神保町ブックフェスティバルに行ってきた

 

この土日、神保町ブックフェスティバルが3年ぶりに開催すると金曜日の夜、TwitterのTLで知った。アウトレット本やサイン本などが多数並ぶイベントとは知っていたが行ったことは一度もない。同時期、神田古本まつりも開催。こちらにも行ったことがない。遠いのならなくて当然。だが神保町まで電車で1時間程度で着く埼玉県に住んでいて曲がりなりにも本好き本読みを自認していながらこれらイベントに参加したことないというのも妙な気がしたので行ってみることにした。なんでも体が元気なうちに動いておいた方がいい、という最近の心境も影響している。また、ちょうど今読んでいる柳下毅一郎『殺人マニア宣言』で「現場に行かない人間は駄目だ」という一文を読んで思うところあったという事情もある。天啓かなと。人間は意味を求める生き物である。んな大袈裟な話じゃないが。

 

土曜日は夜勤明けだったので神保町へ行くのは無理だった。早めに就寝し、日曜10時頃出発するつもりでいた。その時間ならば多少現地でゆっくりしても帰宅は天皇賞・秋の出走に間に合うだろうと。が、思いのほか爆睡してしまったのと、実質一日きりの休日朝なのでダラダラした結果出発が予定より2時間ほど遅れてしまった。レースまでに帰宅できるか微妙になってしまったので行きの電車内でレースの予想を。

 

ブックフェスティバルと古本まつり。メインは前者。事前のリサーチをほぼしなかったが、国書刊行会のスペースにまず行きたかったのでマップで最寄りの駅出口がA6なのだけは確認しておいた。で、予定どおりA6出口から出たのだが列を間違えて反対側からワゴンを見始める。すぐに国書は反対側だと気がついたがすずらん通りをぐるっと一周して元の場所まで戻るのが動線的にベストかなと考えそのまま歩いていく。まだ慌てるような時間じゃない、初めてなのだからゆっくり見ていこう。予想していたとおり人が多い…のは確かだがそれよりも歩道が狭いせいで歩きにくい。気になる出版社のスペースを見つけると寄ってみたが、各社100冊? 150冊? 程度が並ぶくらいの小さいワゴンのスペースなのでその前に5人〜7人くらい横に並ぶともう後ろにつくしかなくワゴンの中がほぼ見えない(当方身長174cm)。でも逆にそのくらいのスペースだからこそ何分も熟考したり立ち読みしたりするでもなく数分ほどで前の客はどいてくれるので慌てず待つしかない。以下、印象的だったスペースと気になった本について(記憶違いもあるかもしれない)。

 

一番人が並んでいたのは早川書房。俺はあまりここと縁がないが(それでも何冊かはさすがに持っている)テープで動線が作られて人数を制限して案内、待機列もできていた。ほぼSFを読まない俺にとってのハヤカワって良質な海外ノンフィクションを紹介してくれる出版社のイメージ。次に人が多かったのは東京創元社。こちらも同じくテープで動線が作られていた。今年はアーサー・マッケンの3冊を買わせてもらった。並ぶのでこの二社には寄ってない。岩波書店も人が多かった。が、背表紙の褪色した岩波文庫を見かけた途端古本屋かブックオフを見ているような気になり、今日の気分じゃないな、とそそくさと去る。白水社は少し後ろから覗いただけだが(最前列にいた若い男女連れが立ち読み感覚でパラパラ、「こういうの好きなの?」みたいな会話をだらだらしていて長引きそうだったので)ゼーバルトが何冊か、あと先頃新装復刊したディドロ『運命論者ジャックとその主人』があった。ディドロ、もしすでに買っていなかったらここで買ったと思う。びっくりしたのはPASSAGEのワゴンに(見間違えでなければ)帯つきの柳下毅一郎『新世紀読書大全』があったこと。内容は言うまでもなく、装丁、レイアウト、紙質、すべてが素晴らしい本。読む本の選択にめちゃくちゃ影響を受けたし今も受けている。あの本を持っていなくて今日買えた人は幸運だな、絶版だと思っていたが。ここには鹿島茂先生のサイン本もあった。あー、今思うと買えばよかったかも。平凡社は期待していたほどではなくライブラリーの数も40冊あるかないか、珍しいラインナップでもなく、あとは雑誌があったかな。河出書房新社も期待していたほどではなく。作品社は全品1000円との表示があったので『ストーナー』があれば買おうと思ったがなかった。亜紀書房も俺が好きそうなのは置いてなく。『詳注アリス』やよさげなノンフィクションがあれば欲しかったが。柏書房のワゴンでアルベルト・マングェル『読書の歴史 あるいは読者の歴史』を見つけ、店頭表示よりさらに値引きしてもらって購入。以前同著者の『図書館 愛書家の楽園』を読みかけたことがあった気がする。松岡正剛がこの人のことをベタ褒めしていた。

