読書

『寝そべり主義者宣言 日本語版』を読んだ

はてブ見てたらこんなニュースが目に入った。 jp.reuters.com 16歳から24歳の失業率が約20%、しかし統計の取り方次第では40%を超えている可能性もあると。この記事に引用されている大学教授のコメントの「家で寝そべっている」若者とは寝そべり族を指してい…

『ユリイカ2023年7月号 特集 奇書の世界』を読んだ

ユリイカ2023年7月号 特集=奇書の世界 作者:竹中朗,山本貴光,吉川浩満,円城塔,酉島伝法,春日武彦,樺山三英 青土社 Amazon 面白そうだったので購入。 ユリイカ、知ってはいたが買ったのも読んだのも初めて。ほぼ丸々一冊が特集の内容に割かれている。寄稿者…

末木新『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』を読んだ

「死にたい」と言われたら ――自殺の心理学 (ちくまプリマー新書 428) 作者:末木 新 筑摩書房 Amazon 統計学、心理学、生物学等複合的な観点から自殺について考察する。 統計的には、 ・日本における自殺の原因の4割は健康問題。 ・男性と女性では前者の方…

ひとりものの生きる道  荒川和久『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』を読んだ

「居場所がない」人たち ~超ソロ社会における幸福のコミュニティ論~(小学館新書) 作者:荒川和久 小学館 Amazon 今後の日本社会は人口減少を回避できない。 それに伴い生涯独身者も増加する。 独身男女と既婚男女の幸福度調査における差異。 すでに崩壊し…

松浦晋也『母さん、ごめん。2  50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』を読んだ

母さん、ごめん。2 ― 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編 作者:松浦 晋也 日経BP Amazon 前作、要介護の母親と同居する独身中年として共感しながら読んだ。 前作は著者が自宅介護の限界を悟り母親をグループホームに入居させるまで。本書はそこから始…

伊藤明彦『未来からの遺言 ある被爆者体験の伝記』を読んだ

未来からの遺言――ある被爆者体験の伝記 (岩波現代文庫) 作者:伊藤 明彦 岩波書店 Amazon 被爆者体験の記録をしてきた著者はある会合である被爆者の男性と出会う。彼は長崎で被曝したと自己紹介した。 男性の語る半生は過酷でありながらドラマチックでありま…

西牟田靖『本で床は抜けるのか』を読んだ

本で床は抜けるのか (中公文庫) 作者:西牟田靖 中央公論新社 Amazon 蔵書整理に関する本。 タイトルになっている疑問に関しては最低でも1000冊から心配すればいいようなので紙の本の蔵書が400冊以上500冊未満*1な自分はとりあえず心配しなくてもよさそう。ま…

自己啓発について。『スペクテイター<51号>自己啓発のひみつ』と『闇の自己啓発』を読んだ

スペクテイター〈51号〉自己啓発のひみつ 幻冬舎 Amazon 『スペクテイター』でのインタビューで真鍋厚さんは自己啓発の定義について「身体やメンタルといった自己の能力について、自主的な向上を目指そうとする考え」だと答えている。 その方向性は二つ。一…

齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』を読んだ

母という呪縛 娘という牢獄 作者:齊藤彩 講談社 Amazon ブクログの感想からコピペ。 滋賀県で起きた娘による母親殺害事件を、娘との手紙のやりとりから再現する。ノンフィクションだが小説のように読める不思議な書き方。表紙のイラストがすごいな。 母親は…

幸福とは継続である──坂口恭平『継続するコツ』を読んだ

継続するコツ 作者:坂口恭平 祥伝社 Amazon ブクログの感想をコピペ。 人はみな何かを作ることを継続して日々生きている。生活すなわち継続。それが人生の幸福につながっていく。「幸せとは、自分が興味のあることを今も継続できていることである。」この継…

小島美羽『時が止まった部屋 遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』を読んだ

時が止まった部屋:遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし 作者:小島 美羽 原書房 Amazon 著者は遺品整理・特殊清掃で働く専門家。実際の現場を再現したミニチュアの製作も行っている。それを紹介しながら孤独死現場での体験とそれに基づいた意見を述…

岡崎次郎『マルクスに凭れて六十年 自嘲生涯記』を読んだ

マルクスに凭れて六十年: 自嘲生涯記 増補改訂新版 作者:岡崎 次郎 航思社 Amazon ブクログに書いた感想をコピペ。 岩波文庫、大月書店の『資本論』翻訳者による暴露本的な自伝。法政大学出版局から出る予定だったが当大学の教授や学生を揶揄する箇所を書き…

鈴木大介『ネット右翼になった父』を読んだ

ネット右翼になった父 (講談社現代新書) 作者:鈴木大介 講談社 Amazon 著者の父親は晩年にヘイトスラングを口にし、右傾的なYouTubeチャンネルを視聴し、社会的弱者は自己責任と批判するネット右翼と化した。その原因を父親の死後検証する、という内容。 結…

大江英樹『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』を読んだ

90歳までに使い切る お金の賢い減らし方 (光文社新書) 作者:大江 英樹 光文社 Amazon 以下、ブクログの感想からコピペ。 日本人は死ぬ時にもっとも金を持っている。大金を残したまま死ぬよりも生きている間に使い切る方が幸福ではないか? という『DIE WITH …

高村友也『自作の小屋で暮らそう』を読んだ

自作の小屋で暮らそう ──Bライフの愉しみ (ちくま文庫) 作者:高村友也 筑摩書房 Amazon 山梨のとある雑木林の中に自作の小屋を建てて暮らしている著者の生活記録。副題のBライフとは「安い土地でも買って適当に小屋でも建てて住んじゃおうという、言ってし…

