いくらなんでもつらすぎる人生──ジョン・ウィリアムズ『ストーナー』を読んだ

 

 

大学教師(助教授)の生涯という地味な話。

文章がよく、まだるっこしい描写もないのでテンポよくすいすい読める。感情を揺さぶるような場面もある。

だが、全体としては暗い話だ。悲しい、よりも先に暗い、つらい、との印象が浮かぶ。読みながら気が滅入った。

名作かもしれないが好みじゃない。

 

主人公を取り巻くのが問題ある人間ばかりで彼はそれに振り回される。

一目惚れの末結婚した妻は夫への気持ちが冷めており一時期は家庭内別居のような様相を呈す。学生時代からの友人は同じ職場でさっさと出世し、出世してからも友人であるかのように振る舞うものの業務上の手助けはしてくれない。主人公を何十年も目の敵にする同僚。その同僚の教え子で主人公へ筋違いの憎悪を抱く学生。結婚したもののすぐに戦争で夫を失い、義実家に引きこもってアルコールに溺れる娘。

主人公を取り巻く人々はおおよそ上のような人たち。彼らによって主人公の人生は暗澹たるものになっていく。

家庭は常に緊張感を孕む場となり、職場では同僚の妨害に遭い、学問への情熱はあるものの集中してそれを形にするゆとりがない。歳をとるごとに偏屈さを増し奇特な教師として学生たちから畏怖の念を抱かれる一方でそれが業務上の評価につながらない。教授にも学科主任にもなれない。業績が注目されることもない。人付き合いが苦手な、不器用な人間なのだ。

 

短い期間ではあるがそんな主人公の憩いとなるのがある学生との恋愛だ。しかし不倫であり、大学に発覚すると彼を憎む同僚からの攻撃材料にされる。彼は妻子や仕事を捨てることもできず、代わりに彼女が大学を去る。満足な挨拶もできないままの別れ。

そしてまた日常が戻ってくる。戦争が始まっても主人公が教壇に立ち続ける毎日は変わらない。内心では教育した若者たちが徴兵され死んでいくことへの激しい怒りを覚えていたが。

 

「かわいそうなお父様」というグレースの嘆きが、ストーナーを現実に引き戻した。「お気の毒に、いつもいつもおつらいことばかりだったんでしょう」

 しばし考え込んでから、ストーナーは言った。「ああ、安楽な人生ではなかった。だが楽をしたいと思ったことはない」

 

やがて癌が彼を襲う。体力が衰え歩けなくなり昼も夜もベッドで過ごすようになる。死にたいとは思わないが、死の訪れをまだかともどかしく待つような心境になる。凡庸な人生だった、と己の過去を回顧する。高潔で純粋に生きたいと望んだが、「得られたのは妥協と雑多な些事に煩わされる日常だけだった」。体には常に痛みがある。寝ては覚め、それを繰り返し、いつしか現実と夢の境が曖昧になっていく。窓の外は夏の午後。どこか遠くから若い男女の屈託ない笑い声が聞こえてくる。その静謐さに自身の静謐さを重ねるようにして最後の息を吐く。自分だけが知っている、か細い矜持を胸に秘めて。