読書

中村光夫『老いの微笑』を読んだ

老いの微笑 (ちくま文庫) 作者:中村 光夫 筑摩書房 Amazon 中年本の一冊として。中年本というよりはもう少し先の初老本あるいは老齢本といった方が適切な内容だった。むろん知ったのは荻原魚雷『中年の本棚』による。 hayasinonakanozou.hatenablog.com 中年…

『本当に君は総理大臣になれないのか』を(一応)読んだ

本当に君は総理大臣になれないのか (講談社現代新書) 作者:小川淳也,中原一歩 講談社 Amazon 大島新監督のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』は面白かった。とくに関係者以外知ることのない選挙の舞台裏や人間模様を興味深く見た。乗っ…

『杉作J太郎が考えたこと』を読んだ

杉作J太郎が考えたこと 作者:杉作 J太郎 青林工藝舎 Amazon 中年本の一冊として。2001年2月から2011年4月までの十年にわたる連載エッセイの中からセレクトしたとのこと。なかなかに濃い。熱い。 まず、金がない、という話から始まる。金がない話はその後10年…

山田太一『見えない暗闇』を読んだ

見えない暗闇 (朝日文芸文庫) 作者:山田 太一 朝日新聞社 Amazon 主人公の松本洋介は45歳、都清掃局の課長。39歳の妻がいる。一人息子は大学入学をきっかけに家を出て行った。入れ代わりのようなタイミングで病身の義父との慣れない同居が始まった。傍目には…

酒井順子『中年だって生きている』を読んだ

中年だって生きている (集英社文庫) 作者:酒井 順子 集英社 Amazon 中年本の一冊として。女性による中年本はこれが初か。この本も『中年の本棚』で言及されていた。 hayasinonakanozou.hatenablog.com 著者は1966年生まれのバブル世代なので自分より一回りほ…

永江朗『51歳からの読書術』を読んだ

51歳からの読書術―ほんとうの読書は中年を過ぎてから 作者:永江 朗 発売日: 2016/02/01 メディア: 単行本 中年に関する本として選択。著者個人の読書の方法論。扱われるのはほぼ文芸作品のみ。しかし読書のスタイルとして本書の内容は文芸以外の読書にも適用…

桐野夏生『夜の谷を行く』を読んだ

夜の谷を行く (文春文庫) 作者:桐野 夏生 発売日: 2020/03/10 メディア: Kindle版 主人公の西村啓子は60代の年金生活者。かつては連合赤軍の末端メンバーの一人だった。山岳ベース事件の最中、もう一人の女性とともに下山して逮捕、起訴された過去を持つ。有…

関川夏央『中年シングル生活』と津野海太郎『歩くひとりもの』を読んだ

中年シングル生活 (講談社文庫) 作者:関川夏央 発売日: 2014/08/15 メディア: Kindle版 歩くひとりもの (ちくま文庫) 作者:津野 海太郎 メディア: 文庫 荻原魚雷『中年の本棚』で紹介されていた二冊。『中年シングル生活 』には『歩くひとりもの』の引用が…

荻原魚雷『中年の本棚』を読み、中年の自分について考える

中年の本棚 作者:荻原魚雷 発売日: 2020/07/31 メディア: 単行本(ソフトカバー) 所謂ミドルエイジ・クライシスをサバイブする助けを書物から探る、ブックガイド的なエッセイ。冒頭、野村克也の著作にふれて「四十初惑」という言葉が出てくる。昔の賢人は「…

松浦寿輝『わたしが行ったさびしい町』を読んだ

わたしが行ったさびしい町 作者:松浦 寿輝 発売日: 2021/02/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) 著者がこれまでに訪れた数多の土地について、さびしさという観点から述べる。街ではなくて町、というタイトルからも窺えるように、観光地的な賑やかな土地で…

四方田犬彦『「かわいい」論』を読んだ

「かわいい」論 (ちくま新書) 作者:四方田 犬彦 発売日: 2006/01/01 メディア: 新書 本書から「かわいい」という語のニュアンスを引用する。 小さなもの。どこかしら懐かしく感じられるもの。守ってあげないとたやすく壊れてしまうかもしれないほど、脆弱で…

恩田陸『灰の劇場』を読んだ

灰の劇場 作者:恩田陸 発売日: 2021/02/16 メディア: Kindle版 ネタバレあり。 普段現代作家の小説をあまり読まない、というか小説を、さらには本自体、最近はめっきり読めなくなってきているのだけれど、Twitterのタイムラインに流れてきた本書の概要が面白…

山内一也『ウイルスの意味論』を読んだ

ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在 作者:山内一也 発売日: 2019/01/18 メディア: Kindle版 『ウイルスの世紀』の姉妹編。書かれたのは本書の方が先なのでまずこちらから読んだが、ウイルス総論ともいうべき内容は理科系の教養がからきしの自分には手…

山内一也『ウイルスの世紀』を読んだ

ウイルスの世紀――なぜ繰り返し出現するのか 作者:山内一也 発売日: 2020/08/28 メディア: Kindle版 全五章に分けてウイルスについて述べる。一章はウイルスとはそもそも何であるか、二章はエマージングウイルスの系譜、三章は新型コロナウイルス、四章は人類…

谷岡一郎『ツキの法則』を読んだ

ツキの法則 「賭け方」と「勝敗」の科学 (PHP新書) 作者:谷岡 一郎 発売日: 2015/07/10 メディア: Kindle版 今年から本格的? に競馬を始めたので回収率を上げる賭け方のヒントでもあればと期待して読んでみた。 予想していたとはいえ、冒頭から「ギャンブル…

