読書

小松和彦『神隠しと日本人』を読んだ

神隠しと日本人 (角川ソフィア文庫) 作者:小松 和彦 KADOKAWA Amazon 私たちの日常生活のなかで「神隠し」という語があまり用いられなくなってからかなりになる。いつの頃からかは地域差があって一概にはいえないが、およそのところをいえば、都市化の波が急…

腰痛体験記を二冊読む──高野秀行『腰痛探検家』と夏樹静子『腰痛放浪記 椅子がこわい』

腰痛探検家 (集英社文庫) 作者:高野秀行 集英社 Amazon 腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫) 作者:静子, 夏樹 新潮社 Amazon 作家二名の腰痛体験記。どちらも年単位の長患い。自分は幸いにも腰痛になったことはないが両方の肩が四十肩になって2年苦しんだの…

俺もブログもいつか消える──古田雄介『ネットで故人の声を聴け』を読んだ

ネットで故人の声を聴け 死にゆく人々の本音 (光文社新書) 作者:古田雄介 光文社 Amazon 個人が気軽に自分の情報をネット上に発信できるようになってすでに四半世紀が経過した。この間、日本国内だけでも3000万人近い人たちが亡くなっているという。このうち…

人間は猫ほど賢くは生きられない──ジョン・グレイ『猫に学ぶ いかに良く生きるか』を読んだ

猫に学ぶ――いかに良く生きるか 作者:ジョン・グレイ みすず書房 Amazon 人間にとって世界は脅威に満ちた場であり生には不安がつきまとう。哲学も宗教も生きることに伴う不安とその苦しみから解放されることを目的にして生まれた。古代の哲学者たちは禁欲的な…

映画館とは他者のいる場所──『そして映画館はつづく』を読んだ

そして映画館はつづく──あの劇場で見た映画はなぜ忘れられないのだろう フィルムアート社 Amazon 日本各地のミニシアター支配人や関係者、また映画制作に携わる人たちへのインタビュー集。奥付を見ると2020年11月初版発行とある。最初の緊急事態宣言および外…

倉橋由美子『反悲劇』を読んだ

反悲劇 (講談社文芸文庫) 作者:倉橋由美子 講談社 Amazon ギリシア悲劇をモチーフにした短篇集。 「向日葵の家」はオレステスとエレクトラの物語。メタ的というのか、登場人物が芝居を演じていることに自覚的だったり、デウス・エクス・マキナを神ではなく人…

赤瀬川原平『超芸術トマソン』を読んだ

超芸術トマソン (ちくま文庫) 作者:赤瀬川 原平 筑摩書房 Amazon 路上観察学入門 (ちくま文庫) 筑摩書房 Amazon 超芸術トマソンの(一応の)定義は「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」。トマソンてなんぞやと思ったら1982年に巨人にいた…

『人は2000連休を与えられるとどうなるのか?』を読み自分の無職時代との落差に唖然とする

人は2000連休を与えられるとどうなるのか? 作者:上田啓太 河出書房新社 Amazon 仕事を辞め無職となった著者が、2000日以上に及ぶ自由時間をどう過ごしたかについての記録。解放感を感じるのは最初の二週間くらいまで、一日に1タスク実行で力尽きるよう…

今福龍太『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』を読んで散歩について考える

ヘンリー・ソロー 野生の学舎 作者:今福 龍太 みすず書房 Amazon 今年の冬、年明け頃から散歩を始めた。健康のため、そして長期休暇の暇つぶしが最初の動機だった。部屋にいてパソコンでネットしたり、酒を飲んだり、読書したりしていると気分がモヤモヤして…

アメリカは映画の国──『ビデオランド』を読んだ

ビデオランド 作者:ダニエル・ハーバート 作品社 Amazon 日本でレンタルビデオがもっとも流行ったのは(レンタルCDもそうだろうが)90年代だろう。当時高校生だった自分は映画を見たくなると近所のTSUTAYAや地元チェーンのレンタル店に自転車で向かい、棚に…

