四連休にしたこと、というか連休中視聴した映画の感想

この四連休、梅雨明けで暑い日が続いたというのもあり四日間ほぼエアコン付けっぱなしにして引きこもっていた。外出はスーパーへの食材買い出しと、最終日の今日歩いて近所のマクドナルドへ行ったくらい。引きこもって、映画を見るか、読書するか(ソポクレスを二冊読んだ)、slay the spireをやるか、ネットをして過ごした。サラダとペペロンチーノを毎日のように作っていた。東京五輪が始まったらしいが、今度の開催に際しての不祥事の連続で五輪アンチになったので見ていない。というかテレビ自体点けていない。一日の流れとしては、朝6時頃に起きて、二度寝して、朝飯は抜き、コーヒーを飲んで昼を食べて、上述の何かをして過ごして、日が暮れたら酒を飲んで、夜食べて。途中昼寝もする。結構よく寝られたのは有意義だったと思う。普段は週末女の人とどこか近場に出かけたりもするが、今年は彼女が法事で帰省したためそれもなく。これだけ暑いと出かけるのが億劫になる。定年後の予行演習の気分だった。

 

 

 

 

 

この四連休、近所の映画館ではろくな映画をやっていなかったので見に行くこともなく。代わりに自宅で結構映画を見た。ざっとその感想を書いておく。

 

 

『ババドック 暗闇の魔物』

U-NEXTで。心理的なホラーでかなり怖かった。前半の、発達障害? ADHD? の息子の言動にストレス感じまくり。母親役の女優もやつれ過ぎてて正視できないというか、見ちゃいけないような怖さがあった。睡眠不足とか金銭的な不安とか育児ストレスとか、そこに魔物は潜んでいると示唆する。母子のキャスティングが不快で素晴らしい。ただ犬を殺して、しかもそれをエンディングでスルーしているのはよろしくない。犬を殺す映画は自分にとってクソ映画である。ゆえに本作も素晴らしいがクソ映画である。

 

パンズ・ラビリンス

U-NEXTで。押井守監督の映画の本にデル・トロ本来の仕事の一つとして挙げられていたので興味を持った。『パシフィック・リム』は退屈だったがこれは素晴らしかった。内戦時代のスペイン、少女、というとエリセの『ミツバチのささやき』を連想する。どちらの少女も夢見がち。ペイルマンのシーンにあった無数の靴は戦争の犠牲になった子供たちの暗示か。この映画は幻想と現実の扱いが巧みで、正直自分は終盤までファンタジーだと思っていた。でも違った。ファンタジーなんて存在しなかった。魂は王国に帰ったとか、そんなの聞かされても納得できない。女の子が不憫過ぎて映画見て久しぶりに涙が出た。彼女には現実で幸せになってほしかった。

 

クリムゾン・ピーク

U-NEXTで。『パンズ・ラビリンス』が素晴らしかったから続けてデル・トロ見たけどこれはつまらなかった。美術は凄い。とくに屋根の隙間から雪が降ってくる城の造形は斬新で感心したが、ハリボテというか、掘削機なんて思わせぶりなくせに何の役にも立たないし、セットに内容が負けている。ストーリーがめちゃくちゃで、そもそも母親の亡霊がなぜ忠告したのかわからない。男は今までたくさんの身寄りのない金持ち女を餌食にしてきたが主人公に会って改心するとか都合よすぎ。他にも色々突っ込みどころがあったような気がするがもう忘れた。姉がジェシカ・チャステインなのは途中まで気づかなかった。この人、自分が見る映画によく出てくる印象がある(ジェレミー・レナーもそう)。気のせいだろうが。時間の無駄とまでは言わないが見なくていい映画だった。金払って『シェイプ・オブ・ウォーター』見る気がなくなった。

 

シシリアン・ゴースト・ストーリー』

U-NEXTで。広角で撮影されたショットが美しい。実際にあった事件を元にしているとのこと。ヨーロッパ映画的な説明不足で展開する筋に理解が追いつかず。主人公は、湖で溺れて死にかけたときビジョンを見たから、もう一度見ようとして毒を飲んだのか。画がいいから最後まで見られたけどつまらなかった。

 