小野一光『新版 家族喰い』を読んだ

新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相 (文春文庫) 作者:小野一光 文藝春秋 Amazon 尼崎連続変死事件についての本。この事件でインパクトがあったのは主犯の「ファミリー」が暮らしていたマンション最上階の部屋のバリケード。周囲から見えないように囲って…

パートナーとしての動物、家畜としての動物──濱野ちひろ『聖なるズー』と内澤旬子『飼い喰い 三匹の豚とわたし』を読んだ

聖なるズー (集英社文庫) 作者:濱野ちひろ 集英社 Amazon 『聖なるズー』は主にドイツの動物性愛の人々(ズーフィリア)を取材した本。動物性愛、動物とセックスするなんて、と読む前はちょっと忌避感があった。しかし読んでみると読む前想像していたのとは…

頭木弘樹 編『うんこ文学 漏らす悲しみを知っている人のための17の物語』を読んだ

うんこ文学 ――漏らす悲しみを知っている人のための17の物語 (ちくま文庫 か-71-4) 作者:頭木 弘樹 筑摩書房 Amazon 珍しい、排便にまつわるアンソロジー。よかったのは尾辻克彦「出口」、山田風太郎「春愁糞尿潭」、筒井康隆「コレラ」、山田ルイ53世「ヒ…

松本清張『小説帝銀事件』を読んだ

小説帝銀事件 新装版 (角川文庫) 作者:松本 清張 KADOKAWA Amazon (ブクログの感想から引用) 小説と謳っているがノンフィクションのような。方便だろうか。序盤は読ませるが中盤から終盤にかけての叙述が公文書のように硬くて読み飛ばし。松本清張の文章、…

岩瀬達哉『キツネ目 グリコ森永事件全真相』を読んだ

キツネ目 グリコ森永事件全真相 作者:岩瀬達哉 講談社 Amazon 1984年に起きた、日本の犯罪史上初の劇場型犯罪。自分は当時7歳だった。リアルタイムでの記憶はない。菓子が店の棚から撤去された覚えもない。メインの現場が関西圏だったからというのもあったか…

「神の子」、社会に出たらカルトの子──米本和広『カルトの子』と菊池真理子『「神様」のいる家で育ちました』を読んだ

2冊とも宗教二世に関する内容。 カルトの子 論創ノンフィクション 作者:米本和広 論創社 Amazon 『カルトの子』の取材対象となる宗教はオウム真理教、エホバの証人、統一教会、幸福会ヤマギシ会、ライフスペース。これらカルトと呼ばれている新興宗教の二世…

鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』を読んだ

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book) 作者:鈴木 忠平 文藝春秋 Amazon (ブクログの感想からコピペ) もう見なくなって何年も経つけれどちょうどドラゴンズを落合監督が率いていた頃はよくプロ野球を見ていたので懐かしかった。落合監…

pha『持たない幸福論』『どこでもいいからどこかへ行きたい』を読んだ

『人生の土台となる読書』がよかったのでphaさんの本をさらに2冊読んだ。 hayasinonakanozou.hatenablog.com 3冊を通じてphaさんの主張は一貫している。 社会の同調圧力より自分がしたいことや好きなことを優先しよう、大事にしよう。 孤立せず気が合う仲間…

pha『人生の土台となる読書』を読んだ

人生の土台となる読書――ダメな人間でも、なんとか生き延びるための「本の効用」ベスト30 作者:pha ダイヤモンド社 Amazon 著者は冒頭で述べる。読書には「すぐに効く読書」と「ゆっくり効く読書」の2種類があると。 前者は仕事術やライフハックなどの実用書…

『本の雑誌2023年2月号』の特集「本を買う」を読んだ

本の雑誌476号2023年2月号 本の雑誌社 Amazon 特集の前文「本は読むためだけにあるのではない。買うためにあるのだ!」がいい。中野善夫さんの寄せた「本を買え。天に届くまで積み上げろ。」は手元に本を置いておけばいつでも(それが遠い未来でも)読むこと…

松本創『軌道』を読んだ

軌道 ――福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い (新潮文庫) 作者:松本 創 新潮社 Amazon 以下、ブクログの感想からコピペ。 2005年4月に発生、107人もの死者を出したJR福知山線脱線事故のノンフィクション。この事故の原因は、収益向上のために安全性を軽視…

現実は小説より奇なり──『ある行旅死亡人の物語』を読んだ

ある行旅死亡人の物語 作者:武田 惇志,伊藤 亜衣 毎日新聞出版(インプレス) Amazon 2020年に尼崎市のあるアパートで遺体となって発見された高齢女性の素性を探るノンフィクション。この件については以前ネットで読んでおりそのときから関心を抱いていた。…

速水健朗『ラーメンと愛国』を読んだ

ラーメンと愛国 (講談社現代新書) 作者:速水健朗 講談社 Amazon ラーメンを媒介に日本の戦後史をたどる、という趣旨の本。面白くて二日で読了。 太平洋戦争に敗れた日本は深刻な食糧危機に陥った。それを救ったのがアメリカからの小麦の輸入だった。当時アメ…

2冊とも徹夜の勢いで読み耽った──清水潔『殺人犯はそこにいる』『桶川ストーカー殺人事件』

殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―(新潮文庫) 作者:清水 潔 新潮社 Amazon 読了日は11月20日。以下、ブクログに記載した感想からコピペ。 ドラマ「エルピス」の参考文献の1冊。徹夜で読了。著者はある未解決事件が群馬県・栃木県…

トルーマン・カポーティ『冷血』を読んだ

冷血 (新潮文庫) 作者:トルーマン カポーティ 新潮社 Amazon 1959年にカンザス州のホルカム村で発生したクラッター家の4人が殺害された事件を再現したノンフィクション・ノベル。旧訳でも一度読んでいるが20年ぶりくらいに新訳で再読。 この小説は4章からな…