二度目の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をIMAXで見てきた

109シネマズのIMAX、エグゼクティブシート前列中央という絶好の位置で二度目の鑑賞(余談だが109シネマズは、入会費はかかるものの年会費無料の会員になればエグゼクティブシートが通常料金で利用できる素晴らしい映画館である)。緊急事態宣言解除日。平日午前の回で観客は何人くらいだったか…100人いたかどうか。シアター内はだいぶ空席があったが平日にしては客入りがいいと思った。歴史的な観客動員数となった『鬼滅』でさえ——まだ上映しているが——平日午後の日本橋で自分が見たときは結構空いていた。もっとも、このときは公開から1ヶ月が経過していのだが。

 

ノーラン作品をはじめIMAX専用カメラで撮影された映画ならばIMAXの特性を存分に体感できるのだろうが、こう言っては何だが、アニメの場合は関係ないだろう。単純にスクリーンの大きさ、音響の大きさ、それを体感できるというだけのことだろう。集中するとスクリーンの大きさは実はあまり気にならない(自分は近所の映画館の通常スクリーンで『地獄の黙示録』を見た一年後にIMAXで再度見たが、初見の方が圧倒された記憶がある)。ただし音は違う。IMAXの音はやはり迫力が凄い。音が振動となって体に伝わってくる。

 

初見と今回とで感想はあまり変わらない。ただ、ネルフ本部突入以降の展開を忘れていたので、今度は忘れないよう後半集中しようと思いながら見ていた。前回は、人類補完計画ミサトさんの父親の発案だったとか、浜辺で横たわっているアスカが大人になっていたとか、ラストシーンでアスカが反対側ホームのベンチに座っていたとかを聞き落としたり見落としたりしていた。なんでカヲルがネルフの司令官になっていたのかは二度見てもよくわからなかった。加持さんとのやりとりは自分には謎。

 

前回の感想の繰り返しになるが、味方も敵もエヴァのデザインはいいと思わない。8号機も2号機も不細工だと思う。特に後者は、ニコイチ型と言っているからパーツを寄せ集めた機体なのだろうけれど、もっさりしていて、どうも…。コード999ではあんなに巨大化したのだったか、でも何の成果も出せない無駄な覚醒だった。アクションシーンもイマイチ。雑魚をいくら蹴散らしても爽快感や高揚感はない。対ラミエル戦や対ゼルエル戦のような手に汗握る強敵とのバトルが見たかった。それも初号機によるものを。結局、エヴァのアクションに関しては旧劇の2号機対エヴァシリーズのバトルが歴代最高の迫力だった。武器と武器が衝突した衝撃でコクピットのアスカが左右に揺れるシーンは今見ても臨場感が凄い。ただ、本作のアクションは『Q』のときよりはよかったと思う。『Q』の13号機対2号機のバトルは、2号機が三回も画面左手前から右奥に吹っ飛ばされるなど単調でつまらなかった。

 

二度目を見て、シリアスなのはシンジがゲンドウを追うシーンまでではないか、との感を強くした。さくらとピンク髪のクルーが、恩人であると同時に仇でもあるシンジに銃を向けるところまで。以降は、量子テレポートとか、ショッカーみたいなリアクションをする12号機(だっけ?)とか、リビングや教室でのバトルとか、変なCGで描かれた綾波の巨大な顔とか、首のない体(インフィニティ?)の行進とか、ラフ画とかの展開で、何と言ったらいいのだろう、いい意味で真面目に見るのがアホらしくなるような、これはフィクションです、アニメです、ということを強調するような、そういう展開になっていったように思う。『シン』のストーリーは基本的に旧劇をなぞっていると思うが(ミサトさんは撃たれるけれどリツコさんは撃たれないなど変更点も多々あるが)、旧劇でヘビーだった箇所がこんなにもユニークな、軽いノリにリビルドされているのに、年月を経た監督の心の余裕あるいは心境の変化が感じられた。旧劇の儀式の場面には生理的嫌悪感を抱くけれど、本作の串刺しシーンは単調な感じで不快感は全くなかった。初号機が自身を串刺しにするシーンも、旧劇や『Q』と比較しても、暴力的な印象を受けない…というか、バックハグの串刺しを見て、アニメなのに、エヴァの中に人が入ってそう、という印象を受けた。串刺しのあと、息子と対面したユイが笑顔のまま何も言わずに見送るシーンはよかった。ラストシーンは、やはり現実をしっかり生きろ、という意味なのか。これからはエヴァのない世界を生きていこう、みたいな。だからこその実写か? よくわからないが、意味はわからないのに明るい肯定的な気分でエンドロールを迎えられるのだから可笑しい。

 

自分は前半の第三村のパートが好きである。黒波との別れまでは人間ドラマとして普遍的なものだと思う。いわば再生の物語。成長の物語。そして別離の物語。『Q』だと不気味な存在として描かれていた黒波が、『シン』では無垢な存在として描かれていて、本当可愛かった。結局制服にするのかよ、とは思ったが。置き手紙とか、小さい十字架と虹とか、切ない。映画館からの帰り、プライムミュージックで宇多田ヒカルのプレイリストを聴きながら運転していたのだけれど、「Flavor Of Life」が、とくにサビの部分が、黒波とシンジの歌のようにも聞けるな、と思ったりもした。

 

今回、二度目を見たことで自分としては『シン・エヴァンゲリオン』に満足してしまった。もう映画館で見なくていい。ブルーレイが出たら買おう、という強い気持ちも今のところない。が、また気が変わるかもしれない。

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