中年の生存戦略を尾崎一雄に学ぶ──『新編 閑な老人』と『暢気眼鏡・虫のいろいろ』を読んだ

新編-閑な老人 (中公文庫 お 33-3) 作者:尾崎 一雄 中央公論新社 Amazon 暢気眼鏡 虫のいろいろ 他十三篇 (岩波文庫 緑 157-1) 作者:尾崎 一雄 岩波書店 Amazon 荻原魚雷さん編集の尾崎一雄の文庫が出たので購入、ついでに岩波文庫のも再読。昨年読んで感銘…

「下流老人」の日常を飄々と──岡田睦『明日なき身』を読んだ

明日なき身 (講談社文芸文庫) 作者:岡田 睦 講談社 Amazon 1932年生まれの作家による私小説を5篇収録。三人目の妻と団地の一戸建てに住んでいた作家は彼の薬物依存が原因で離婚になる。家は妻の所有となり追い出される。行くあてなく生活保護を受給してアパ…

アメリカは幽霊の国──『ゴーストランド』を読んだ

ゴーストランド: 幽霊のいるアメリカ史 作者:コリン・ディッキー 国書刊行会 Amazon 読み終えたのは一月末だがいい本すぎて感想がなかなか書けなかった。アメリカ各地に残る幽霊話を検証することで彼の国の過去を発掘していく。 私たちは、生者を理解する手…

矢部嵩『魔女の子供はやってこない』『〔少女庭国〕』を読んだ

魔女の子供はやってこない (角川ホラー文庫) 作者:矢部 嵩 KADOKAWA Amazon 〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA) 作者:矢部 嵩 早川書房 Amazon 独特の文体と唯一無二な世界観。『魔女の子供はやってこない』は小学生女子と魔女の日常物語。その出会いとなる第一…

『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』を読んで自分の投資を振り返る

全面改訂 第3版 ほったらかし投資術 (朝日新書) 作者:山崎 元,水瀬 ケンイチ 朝日新聞出版 Amazon 本書のオリジナル版が自分が初めて買った投資の本だったと思う。しかし買って読んだものの投資を始めるには至らなかった。前の会社に勤務していた頃だから201…

ユートピアそれともディストピア──『消滅世界』と『沙耶の唄』を読んだ

消滅世界 (河出文庫) 作者:村田沙耶香 河出書房新社 Amazon 沙耶の唄 (星海社 e-FICTIONS) 作者:大槻涼樹,Nitroplus 講談社 Amazon 二冊とも『文藝 特集・夢のディストピア』の「精神と身体改造のための闇のブックガイド」に教えられた。 『消滅世界』の舞台…

『ルポ中高年ひきこもり 親亡き後の現実』を読んだ

NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実 (宝島社新書) 作者:NHKスペシャル取材班 宝島社 Amazon 十年以上も引きこもったまま中高年になってしまった人たちが日本には推定61万人いる。自分もかつて引きこもりだったから分岐次第ではそうなってい…

J.C.ブラウン『ルネサンス修道女物語』を読んだ

ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア 作者:J.C. ブラウン ミネルヴァ書房 Amazon 17世紀、トスカーナ地方の尼僧ベネデッタ・カルリーニは幻視者だった。磔にされたキリストと同じように体に聖痕が現れ、使徒や天使の言葉をトランス状態で語り、人々…

洗脳教育と労働について──鈴木大介『老人喰い』と新庄耕『狭小邸宅』を読んだ

老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体 (ちくま新書) 作者:鈴木 大介 筑摩書房 Amazon 狭小邸宅 (集英社文庫) 作者:新庄耕 集英社 Amazon 『老人喰い』は特殊詐欺に関するノンフィクション…らしいが取材を元にフィクション化されている不思議な本。この本に登場す…

和田靜香さんによる民主主義についての本を2冊読んだ

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。 作者:和田靜香 左右社 Amazon 選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記 作者:和田靜香,小川淳也 左右社* Amazon 大島新監督の『なぜ君は総理大臣になれないのか』は面…