 

そして国書刊行会である。国書刊行会のワゴン前に蠢いているのはヒトではなく魑魅魍魎だという噂を聞いて恐れていたのだが見た目は普通のヒトばかりだったので安心。ただその数がやばい。早川書房東京創元社と同じくらいの人数なのに制限していないから文字通り人だかりができている。ワゴン前はラッシュ時の山手線並みの密度で、コロナ禍の今、近づくのに多少の躊躇が。とはいえ目当てのスペースなので勇を鼓して突撃。前に人がいると全然ワゴンは見えないのに左右や後ろからも人が来て身動きできない。というか、とくに女の人がそうだったんだが物凄く積極的に押してくる。女性の方が背が低いから前を見るために勢いそうなってしまうのかもしれないが、ちょっと怖かった。超小規模だけど群衆の怖さというか、ちょうど今朝韓国で雑踏の転倒事故により100人以上が死亡したというニュースを見たばかりだったので。5分か10分その状況に耐えたらようやく最前列に移動。目についたのは『夢野久作全集』『ホフマン小説集成』、箱入りの泉鏡花…あとは俺はよく知らないが海外の小説がたくさん。で、ここでは三浦清宏『新版 近代スピリチュアリズムの歴史』を。半額まではいかなかったがまあまあお得な価格で。買ったあと人だかりを出るにもぶつかったりして一苦労だったが国書税を節税できたので満足。

 

しょうじきこの時点で結構疲れていた。俺は人の多いところが好きじゃない。加えてコロナ禍というのもある。が、せっかくわざわざ神保町まで来たのだからと靖国通りの古本まつりにも寄ることにした。もう俺は欲しい本のあらかたは持っていて探求書はないので*1冷やかし程度で。こちらもすずらん通りに匹敵する人の多さで、棚の前の人だかりに参加する元気は出ず、歩道に出ている棚を適当に見ながらだらだら散歩。時々人の少ない棚を覗いてちくま学芸文庫講談社文芸文庫の何か珍しいのがあれば買おうかと思ったがいい出会いはなく。店にも多くの人が入っていて入りづらく。店内に入ったのは@ワンダーだけ。何年かぶりで来たのだが上階へ行くにはエレベーターしかなくなっていた。たしか以前は階段で昇ったような記憶がある。3階の文庫コーナーでベールイ『ペテルブルグ』の上下揃いを発見。珍しい。全体的に経年劣化はあったものの小口研磨されておらず、値段は見なかったがわりと珍しいのでは。結局古本まつりでは何も買わず。疲れたので帰りたくなる。昼時だったからかあちこちのカレー屋に行列ができていて、中でもボンディの行列はやばかった。50人くらい並んでいたような。そんな旨いのかな。行ったことないので行ってみたい気持ちはあるがあの行列に並んでまでは…。ラーメン屋もあちこち並んでいた。丸香は旨いし回転も早いから並んでもいいが日曜日は休み。結局そのまま何も食わずに神保町駅から地下鉄に乗った。滞在時間は1時間ちょっと。せっかく来たのに短い? 俺の外出はいつもこんな感じ。イベント楽しんで〜カフェでお茶して〜ってタイプじゃない。連れがいればそうすることもあるが一人のときは用事を済ませたらさっさと消える。

 

帰りの車内で勝ち馬投票を。シャフリヤール本命、あとはイクイノックスと贔屓のポタジェ。ジオグリフとジャックドールは違うような気がして切った。最寄り駅前のスーパーで適当に酒と惣菜を購入。

 

帰宅するとすでに午後4時近く、缶ビールを開けてネットでレースの確認。イクイノックスとパンサラッサ。あとで動画で見たらめちゃくちゃ面白いレースだったのでリアルタイムで見たかったと悔しくなる。パンサラッサすげー、そしてイクイノックスはよく届いた。ポタジェは残念。このメンツ相手だとちょっと力量的に厳しいのかもな。

 

*1:『ヘルメス文書』を探してはいるがどうせあっても高額だろうしいい状態でもないだろうから気長に復刊を待つ