連休中に視聴した映画の感想

金曜から月曜まで有給も使っての四連休。埼玉県の新型コロナ新規感染者数が1000人を超え、今月いっぱいは緊急事態宣言が適用される。当方未だ一回目のワクチン接種もできていない状況。というわけでせっかくの夏の連休であってもステイホームせざるを得ず。昨年の夏もこんなだった。昨年の今頃、東京都知事は来年はコロナのない夏を過ごすために移動自粛に協力をと呼びかけていたような記憶があるが、今年の夏は五輪開催の影響もあってか東京では新規感染者がとうとう5000人を超える日も出、結局一年前と同じように帰省やら県境を跨ぐ移動自粛のお願いをしているていたらく。無能無策にも程があるが、政府および自治体がどの程度まで新型コロナ対策に本気なのか疑わしい現在、「五輪やってるんだから俺だって好きにやる」と嘯いて行動するのも自由だろうが、それでコロナに感染しても苦しむのは自分なわけで、さらには家族にも感染させるリスクがある以上はやはり大人しくしているのが最適解ではないかと思う。

 

そうだ、本日東京五輪が閉幕したのだった。テレビ中継は一切見ず、少しネットニュースで知ったくらいで、自国開催なのにこれまでの人生でもっとも関心の持てない五輪だった。IOCをはじめとする関係組織の横暴と守銭奴っぷりを知ることができたのが今度の五輪開催の最大の意義だった。今後五輪を積極的に見ることはないだろう。五輪憲章が聞いて呆れる。

 

で、引きこもってやはりU-NEXTで映画ばかり見ていた。映画館でいいのがやっていれば行ったのに今週は近所のシネコンでろくなのがやっていない。最近はこのブログに自宅視聴の映画の感想しか書いていない気がする。なんだかんだ言ってプロジェクターとスクリーン(70インチと小さいが)とネックスピーカーを買って、なんちゃってホームシアター環境を整えたのは正解だった。これらがなければ映画を見るとしても21インチのiMacか19インチのテレビしかないから。映画を見るのに大きい画面、大きい音は正義である。しかし見まくっているせいで何を見たのか三日前の記憶がもう薄れている。幸いU-NEXTは視聴履歴が残るようになっているのでそれを見て思い出しながらこの記事を書いている。

 

フッテージ

期待せずに見たら結構怖くて面白かった。画面全体が終始暗めなので見ていていい具合にストレスがかかる。冒頭のヌルヌルなカメラワークは何だったんだろう。不思議な感じがした。オチは貞子的な呪いだった、でいいのかな。謎自体は解明されなかったような。子供たちがジョーカーメイクしていたのは笑えた。いきなりアップでイーサン・ホークの横に来たときはビビったが。急に大きい音出すビックリ演出嫌い。

 

アイデンティティー』

大雨によりモーテルに閉じ込められた見知らぬ男女が一人ずつ何者かに殺されていく、という展開は『かまいたちの夜』を連想させて懐かしく、ああこういうシチュエーション好きだなあと感慨に耽りつつ視聴。男女の素性について中盤あたりから見当がついてくるので解明しても驚きはなく。そこから先は退屈だった。ラストに関しては納得よりもくだらねえとしか。

 

『ぼくのエリ 200歳の少女』

Kindle unlimitedが1ヶ月無料なので今利用しているのだが、ラインナップの中に『1日1本、365日ホラー映画』というのがあって(これ電子書籍というよりPDFに近く、事典的な内容なのに検索不可能というダメな本なのだが)その中で著者が『ぼくのエリ』を絶賛していた。押井守監督も『映画50年50本』でやはり褒めていたので少し前に一度見始めたのだが、幹線道路そばで人を殺して逆さ吊りして血を抜き取るとか、街中で安易に人を襲って血を吸うとかの展開がリアリティに甚だしく欠けていて馬鹿馬鹿しくなり、途中で見るのを止めていた。今回改めて最後まで見たけれど、まあ最後まで見られるから悪い映画ではないだろうが、自分の琴線には触れなかった。これ小説にも言えることだが冒頭少し見るなり読むなりしてつまんねーなと思ったものって、我慢して見続け読み続けても途中から圧倒的に面白くなったりすることってほとんどない。面白い映画や小説は最初からある程度面白いのだ。押井守監督の本に両性具有であることを示すシーン云々とあったけれどそんなシーンあったか? 「入っていい」と言わないとバンパイアってどうなるんだか。そもそも北欧でバンパイアって珍しい気がする。日光に当たると燃える設定はキャスリン・ビグロー監督の『ニア・ダーク』へのオマージュか。あの映画は今見ると色々古臭くて辛いが(『エイリアン2』のファンなら楽しめるが)ジェニー・ライトの美貌を見るだけでも一見の価値はあると思う。この人、若くして女優を引退してしまったそう。

 

