読書

人はみな歴史の冗談に翻弄される犠牲者である

ミラン・クンデラ『冗談』を読んだ。 冗談 (岩波文庫) 作者:ミラン クンデラ 岩波書店 Amazon 以下、内容の核心に触れています。 主人公ルドヴィークは、片思いの女学生の気を惹こうと過激な冗談を絵葉書に書いて送る。その内容が共産党に見つかり、彼は反革…

迷惑をかけずに生きることは可能か、可能だとしてそれは好ましいことなのか

がんに冒された哲学者と文化人類学者の往復書簡をまとめた『急に具合が悪くなる』を読んだ。 この本にこういう文章が出てくる。 しかし、自分の人生に完璧な責任をとれる人などいるのでしょうか。果たしてそういう人がいたとして、それは好ましいことなので…

最近読んだ本(2026年4月)

先日、買って8年しか(?)経っていないBlu-rayが再生できなくなる体験をした。 hayasinonakanozou.hatenablog.com ディスクは脆い。それに比べて紙の本は強い。もちろん物体である以上経年劣化するけれど進行には時間がかかる。ヤケ、シミ、黄ばみ、背割れ…

三度目の『ボヴァリー夫人』感想

先日、古典新訳文庫の『ボヴァリー夫人』を読み終えた。 新潮文庫の生島訳、河出文庫の山田訳に続いて読むのは三度目。前回読んだのが2009年なので*117年ぶりの再読。この翻訳はとても読みやすかった。 以下、ネタバレあり感想。しかし裏表紙の紹介文を読め…

買った本をすぐに読むのは気持ちいい(2026年3月に読んだ本)

3月、自分好みの本が何冊か発売されたので購入した。積読多数の俺、大抵の場合、本を買っても、「買った(確保した)」という事実に満足して読むのを後回しにしがちだった。後回しにして何してんのかというと…なんだろう、YouTube見たりしてるのかな。 最近…

最近読んだ本(2026年2月)

読んだのは10冊。一部ネタバレあり。 稲田豊史『本を読めなくなった人たち』 都築響一『Museum of Mom’s Art』 宇野常寛『庭の話』 都築響一『バブルの肖像』 井上宮『ぞぞのむこ』 坂東眞砂子『死国』 田中啓文『蝿の王』 スズキナオ『深夜高速バスに100回…

「非読社会」で読書するということ 稲田豊史『本を読めなくなった人たち』を読んだ

本を読めなくなった人たち コスパとテキストメディアをめぐる現在形 (中公新書ラクレ) 作者:稲田豊史 中央公論新社 Amazon 『映画を早送りで観る人たち』の著者の新刊。紙の本で読んだ。 hayasinonakanozou.hatenablog.com 現代の若い人の大半は本どころかテ…

最近読んだ本(2026年1月)

読んだのは10冊。一部ネタバレあり。 『カヴァフィス詩集』 久坂部洋『廃用身』 貴志祐介『天使の囀り』 中島らも『ガダラの豚』 遠藤徹『壊れた少女を拾ったので』 鶴見済『死ぬまで落ち着かない』 久坂部洋『人はどう老いるのか』 モーガン・ハウセル『サ…

2025年読んだ本ベスト

2025年に読んだ本は88冊。 2022年からブクログで読書記録を付けている。過去4年間でもっとも冊数が読めた一年だった。インターネットでSNSや動画を見る時間を読書に回せば余裕で100冊読めたんじゃないかという気がする。 一方で、歳食って体力・気力が衰え、…

最近読んだ本(2025年12月)

12月は9冊読んだ。もう少し読めるかなと思ったけど年末はいろいろやることが多くて時間が捻出できなかった。2025年は88冊を読了。2026年は100冊読みたい。数字に縛られるべきじゃないと思いつつモチベ維持の目標として目指したい。 「現代ホラー小説を知るた…

インターネットをやめて本を読んだ1ヶ月(2025年11月)

人間が一日に使える時間は24時間。とすれば、16冊を読んだ11月は3冊しか読まなかった10月よりも読書に時間を割いたことになる(同じ本を読んでいるのではないから単純に比較できないが便宜上そう仮定する)。従来、俺が一日のうち多くの時間を費やしていたの…

現代ホラー小説を知るための100冊全部読む

朝宮運河『現代ホラー小説を知るための100冊』がホラー小説のよいブックガイドだったので、紹介されている100冊*1全部読んでみるか、という気になった。 現代ホラー小説を知るための100冊 (星海社 e-SHINSHO) 作者:朝宮運河 講談社 Amazon 以下の記事に触…

最近読んだ本(2025年9月、10月)

9月半ばから10月半ばまでの1ヶ月間はあまり本を読まなかった。大袈裟でなく仕事とホロウナイト:シルクソングしかしてないという生活っぷりだった。 ちょうどゲームやってる期間に自民党の総裁選をやっていた。が、ニュースをまったく見なかったので経過を全…

最近読んだ本(2025年8月)

気象庁によると2025年の夏は平年比で2.36度高い「異常な高温」だという。 www3.nhk.or.jp もはや夏は40代の俺が子供だったころのそれとは違う。暑すぎる。ちょっと外出しただけでも頭痛とだるさに襲われ消耗する。今年、遂に日傘を買った。8月は週末も夏季休…

映画および文庫版『近畿地方のある場所について』感想

ネタバレあり感想。 単行本は刊行されてすぐに読んだ。面白かった。元々カクヨムに投稿中のときから読んでいたのでリアルタイムで更新されていくのを体験している。本になってからまとめて読むのとはまた違った体験だ。 hayasinonakanozou.hatenablog.com 映…

10年以上寝かせてもあとで読む俺が最近読んだ本(2025年7月)

