世田谷文学館で「伊藤潤二展 誘惑」を見てきた

世田谷文学館で本日より開催。

オンライン予約がスタートしてすぐくらいにチケットを取ったけどすでに10時の初回は売り切れだった。恐るべし。なので10時半のチケットを取った。

www.setabun.or.jp

 

世田谷文学館へは2週間前に来たばかり。

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一人暮らししていた時以来25年以上世田谷区へは行かなかったのに、今になって2週間のうちに二度も訪れることになるなんて不思議な話だ。

 

伊藤潤二作品は『富江』と『死びとの恋わずらい』を読んだくらいなのでにわかもいいところだが、にわかだったら展覧会へ行ってはいけないわけでもない。美術のお勉強めいてしまうメインカルチャーの美術展よりサブカルチャーのそれの方がカジュアルで行きやすさがある。

 

昨日は山歩きを4時間した。

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頑張りすぎたので今日はひどい筋肉痛を覚悟していたが、今朝起きると多少ケツと腿と足先に痛みやハリがあるものの歩くのに支障はない程度には回復していた。温泉が効いたか。なので芦花公園まで電車で問題なく行けた。駅は階段の上り下りがあるからひどい筋肉痛だとしんどそうと危惧していたが杞憂に終わってよかった。

 

文学館に到着して驚いた。2週間前の閑散とした静寂が嘘のような人の多さ。俺が到着したのは10時半やや過ぎくらいだったが、すでに一階受付前の物販スペースには人が溢れていた。どうやら先に買おうという考えの人たちらしい。展示を見ていないのに物販を買うって開催の趣旨としてどうなん? との疑問を覚えたが後で俺がレジに並んだ時間を考えると効率性の観点から見れば正解の行動なのかもしれない。いやでも展示がよくなくちゃ物販買う気にならないよな。メインは展示なんだから。

 

展示会場は2階。入り口でQRコードのチケットを見せて受付を済ませる。写真撮影は可、動画撮影は不可。最近の展覧会、大体写真撮影を許可している。

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撮影した写真を現代人の依存症たるSNSに投稿させて集客効果を上げようとの方針なのだろうか。撮れないより撮れた方がいいに決まっているが、周囲で常にスマホのシャッター音がパシャパシャ聞こえる中で展示を見るのってちょっと集中するのが難しい。慣れの問題か。いずれは今のスタイルがスタンダードになるのだろう。それに難癖つけるやつは老害扱いされる世の中になる。

 

入ってすぐがかなりの渋滞でなかなか中へ入れなかった。だが少し先へ進むと場所によっては空いている。展示の動線も考えられていたように思う。館内図を見たかぎりだと狭そうと思っていたが展示を見ているとき狭さは感じなかった。と言って広すぎるでもなくちょうどいいスケール。あんまり広いと疲れる。

 

原画はあまりに綺麗に完成されすぎてしまっていて印刷されたものと変わりないような、その機微を見分けるだけの鑑賞眼を持っていないので(さらに言えば俺の視力は0.01以下である。しかも老眼まで始まった)、うまいなあ、綺麗だなあ、かわいいなあ、と感心しながら見るばかり。

 

伊藤潤二作品の魅力って女性キャラにあると思っている。…と富江をイメージしながらそう書いているんだけど、彼女たちは少女のようでありながら大人の色気も持っている。でもどれほど綺麗で可愛くて妖艶でも性的な感じがほとんどない。清潔感や上品さがある。これはキャラに、というより絵に、だろう。

 

漫画自体そうではないのか。魅力的な女性キャラに対して殺そうとする男はいても強姦はしない。性交もしない。乳首や性器も描かれないのではないか。ろくに読んでいないのでお前の勘違いだよと笑われるかもしれないが。伊藤潤二作品ってその作品世界に品があるように感じる。ホラーだから血が飛び散ったり肉体がめちゃくちゃに変形したり異形の造形が登場したりする。生理的嫌悪感を抱くようなデザインもある。しかし性的に不快にさせられることはない。性描写がないから安心して読める。だから女性読者が多いのではないだろうか。いや女性読者が多いかどうか知らないが、会場にかなり若い女性客が多かったのでそう思った。

 

展示は「富江」「死人の恋わずらい」「うずまき」「首吊り気球」「ギョ」など、他にもたくさん。終わりの方はエッセイ漫画っぽいやつも。かなりの量の展示があるが入場者数を時間ごとにうまく分散させているのか、大混雑で人の頭越しにしか展示が見られない事態にはなっていない。常にどこかしら空いているのでそっちを優先で見ていけばストレス少なく見ることができる。

下絵やメモなどの作品になる前の状態の展示が楽屋裏を覗くようで楽しかった。「地獄星レミナ」の仰角で磔にされた女の子を描いた絵は迫力があった。この絵が一番印象的だった。翻るスカートがいい。

 

入り口付近もかなり渋滞したがそれ以上に渋滞したのが出口付近にある参加型の撮影スペースみたいなやつ。プリクラ的な要領でうずまき状の顔写真が撮れる(撮れるだけで写真が出てきたりはしない)。一組ずつの案内で1分ほどかかるので結構待たされる。俺も20分かそれ以上も待たされたように思う。興味なければさっさと出るのも一つの見識だろう。ぼっち陰キャなのでどうしようか迷ったが、すでに並んでしまっていたし、せっかくわざわざ来たのだし、誰もパーカを着たおっさんが何をしようが関心なんざ微塵もないのだから体験してみることにした。

これは途中。この後もう少し渦巻いて最後はもう少し原型を留めた状態で完成。

 

この先に伊藤潤二のインタビュー動画と富江のフィギュアがあって展示終了。所要時間は1時間ちょっとだった。

 

1階に降りて物販コーナーへ。なかなかの混雑。レジに大行列。この展覧会はグッズにかなり力を入れているのが窺えた。イラスト集とトートバッグとクリアファイルを購入。Tシャツ買っても着ないし、マグカップはデザイン的に俺好みなのがなかった。ちらほら富江のスタンプかわいい、みたいな声が聞こえてきたのがどういうのなんだか、見なかった。

 

レジ待ち、なんと50分。やばすぎ。展示見てたのと時間かわらん。100人以上が並んでいるのにレジが2台しかない。箱的にキャパオーバーなのだ。並んでいる間にもどんどん客が入ってくる。ずっと立っているのも辛いがさらに人との距離が近くて心理的に疲弊した。ノイキャンのイヤホンを持ってきていたので途中から付けて音楽を聴いていたら少し楽になった。

 

疲れたのでレジを済ませたら寄り道せず真っ直ぐ芦花公園駅まで戻った。新宿で降りてブックファーストで本を買おうとしたが荷物が増えるのが嫌になって買わずに帰宅した。