もはやこの席でしかIMAXは見ねーぞと思っている109シネマズのエグゼクティブシート前列中央で見てきた。土曜日、緊急事態宣言が解除されて久々のレイトショー。観客は50人くらい。自分は007をほとんど知らない。昨年『1917』を見て感心し、サム・メンデス監督とロジャー・ディーキンス撮影繋がりで『スカイフォール』を見たくらい。ロートルが現場復帰みたいな話であまり脚本に惹かれるものはなく、映像も『プリズナーズ』や『1917』と違って記憶に残っていない。そんな人間がなぜ今回見に行ったのかというと、いや今回のも普通にスルーするつもりだったのだが、昨年から何度となく映画館で見せられた予告(まだ公開していなかったのかと驚き呆れた気持ちも少しあり)に登場する黒ドレスでアクションするキュートな女性が、『ブレードランナー2049』のジョイ役の人だったと知ったから。アナ・デ・アルマスさん。ダニエル・クレイグとは『ナイブズ・アウト』でも共演していたのか。これも映画館で見たけど全然気づかなかった。『2049』がいい映画とは思わないけれど(無印ブレランも自分には合わない)「電脳嫁」ジョイは素晴らしかった。押井監督の本によるとこの「電脳嫁」のアイデアはリドリー・スコットだったとか。
007の知識もなければ作品への興味も薄いのにわざわざIMAXで見に行くのだから自分も酔狂である。しかし、予想に反してというのか、冒頭の殺し屋登場シーンから引き込まれた。墓の爆発、襲撃、反撃、駅での別れ──からのビリー・アイリッシュ。画面見ながら、この映画すげえ、すごすぎる、最初からこんなにすごくてこのあともっとすごくなるなんて想像つかない…と圧倒された。が、どうだろう、その後の研究所襲撃シーンは既視感ありまくりで、あれ? 目当てのアナ・デ・アルマス演じるパロマが登場するキューバのシーンはユーモアを交えつつ高めのテンションを維持。そこから如実に勢いがダウン。話もこんがらがってきてついていけなくなる。ラミ・マレックが世界の破壊を望む理由ってなんだっけ? あの顔はどういういわくがあったんだっけ? ヒロインのマドレーヌがプロの殺し屋並みに銃器の扱いに長けている説明あったっけ? 裏切ったCIAと森の中で戦うシーンは長すぎてだれる。敵が凶悪で強大だからこそヒーローが輝くのに、今回の敵はシナリオに都合のいい誇大妄想狂…なんだけど過去を知ると同情の余地も少しありそうで、憎みきれない変な奴。これと戦うとなってもボンドを応援する気になれなかった。これならジェイソン・ボーン・シリーズの方が自分は好き。あっちの方がスパイ行動するし、アクションすごいし、女っ気薄いしで好みに適っている。
新しい007はまだ若くて力不足なのか、あまりいいシーンはなかった。ボンドの引き立て役。パロマはまさかのドジっ娘設定。でもアクション頑張ってた。退場は唐突。役者のスケジュールの都合か。ストーリー的には、クレイグ最後のシリーズということで綺麗に終わらせようとしたのだろうけれど、終盤に進むにつれアメリカンな家族愛要素を出してくるから、げえっとなった。これは独身中年の僻みかもしれん。脱出する際にうさぎのぬいぐるみ拾うの、露骨すぎて興醒め。ラスト、まんまアルマゲドンじゃん。敵の細菌兵器はコロナウイルスからのアイデアだったのかな。スペクターがあっさり全滅するのはお粗末。作中の日本趣味はフクナガ監督のルーツ由来なのか好みなのか。アメリカの娯楽大作で日本趣味を見たのは久しぶりな気がする。最近はもっぱら中国ばかりな印象。
ビリー・アイリッシュのテーマソングが流れるタイトルまでは大傑作。そのあとはあまり。でも退屈せず最後まで見られたからつまらなくはない。自分が007向きの人間ではないのもあろう。なんせこんなに続いているシリーズを43歳までろくに見ていないのだから。ダニエル・クレイグが53歳で、ヒロインのレア・セドゥが36歳。その二人が「愛してる…」とかやってるのもマッチョな男の願望みたいのが透けて見えるようで違和感強かった。でもキュートなアナ・デ・アルマスの活躍をスクリーンで見られたからまあ満足。