またこんなに本を買ってしまった。 俺の部屋には数十冊か、ヘタしたら100冊以上積読本がある。10年以上積んでるのもザラ。読まないまま処分した本なら数え切れない。処分して後悔もとくにない。とはいえ俺は100歳まで健康に生きるつもりなので持ち時間はまだ…

最近読んだ本(2025年6月)

5月は小説ばかり読んで飽きた。なので6月は小説以外のジャンルを読んだ。本はいい。読むジャンルがいくらでもある。嫌になれば途中で放り出せばいい。それを書いたのが歴史上の偉人だったとしても関係ない。会社ではこうはいかない。しょうもない話でも上司…

好きな本は何冊でも買う、それが自由というものだ

はてブを見ていたらこんなエントリが上がっていた。 anond.hatelabo.jp これに対して付けた俺のブクマコメントはこれ。 やっぱ電子書籍じゃダメなんだよ! ふつういい本だと思ったら紙と電子両方買うよね 2025/06/09 18:47 電子書籍のよさは思いついたら本屋…

最近読んだ本(2025年5月)

最近、去年の夏のようにホラー小説をいくらか読んだ。 hayasinonakanozou.hatenablog.com きっかけははてブで以下のエントリを読んで興味を持ったから。列挙されているタイトルをあたった。 anond.hatelabo.jp ここのところ小説ばっかり読んでるので少し飽き…

秀逸なブックガイドそしてコロナ禍の記録 pha『やる気のない読書日記』を読んだ

phaさんのnoteの日記から、2021年の読書に関する部分を中心に抜き出し、加筆してまとめたもの。感想や紹介にそそられて、読みたくなる本が増えるすぐれたブックガイド。2021年に書かれた『人生の土台となる読書』の姉妹編ともいえる。 2021年はコロナ禍の真…

分断と排除と対立が深まるばかりの時代だからこそ読みたい物語 トールキン『指輪物語』を読んだ

『指輪物語』がなければ『ダンジョンズ&ドラゴンズ』も『ウィザードリィ』も『ドラゴンクエスト』もなかった。『ロードス島戦記』をはじめとする剣と魔法の西欧風ファンタジー小説や漫画やアニメも然り。そう考えると後世に与えた影響は計り知れない。いつか…

パンデミックを経たインフレ基調の現代日本でミニマリスト的ライフスタイルは有効か、ChatGPTと考える

滅私(新潮文庫) 作者:羽田圭介 新潮社 Amazon 少し前に読んだ。ネタバレあり。 ミニマリストのインフルエンサーがその生活に行き詰まり、偶然見つけたゴミ屋敷で失われた創造性を蘇らせる、という話。無駄とばかり思っていた所有することの有用性、豊かさ…

最近読んだ本(2025年4月)

ここ1ヶ月ほどの間に読んだ本の感想をまとめておく。 雨穴『変な絵』 南綾子『俺はこのままひとりぼっちで、いつかおかしくなってしまうんだろうか』 高見広春『バトル・ロワイアル』 芦花公園『極楽に至る忌門』 村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』 村田…

経済的自立、マルチ商法、出し子…金をめぐる小説を3冊読んだ

19世紀の西欧で小説が発達した理由は、新興階級であるブルジョワジーが台頭し彼らが読者層を形成したからだと言われる。ブルジョワジーが好む小説のストーリーは何か。彼らの現実に即した生活や結婚、つまりは金の話だろう。だからディケンズ、バルザック、…

「もう二度とSNSができない身体にしてほしい」、あるいは本当は恐ろしいインターネット

セルフィの死 作者:本谷有希子 新潮社 Amazon 読んだ。ネタバレあり。 SNSに自撮りを投稿して「いいね」をもらうのを生きがいにしている女性の物語。 彼女にとっては人間の価値=フォロワー数。 なぜそんなにもフォロワーから承認されなくてはいけないのか。…

2024年読んだ本裏ベスト

承前。 hayasinonakanozou.hatenablog.com 2023年に引き続き裏ベストも挙げる。われながら裏って何だよって感じだが雑誌やZINEをメインに。 SAPPORO POSSE『HYPER TEXT #1 特集:カウンターカルチャーと陰謀論』 東京人 「特集:つげ義春と東京」 奇書が読み…

2024年読んだ本ベスト

今年読んだ本は70冊。 去年が65冊だったので去年よりは読めた。 冊数に深い意味はない。難解な翻訳物の分厚い人文書とエンタメ文芸を同じ1冊としてカウントして数を競うなんて不毛だ。冊数はただの目安。 booklog.jp 今年とくに集中して読んだのはホラー小説…

刊行を1年待ったpanpanya 『そぞろ各地探訪 panpanya旅行記集成』を読んだ

昨年12月に出たユリイカのpanpanya特集号の裏表紙に『そぞろ各地探訪』の新刊情報が載っていたのを見て以来刊行を楽しみにしていた。そこには「二〇二四年春発売予定」と記載されていたけれど当該時期になっても情報がなく、9月頃になってBOOTHでの予約が始…

アラン・ド・ボトン『メランコリーで生きてみる』を読んだ

メランコリーで生きてみる 作者:アラン・ド・ボトン フィルムアート社 Amazon 不完全な世界、不完全な人生を生きる助けとしてのメランコリーのススメ。 本書では肝心のメランコリーをこれと明確に定義していない。自分は「前向きな悲観主義」と了解した。楽…

春日武彦『死の瞬間 人はなぜ好奇心を抱くのか』を読んだ

死の瞬間 人はなぜ好奇心を抱くのか (朝日新書) 作者:春日 武彦 朝日新聞出版 Amazon 人みながいつか必ず体験するという意味では「月並みな出来事」である死について、「日常に潜むグロテスク」「すべての人間に等しく向けられた呪詛」「根源的な不快感」の…