『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』

『ボディ・スナッチャーズ』というしょうもない映画でガブリエル・アンウォーを久々に見、ああこの人90年代めちゃくちゃ好きだったなと思い出して、10分しか出ていないけれど彼女といえばやはりこの映画のタンゴを踊るシーンだろうということで見返した。150分と長いので一度しか見ていないがいい映画だった記憶があった。でも見返すとそこまでとは思えない。終盤のホテルで大佐が自殺するのしないのと主人公と言い合うシーンとか長すぎてだれる。アル・パチーノはあの庶民的な家が全然似合ってないし。金持ちの盲人という設定でもよかったんじゃないの。この映画、友人を裏切るか否かという人格の高潔さをめぐってクリス・オドネルフィリップ・シーモア・ホフマンが対照的に描かれるのだが、本来フォーカスすべきはそこじゃなくて、悪さしたくせに我が身可愛さに名乗り出ず、友人二人に辛い思いさせている三人組こそ非難すべきじゃないのか。最後の演説も別に…という感じ。この映画はガブリエル・アンウォーの美貌に酔うための映画。彼女が出演する10分のためだけに残りの140分があると言っていい。あのタンゴのシーンって実際ストーリー的には何の必然性もないのに、そのシーンが一番いいのだから映画って不思議だ。

 

『ディセント』

あのゴラムみたいなビジュアルの地底人ってどうやって生きてきたんだろう。どうせ満足いく説明できないんだからあんなもの出さず地底の怖さだけで勝負してよかったような。この内容で登場人物6人は多すぎる。4人でいい。終盤の体育会系バトルは退屈だった。ラストの幽霊はビックリさせる意図しかないのでやめてほしい。続編も見たいのだが配信では見られないようで残念。

 

プリズナーズ

これ、アト6で宇多丸さんがロジャー・ディーキンスの撮影による雨の中のパトカーのシーンが素晴らしいと絶賛していたので見た。すごい面白かった。キリスト教が絡む善悪の問題がテーマだったとは見終わって幾つかの考察サイトを見て知った。役者の演技とか犯人と犯行のショッキングさとか素晴らしい画に気を取られてしまって、一度見ただけだと内容的に不明瞭な箇所が残るのだけれど、考察サイトの指摘する通り作中でかなり丁寧に謎について説明や示唆がされているんだな。ただし神父が殺人犯を殺していたというのは状況だけで明確な説明はないのでそれだけが残念。それも説明していたらさらに長くなってしまうからカットされたのか。終盤、ケラーは大人しく手錠はめないで抵抗しろや、とちょっとイラついた。ロキは有能なような無能なようなでも有能な妙な刑事。彼が叔母の家に到着して以降のシーンが最大の山場だろう。少女に注射している犯人の影が大きく壁に映るシーン、その後の豪雨の中の疾走シーン、圧倒される。開かれたエンディングも粋でいい。

 

『ボーダーライン』

一度見ているがヴィルヌーヴつながりでこちらも。冒頭、死体発見から爆発と、一気に引き込まれる。証人の護送シーンは南米の麻薬抗争の怖さがよく出ていて緊迫度が半端ない。護送車が渋滞中に襲撃されて応戦するシーンの迫力も素晴らしい。山場はここと終盤のトンネルのシーンか。ナイトビジョンの画面だから没入感がある。ベニチオ・デル・トロジョシュ・ブローリンがどちらもムカつくところがこの映画の魅力になっているように思う。デル・トロの顔ってなんか見ていて不快なんだよな、別に嫌いじゃないんだが、何でだろう? 音楽の使い方が『メッセージ』と似ているように思った。ヴィルヌーヴは『メッセージ』とか『2049』みたいなSFより『プリズナーズ』や本作のような事件ものの方がいいように思う。

 

ブレア・ウィッチ・プロジェクト

たぶん20年ぶりの視聴。POV形式によるモキュメンタリーの走り。公開当時、たしか失踪した三人の学生の情報提供を呼びかけるホームページが作られるなどリアルっぽさを出していた。序盤のインタビューは悪くない。そのあとの探索がダラダラしていて辛い。森で迷ううちに三人が険悪になって以降は悪くない。最後の夜、カメラに向かって謝罪するシーンはいい。ラストの廃屋のシーンは無数の手形とか叫び声とかでかなり怖くて素晴らしい。今となってはYouTubeに投稿されるスマホ撮影の動画よりも画質は悪いが、それがいい意味で味になっている。今日でも十分鑑賞に耐える。

 

ゼロ・ダーク・サーティ

押井守監督絶賛の作品。別にキャスリン・ビグローがいいというわけではないようだがこの作品はとてもいいと。二回くらい見たけれど途中で眠くなってやめてしまっていた。今回初めて最後まで見た。上の方で、最初がつまらないと最後までつまらない映画であることがほとんどと書いたけれど本作は稀有な例外。中盤までは尋問・拷問・ミーティングばかりですげーつまらない。アフガニスタンの基地で同僚が死ぬシーンは無警戒過ぎてアホかと冷める。面白くなってくるのはアルカイダの連絡係を特定できて以降。ブラックホークによる暗殺作戦実行がクライマックス。この作戦シーンは緊迫感あって凄くいい。ラストの涙は、ここに至るまでの年月の長さと、やりきったけれど達成感はなく虚無感だけがある、みたいな感情からだろうか。それにしても高卒でCIA入局は凄い。ジェシカ・チャステインって失礼ながら美貌とは思わないんだけれど、見入ってしまうオーラがある素晴らしい女優。