『葛城事件』

U-NEXTで。面白かった。『アウトレイジ』を見て三浦友和って格好いいから悪人やらせても綺麗すぎる…と思ったのだが、この映画だとかなり汚いオヤジを違和感なく熱演していて、凄い俳優だと感銘を新たにした。役所広司と同じくらい凄い俳優。本作のストーリーは実際にあった幾つかの事件を元にしている由。冒頭は和歌山の事件だろうし、次男が起こすのは大阪の事件のようにも見え、犯行時の彼のオーバーサイズめのジャケットは秋葉原の事件のようでもあると思った。南果歩の自分というもののない妻、気弱な新井浩文の長男、どっちも素晴らしかった。長男は、公園に捨てた吸殻を拾いに戻るくらい気弱で善良で、家出した母と弟を発見したら父親に連絡する従順な性格。アパートで父親抜きの家族三人が団欒するシーンは、あり得たかもしれないこの家族の幸福を示唆するようで切ない。切ないといえば、新築祝いのシーンもそう。強権的な父親だけれど、彼には彼なりに夢というか理想というかがあったのだろう。わずかなズレが歳月を経るうちに取り返しがつかないほど大きくなっていく。「どうしてここまで来ちゃったんだろう」という妻の台詞が示すように。この映画で一番気持ち悪いのは田中麗奈。自分の理想に夢中で周りが見えていない。彼女が施設で突然キレるシーンは最高に気持ち悪かった。面会室であなたと生きていきたいと言いながら昔の彼氏とのセックスについて長々喋るとか、どう見てもやべー女で、これだけ嫌悪感を誘うのは並の女優では無理と感心。三浦友和は、スナックで偉そうに土下座するシーンも良かったけれど、やっぱり最後の首吊りからの無言の蕎麦すすり、これが最高だった。田中麗奈を襲って家族になってくれるかのシーンは、それまでのキャラとの乖離を感じ違和感があった。この父親の気持ち悪さを演出するにはいいかもしれないが、そんな性的な感じのキャラじゃなかったように思って見ていたのだが…。もう一度見たいかと問われれば、いや大丈夫っす…と答えるけれど、見てよかった。いい映画。

 

ビューティフル・デイ

U-NEXTで。『レオン』とか『LOGAN』みたいなおっさんと少女の話と思って見たが違った。『タクシードライバー』もどきだった。主人公はアフガニスタンかなんかでトラウマを負ったのか。子供の頃の家庭環境もトラウマになってそう。でもそういう背景の説明は一切なく、思わせぶりなフラッシュバックで示すだけ。ストーリーも雑。知事がロリコンなのはまあいい。でも買われた少女の両親はそれで自殺するだろうか。知事の指示なのか殺し屋が執拗に主人公の周辺を狙ってくるが、あんなにめちゃくちゃやるかね。あれじゃマフィアじゃん。法治国家だぜ。リアリティがない。防犯カメラの映像を使うのはいいアイデアだと思った。おっさんと少女には期待したような心の交流は特になく。レストランでの自殺の妄想は『バッファロー66』っぽい。全体的に二番煎じばかりの雰囲気映画という感想。『ガルヴェストン』もこんな感じだった。あっちの方がいくらかマシだったが。

 

『ハイテンション』

U-NEXTで。フレンチホラーの代表的四作のうちの一作。言っても仕方ないが悪趣味過ぎる。冒頭のトラックのシーンもそうだし、キャビネット使って殺すのも、母親の手首を切り落とすのも、最後のチェンソーも。二重人格というか妄想の話なんだが、だとするとトラックの荷台のシーンとかカーチェイスのシーンとかの整合性が取れなくないか。まあ厳密さを求める映画ではないが。ラスト近くの車のエンジンがかからないのはイラついた。昔はお約束だったけれど、2021年の今あんなシーンを撮ったらそんな監督は見限っていいと思う(本作は2003年)。この映画は怖くない。不快なだけ。怖さでいえば『ババドック』の方がずっと怖い。あと、犬を殺しているのでこの映画もクソ映画認定。そう考えると『アングスト』は殺人鬼の話なのに犬を殺さなかったので本当に素晴らしい。『クリーピー』もそう。

 

『ロスト・バケーション』

アマプラで。期待せずに見たらとてもいいパニック映画だった。まず全編通じて画が美しい。ときどきCGが露骨になるのは目をつぶる。ストーリーはシンプル、登場人物は最低限なのも好印象。主人公は何度となく負傷してリアリティもある。実際にはサメがあんなに人間に執着するとかありえないんだろうが…。主演女優が美人だから彼女一人で最後まで持たせられる。カモメがマスコットとしていいアクセントになっていた。ラストのアクションがどうなってるのかよくわからなかったので、倒したときの爽快感がイマイチだったのが惜しい。自分の中で『ジョーズ』『ディープ・ブルー』と並ぶ名作サメ映画。いや、ほとんどサメ映画を知らないが。