100分de名著 ブルデュー『ディスタンクシオン』を読んだ

NHK 100分 de 名著 ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020年 12月 [雑誌] (NHKテキスト) 発売日: 2020/11/25 メディア: Kindle版 NHK「100分de名著」のテキスト。ブルデューの『ディスタンクシオン』は以前に二度ほど図書館で借りたが二度ともほ…

ネルヴァル『火の娘たち』を読んだ

火の娘たち (岩波文庫) 作者:ネルヴァル 発売日: 2020/03/17 メディア: 文庫 短篇集。収録作のうち、プルーストに影響を与えた「シルヴィ」が最も有名だろう。本書中で最も優れていると思うのもこの作品。 短篇集を謳っているものの短篇小説以外にも多様な作…

デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス『経済政策で人は死ぬか?』を読んだ

経済政策で人は死ぬか?:公衆衛生学から見た不況対策 作者:デヴィッド・スタックラー,サンジェイ・バス 発売日: 2020/04/20 メディア: Kindle版 経済政策次第で人は死ぬ。 世界恐慌、ソ連崩壊、アジア通貨危機、サブプライム破綻など過去の金融危機において…

パオロ・ジョルダーノ『コロナの時代の僕ら』を読んだ

コロナの時代の僕ら 作者:パオロ・ジョルダーノ,Paolo Giordano 発売日: 2020/04/24 メディア: 単行本 kindle版を購入したのが外出自粛した今年のGW最終日のこと。夕食後に読み始めて、読み耽り、その日のうちに読了し、感嘆した。GWはほぼ外出せずずっとsla…

安藤泰至『安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと』を読んだ

安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと (岩波ブックレット) 作者:安藤 泰至 発売日: 2019/07/06 メディア: 単行本(ソフトカバー) 安楽死。尊厳死。これらの言葉に世界共通の定義とか学問的に公認されている定義といったものは存在しない。著者はそう…

アトゥール・ガワンデ『死すべき定め』を読んだ

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか 作者:アトゥール・ガワンデ 発売日: 2016/06/24 メディア: 単行本 高齢者にとって怖いものは死ではない、と超高齢者が教えてくれる。死よりも、いずれ起こってくること——聴覚や記憶、親友、自分らしい生き方を失うこ…

野崎歓『異邦の香り ネルヴァル『東方紀行』論』を読んだ

異邦の香り ネルヴァル『東方紀行』論 (講談社文芸文庫) 作者:野崎 歓 発売日: 2019/07/12 メディア: 文庫 持ってはいるが未読の、ネルヴァルの旅行記「東方紀行」の評論。ウィーン、カイロ、シリア、コンスタンチノープルへの旅を記したこの書物には、ネル…

アルベール・コーエン『おお、あなた方人間、兄弟たちよ』を読んだ

おお、あなた方人間、兄弟たちよ 作者:アルベール・コーエン 発売日: 2020/06/20 メディア: 単行本 本書の内容は以下の帯文に要約できる。 一人のユダヤ人の子供が十歳の誕生日を迎えたその日に、憎しみに出会う。私がその子供だった。 第二次世界大戦前夜の…

岸政彦『断片的なものの社会学』を読んだ

断片的なものの社会学 作者:岸 政彦 発売日: 2015/05/30 メディア: 単行本(ソフトカバー) 四角い紙の本は、それがそのまま、外の世界にむかって開いている四角い窓だ。だからみんな、本さえ読めば、実際には自分の家や街しか知らなくても、ここではないど…

金森修『病魔という悪の物語 チフスのメアリー』を読んだ

病魔という悪の物語 ―チフスのメアリー (ちくまプリマー新書) 作者:金森 修 発売日: 2006/03/06 メディア: 新書 20世紀初頭のアメリカで生きた、ある女性の一生。メアリー・マローンはアイルランド系の貧しい移民の子だった。賄い婦として各家庭に雇われ、料…

ミシェル・ウエルベック『セロトニン』を読んだ

セロトニン 作者:ミシェル・ウエルベック 発売日: 2019/10/18 メディア: Kindle版 少し前だが読んだ。『ランサローテ』と『服従』以外のウエルベックの小説は一度は読んでいる。初めて読んだのはちくま文庫の新刊で出ていた『素粒子』で、真綿で首を絞められ…

ナボコフ『ロリータ』を読む

ナボコフ・コレクション ロリータ 魅惑者 作者:ナボコフ,ウラジーミル 発売日: 2019/10/30 メディア: 単行本 何年も前に新潮文庫で読んだのだが何が書いてあるのかさっぱり理解できないくらい難しい小説だった。「賜物」もほとんど理解できず。ナボコフが読…

松浦晋也『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』を読む

母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記 作者:松浦 晋也 発売日: 2017/08/03 メディア: 単行本 50代の独身男性による、二年半に及ぶ認知症の母親の介護記録。 認知症の家族を介護することの苦労、悲哀が赤裸々に、時にユーモアを交えて述べられている。著…

一年かけて『失われた時を求めて』を読んだ

少し前の話になるが。昨年の1/23に読み始めたマルセル・プルースト作、鈴木道彦訳『失われた時を求めて』全13巻を1/3に読み終えた。時間がかかりすぎたのと、途中飛ばし読みをしたせいか、読み終えても達成感はあまりなく。全3巻の抄訳版をすでに読んでいて…