処分する。洗車する。車内に掃除機をかける。ペダル周りやホイールを拭きタイヤの溝に嵌っている小石を取り除く。敷地の草むしり。ムダ毛の処理。眉毛を整える。爪を切る。不要なサブスクの解約。IDやパスワードの整理。不要なクレジットカードの解約。お得なクレカサービスを調べる。昔撮ってそのままになっている写真データの整理。寝具や寝巻きのマメな洗濯。仕事でちょっとわからない(けど今更人に聞けない)知識の解説動画を視聴する。適当な食材を買ってきて適当に調理する。今週仕事ハードだったなあって週末は思いっきり寝る。…等々。

 

生活に関わることをやりはじめたらキリがない。たぶんそれだけをやってても余暇時間は十分潰れる。そしてこれらはやるほどにQOLを向上させ日々を過ごしやすくしてくれる。

 

なんだ丁寧な暮らしか、と言われてしまうと近いんだけど、俺の言ってるのはもうちょっと意識が低い。生活を整える、というか。丁寧な暮らしって意識高いイメージがある。カット野菜とイワシの缶詰と納豆とレトルトご飯とレトルト味噌汁の食事を丁寧な暮らしとは言わないだろう。俺が言ってるのはそのくらいのレベルの話。

 

それって趣味が掃除、洗車、自炊なだけでは? と言われるかもしれないが、生活に必要な営みを行なっているだけなので趣味というカテゴリーには入らないと思う。毎日飯食ったり風呂入ったり寝たりすることを、なかんずく労働を趣味とは言わないように。

 

中年は生活が第一。

趣味はその次。

生活を整えてから余った時間で細々と趣味と付き合っていこう。

 

…と言いつつ、俺自身、まだ趣味から生活へ人生の比重を移せてはいないので上記内容は言いっぱなしになってしまうのだけど。

10年後、60近くなってもまだ小説読んだり映画見たりしてるのかなあ、俺。

 

仮に今後すべての趣味に飽きたとしても、生活があるかぎり余暇時間に手持ち無沙汰で困ることはない、と今の俺は思っている。それは加齢が進行していく過程で実地に検証することになるだろう。趣味がなくても生活があれば生きていけると。