俺向きの映画ではなかった…『シン・ウルトラマン』感想

IMAXのレイトショーで。観客は思ったほどいなくて50人いたかどうか。レイトショーなので子供はゼロ、パッと見た感じ女性は数人しかいなかったような。おっさん一人客が多そうだったが若そうな人もいた。といってもジロジロ観察したわけじゃないから適当な見立て。無論自分もおっさん一人客。

 

ウルトラマンについてはほとんど知らない。それでも初代がどういう話なのか大体は知っているのだからウルトラマンってすげーなと思う。ゴジラ仮面ライダーガンダムもそうか。熱心に見た覚えはなくてもあらすじや設定はぼんやりと知っている。これらの作品が後世に与えた影響は甚大なものがあるのだろう。マクロスエヴァはそれらと比べると少し違う印象。自分は最近はアニメを全然見なくなってしまったし(鬼滅の遊郭編もラスト二話まで見たのに何ヶ月も放置してしまっている)、特撮は元から知らないジャンルだし、サブカルオタクって感じではない人間なのだが、それでもわざわざ公開週にIMAXで見に行くのは『シン・ゴジラ』の感動再来を期待してか(この映画が4DX初体験だった)、それとも総監督ではないとはいえ庵野秀明という名前に惹かれてか。

 

ウルトラマンを知らない人間のしょうもない感想。文章にまとめるのは億劫なので箇条書きで。ネタバレ含む。

 

・冒頭のマーブル模様みたいなのがウルトラQオマージュなのはわかった。

・現在までの状況を説明するカットが早すぎて文字が読めなかった。

・針の落ちる小さな音まで聞こえるはずのIMAXなのに登場人物(とくに斎藤工)のセリフが聞き取りづらかった(俺の耳が悪いだけか?)。この映画に限らず邦画はもっと音声に金と労力費やすべきだと常々思ってる。

・この映画は斎藤工長澤まさみのW主演だと思う。二人ともいい俳優だがウルトラマンの主演をやるには歳をとりすぎに感じた。政界と同じく芸能界も高齢化しているような。

ウルトラマンの登場が早いのはテンポ的にいい。怪獣とプロレスするんだからもっと腕が太い方がよかった。あと推定2900tの割にはどっしりした重量感がなく軽そうに見えた。一切発声しなかったのは不満。「ダァ」とか「シュワッチ」とかやって欲しかった。

・アクションに関してはスペシウム光線で山を吹っ飛ばすシーンがピーク。以後も怪獣とバトるけどあのシーンのかっこよさを越えるものはなかった。スペシウム光線を撃ってるときのウルトラマンの腰が引けすぎに感じたのだが、あんなだったっけ?

山本耕史が素晴らしかった。あの胡散臭さ(観客全員、「この星のために働く」という彼の言葉を信じなかっただろう)、この映画で一番存在感あったんじゃないか? 総理大臣との会合の際、先方より先に来て、ずっと頭を下げてるのも人間…というか日本人を理解していることを示していてよかった。

長澤まさみの巨大化は画としては面白かった。でも必要ないお色気要素とも思え(エヴァ破のアスカの尻のアップみたいな)若干不快感を抱いた。ウルトラマンでやることじゃなくね? という。そういうの求めて見に来てねーし。

・しかしIMAXのスクリーンのアップに耐えるどころか見惚れてしまう長澤まさみの顔面偏差値すげーな。女優だからすげーに決まってるんだけどそれにしてもすげー。

・本作のベストシーンを選ぶなら斎藤と山本の二人が居酒屋で飲むシーン。日本酒、つまみは玉子焼きと枝豆だったかな。「浅草一文」と提灯だか暖簾だかに書いてあった。今後はファンの聖地だろう。

・偽ウルトラマンが遠くでちっちゃく暴れてるシーンはシュールで笑えた。

・対メフィラス戦の格闘がエヴァっぽかった。

・「ドン、ドン」みたいのとコーラスの音楽が流れると途端にエヴァっぽくなってしまうのは意図してやってるのかな。自分としてはそういう内輪な感じは閉じててつまらなく思うのでできれば全然違う音楽を使ってほしい。だから主題歌は米津でよかったと思う。

・「暴力より対話による平和的解決が一番」みたいな上司のセリフは今のご時世に聞くと含蓄があった。

ゼットン登場、しかもゾフィーが連れてくる展開はアツい。ここで初めて、あ、初代を踏襲してるんだ…と気づいた。

・有岡大貴、定時後とはいえ職場で酒飲んだり、VR会議をオフィスでやったり(普通会議室みたいなところ押さえるよね? 超大事な国際会議なんだから)、せっかくの対ゼットン兵器を発明したのにブツが描写されなかったり、いまいち残念なキャラだった。オフィスが狭かったのは予算の都合か。

・つーか主演二人を除いて禍特対のメンバーが魅力に乏しい。スーツでパソコンいじってるだけ。そういえば今回は『シン・ゴジラ』と違って博士が出てこなかった。なんでもいいから博士出てきて欲しかったな。

・「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」。このゾフィーのセリフを聞いたときなんでか知らないが目頭が熱くなった。でもよく考えるとウルトラマンが人間に肩入れする決定的な理由はこれといって描かれていなかったような。融合は元々は人間を死なせてしまった罪悪感が発端だろうし。バディを強調していたのが伏線だったとか?

・本作で一番冷めたのはラストバトル。ウルトラマンでも倒せなかったゼットンを人類の力で退治する、という展開が初代最終回の胸熱ポイントだったと思うが、本作にはせっかく人類が発明した兵器(六次元とかなんとかよくわからんかったが)が一切描かれないので画的にはウルトラマンが殴ってゼットンを倒したように見えてしまう。だったらプラズマとかなんとかエネルギーとか、知らんけど何かすげーエネルギーを人類の力でウルトラマンへチャージして、超ウルトラマンになって、それで殴って倒すでもよかったのでは。

・バルタン星人出して欲しかったな。

 

 

総評。

まずIMAXでなくてもよかった。画が弱いんだよなー。色々初代オマージュなシーンがあったのだろうけど、また、それっぽいなーと感じたシーンもあったけど、初代をほとんど知らないので語れない。ゴジラ仮面ライダーならシリアスにできるかもしれないがウルトラマンでは難しいだろう。だからこそユーモラスなシーンの数々があったのだろうが、そういう荒唐無稽な「空想特撮映画」としての面と、『シン・ゴジラ』にあった大人向けな組織の描写(「ミサイルの経費はよその省庁付にしてくれ」みたいなやつ)が混ざっていて映画のトーンのバランスが悪く感じた。アクションに関しては『シン・ゴジラ』と比較するのはあれだろうが、画に力がなかった。ゴジラが熱線で都心を焼き尽くすシーンの鳥肌立つような迫力は本作にはなかった。スペシウム光線にせよ、爆撃機からのミサイル投下にせよ、スクリーンは大きいのに遠くの方で爆発してるようだった。

なんだか不満ばかり書いてしまったが、映画館へ行く前は眠かったのに始まったら眠気はなくなり最後まで見られたのでつまらない映画ではなかった。ただ俺向きではなかったなと。この映画を見てウルトラマンを履修しようという気にもならなかったがそれは『シン・ゴジラ』のときも同じ。