懐かしさと可愛さと奇想が絶妙にブレンドされた世界──panpanya『商店街のあゆみ』

 

『ぱらのま』経由で『楽園 Le Paradis』を知りそこでこの可愛い少女が出てくる漫画の存在は知っていた。可愛い少女とリアルな背景の組み合わせ。でも読むまでにはいたらずこれまで来た。何かで(Xで?)今月新刊『商店街のあゆみ』が出ると知り、それまでなんとなくスルーしていたのに急に気になって買って読むことにした。

 

基本的に漫画は電子書籍でしか買わない。『ぱらのま』も『ベルセルク』も『チェンソーマン』も『ダンジョン飯』も『メイドインアビス』も『ひとりでしにたい』も『後ハッピーマニア』も桜玉吉も全部電子書籍で買っている。俺が今紙本で所有している漫画って吾妻ひでおの何冊かだけじゃないだろうか。

 

それなのに紙の本で買う気になったのは特典のイラストカードが欲しかったから。複数の販売店ごとにバージョン違いのイラストカードがあって、自分はとらのあなを選択、アカウントを持っていなかったので作った。特典のためにわざわざアカウントを作るなんて、ちょっと普段の自分の行動からは外れている。よっぽどそのとき欲しいと思ったのだろう。イラストカードを無事手に入れられて満足。

 

panpanya作品、初めて読んだが楽しい漫画だった。記事タイトルにしたように、どこか懐かしさを漂わせる世界でちょっと不思議な話(短編)が展開する。どの話でも主人公はおかっぱの少女。小学生らしいが大人びている。相棒は犬(レオナルドというらしい)。この巻では家や土地をめぐる話が多い。巨大な迷路の家、ロボ化する家、プラモデルの家、地図にない土地、植木鉢で育つビル、歩む商店街。植木鉢でビルを育てるってのはちょっと並の発想じゃない。すげえなあ。面白えなあ。と感嘆しながら読んだ。インフラの充実度を考えるとやっぱ集合住宅より戸建てだな、と思ったり(「戸建てのインフラを見くびったな」は本書中ベスト台詞)。

 

どの作品も短い分量の中に奇想が凝縮されていて楽しめたが、最後に収録の表題作がとりわけよかった。昭和的な商店街というものへのノスタルジー、時の流れによる寂れ、にもかかわらず逞しく前進し続ける人々、そして出会いと別れ。会えなくなってもその人たちと過ごした記憶は消えずに胸の奥に残り続ける、そう示す余韻の残るラスト。読み終えて、いいものを読んだ、という充実感で満たされる。こんな優しい世界に俺も暮らしたいぜ。

 

読んで満足していたら、楽園編集部のXアカウントでpanpanya先生の年賀状が抽選で70名に当たるキャンペーンをやっていた。なので応募した。アカウントのフォローと当該ポストのリポスト。フォローはずっと前からしていた。リポストは、俺にとって5ヶ月ぶりのXでの投稿になった。ツイートからポストに変更されて初か? 鍵かけてたけど解除した。どうせ当たりゃしめえ、と期待せずにいたのだけれど、昨日DMが届いて当選したと。えー、こんなことあるんだ、と驚き。知ってはいたけど読む機会のなかった漫画を急に読みたくなって、俺としては滅多にしない紙の本で漫画を買って、特典欲しさに新しくアカウント作って、だめもとで応募した年賀状抽選に当選する…。なんか縁がある気がする。先月にはクレジットカードのキャンペーンでキャッシュバックにも当選したし、もしかしてツキが来てる? 今年の競馬は散々だからその帳尻合わせか? 

 

イムリーなことに今月発売のユリイカではpanpanya特集をやるという。インタビューがあるらしいし買うしかない。偶然なんだろうけど偶然に導かれて今の俺はすっかりpanpanyaづくし。過去作品も集めるかもしれない。紙で。