中島らも『今夜、すべてのバーで』を読んだ

今夜、すベてのバーで 〈新装版〉 (講談社文庫) 作者:中島らも 講談社 Amazon 著者の体験に基づいているのであろうアル中小説。連続飲酒の挙句に入院する中年男性が自らが依存症に陥った経緯を振り返り、自身の経験から依存症一般を考察する。入院といっても…

高橋ヨシキ『悪魔が憐れむ歌』を読んだ

悪魔が憐れむ歌 ――暗黒映画入門 (ちくま文庫) 作者:高橋 ヨシキ 筑摩書房 Amazon 何事においても政治的な正しさが求められる時代に、政治的な正しさなどクソ喰らえと真っ向から反論する硬派な映画評論。紹介される映画の半分は未見なのに未見だろうがそうで…

アン・ケース/アンガス・ディートン『絶望死のアメリカ』を読んだ

絶望死のアメリカ――資本主義がめざすべきもの 作者:アン・ケース,アンガス・ディートン みすず書房 Amazon 『絶望死のアメリカ』によるとアメリカは今や学士以上の大卒者と低学歴者では別世界なほどの超格差社会になっている。エリートが富を独占する一方で…

大江英樹『となりの億り人』を読んだ&自分が影響を受けたお金関連の本5冊

となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」 (朝日新書) 作者:大江 英樹 朝日新聞出版 Amazon 2019年の調査によると日本で1億円以上の金融資産を持っている世帯は133万世帯。これは一般世帯の2.4%に当たる。世帯主100人のうち2人から3人は「億り人」がい…

稲生平太郎『アクアリウムの夜』『アムネジア』を読んだ

アクアリウムの夜 (角川スニーカー文庫) 作者:稲生 平太郎 KADOKAWA Amazon アムネジア (角川書店単行本) 作者:稲生 平太郎 KADOKAWA Amazon 書影はアマゾンだがDMMブックスでポイント還元セールをやっているのでそちらで買ってiPadminiのアプリで読んだ。以…

ハイジ・J・ラーソン『ワクチンの噂 どう広まり、なぜいつまでも消えないのか』を読んだ

ワクチンの噂――どう広まり、なぜいつまでも消えないのか 作者:ハイジ・J・ラーソン みすず書房 Amazon 新型コロナウイルスの対抗手段としてワクチンが開発され接種されている。しかし接種を拒否する人たちも世界中に数多くいる。著者はユニセフやWHOのワクチ…

町山智浩『それでも映画は「格差」を描く』を読んだ

「最前線の映画」を読む Vol.3 それでも映画は「格差」を描く(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル) 作者:町山智浩 集英社 Amazon 近年、世界各国で経済格差や貧困をテーマにした映画が増えてきているという。カンヌ映画祭のパルム・ドール…

ジェームズ・ブラッドワース『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』を読んだ

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した~潜入・最低賃金労働の現場~ 作者:ジェームズ・ブラッドワース 光文社 Amazon イギリスのジャーナリストによる最低賃金労働現場の体験ルポ。原題はシンプルにHIREDなので邦題はだいぶ盛っているというか煽…

江川紹子『「カルト」はすぐ隣に  オウムに引き寄せられた若者たち』を読んだ

「カルト」はすぐ隣に オウムに引き寄せられた若者たち (岩波ジュニア新書) 作者:江川 紹子 岩波書店 Amazon カルトによるマインドコントロールについてオウム真理教を例に検証・分析する。1章では教祖麻原の生い立ちとオウム真理教の成り立ちを、2章ではオ…

エド・ゲイン関連の二冊を読む──ハロルド・シェクター『オリジナル・サイコ』とロバート・ブロック『サイコ』

オリジナル・サイコ―異常殺人者エド・ゲインの素顔 (ハヤカワ文庫NF) 作者:ハロルド シェクター 早川書房 Amazon サイコ (創元推理文庫) 作者:ロバート ブロック 東京創元社 Amazon ヒッチコックの映画『サイコ』(原作はロバート・ブロックの小説)のノーマ…