川崎チネチッタで映画『オオカミの家』を見てきた


カルト団体のコミューンから脱走した少女が体験する悪夢のような世界をストップモーションアニメで描いた映画『オオカミの家』。面白そうだから見に行きたかったが上映館が少ない。最寄りの川越スカラ座は上映スケジュールがまだ先。イメージフォーラムまで行くしかないか、と思っていたらXを見ると連日満席の大盛況。マジか。人混みは苦手。しかもイメージフォーラムって行ったことないが渋谷駅から結構歩く場所にあったような気がして暑いこの時期だから億劫に。

 

…と思っていたらこの週末川崎チネチッタの広くて音響のいい12番スクリーンで上映すると知る。2019年から映画館で映画を見るのを趣味にするようになり、ついでに映画を見るだけじゃなく関東周辺の映画館をあちこち巡っていた。しかしコロナ禍以降は外出のモチベーションが下がり近所のシネコンばかり行くように。なんなら最近は映画にも少し飽きが来つつあった。けれど川崎チネチッタは箱が洒落ていていつか行ってみたい映画館*1の一つだったのでこれも何かのタイミングかと思い行くことにした。片道、電車移動の時間だけで90分の道のり。映画は同時上映の短編と併せても90分ほどの上映時間。

 

移動時間中はAirPodsで音楽を聴きながらKindle Paperwhiteで『洗脳の楽園 ヤマギシ会という悲劇』をずっと読んでいた。面白い。けど怖い。AirPodsのバッテリーが40分くらいで切れてしまう。第一世代。2019年1月に購入したのだがそろそろ寿命か? ワイヤレスイヤホンはバッテリー寿命があるのがネック。高額だしAirPodsはもう買わない。次からは有線イヤホンにする。

 

電車を乗り継いで川崎駅到着。来たのは初めて。駅前、想像していたよりずっと綺麗だった。映画館の場所はマップで調べていたので見当がついた。というか東口出て少し歩くと建物が見えてくる。歩いて10分とかからず到着。映画館のあるエリア一帯がイタリアの街っぽい感じ? で洒落ていた。バスケットコートがあり若いグループが盛り上がっていた。あとはカフェ、レストラン、ゲーセンなど。

 

チケットはネット予約していたので1階の発券機でメールのQRコードを読ませて発券。年会費がかからないので入会費500円を払って会員カードを作ってしまった。また来るのだろうか? 会員特典は5本見ると1本無料と上映30分前までなら予約キャンセル可能。後者は珍しい特典。どこの映画館もたいてい払い戻し不可だが電車の遅延とかどうにもならない理由で時間に間に合わない事態もありうるから観客に優しいサービスだと感心した。もし俺が近所に住んでいたら毎週通うだろう。

 

映画について。

まず短編の『骨』が上映。オーストリアの女王が儀式を行い骨から二人の人間を蘇生させるというもの。ユーモアがありつまらなくはなかったが15分以上見せられたら退屈するだろうなという感じ。

 

『オオカミの家』

主人公のマリアが脱走してきたコミューンはチリに実在したカルト団体コロニア・ディグニダがモデル。設立者はナチス残党のパウルシェーファー。表向きはキリスト教団体を装いながら、少年への性虐待、強制労働、武器の製造、拷問や殺害を行っていた。チリ軍事政権と癒着していたので司法からも逃れていた。洗脳もあったのだろうか。『オオカミの家』を見る前の予備知識として『コロニア』『コロニアの子供たち』を配信で視聴。前者はこの団体の全体像を、後者は性虐待を受けた少年の心情をよく描いていた。おぞましいカルト。Wikipediaで調べると現在は名前を変えて宿泊施設およびレストランになっているようだが(客が来るのか?)団体が解散しているかどうかよくわからない。

 

脱走したマリアは少女。コロニア・ディグニダでの性虐待は少年が標的だったのになぜ少女が主人公なのかは気になった。彼女は森の中の小屋で二匹のブタと暮らし始める。最初のうちはうまくいっていたがやがて食糧が底を尽き…。

 

この映画、カルト団体のプロパガンダの結構になっている。素敵なコミュニティから脱走した愚か者が、食糧が尽きて内ゲバを起こし、結局元いた場所に帰還する(連れ戻される?)、というストーリー。大半がマリアのモノローグ、彼女は具体的な内容を語らないので映画を見ているだけだと何の話かよくわからない。事前知識としてカルトから脱走した少女の話とは知っていおいた方がいいと思う。この映画の肝はストーリーではなく、少女の心情をストップモーションアニメで表現した点にある。二次元と三次元が組み合わさり、シーンごとに舞台や人物が組み上げられていく表現は斬新。キャラクターは絵だったり人形だったり、人形もシーンごとに顔が微妙に変わる。エンタメというよりアート。美術館で作品を鑑賞するような気持ちになった。横の観客は船漕いでいたし俺も途中ちょっと退屈を感じた。寝ずに済んだのは前夜8時間寝ていたからだと思う。映画が終わり場内が明るくなると疲労のような戸惑いのような空気をなんとなく感じた。小旅行ほどの時間をかけて川崎まで見に行くだけの映画だったかというと…どうだろう。ストップモーションアニメの表現は見応えあったけれど、これだったら『君たちはどう生きるか』の方が絵は凄かったな、コロニア・ディグニダについて知りたいなら『コロニア』の方が面白かったな、というのが率直なところ。

 

 

hayasinonakanozou.hatenablog.com

 

 

 

 

 

*1:結構あちこち行ったがまだ行けてない映画館として池袋の新文芸坐、舞浜のシネマイクスピアリ、高崎の電気館、新潟の高田世界館、大阪の109シネマズエキスポシティがある