緊急事態宣言下の夏季休暇。そんなもの無視して出かけるのも一つの考えだろうが、万が一にも感染すれば損を被るのは結局自分である。家族を危険に晒すリスクもある。だから従わざるを得ない。昨年に続き今年もステイホームの夏季休暇。しかし東京都知事はさすがに今年は、来年の夏をコロナなく過ごすために外出自粛を、とは言わなかった(と思う。ニュース殆ど見ていない)。できるかどうか分からない目標や約束は口にするべきでないと学習したようで結構。政府・自治体の対応次第では来年の夏もまだコロナ禍が終息せず、緊急事態宣言が発令されて三度目のステイホーム推奨の夏という事態も十分考えられる。
今年の夏は新型コロナに加え六日間連続で雨が降ったためほとんど出かけられなかった。買い出しと食事に行く程度で不要不急の外出はせず。休暇前は近所の低山を登るつもりでいたが断念。ニュースを殆ど見ていないので詳細は知らないが、前線が停滞し続けて九州では観測史上最多雨量を記録するほどの大雨になっているという。近年、夏の豪雨被害が深刻になっていると感じる。もう少しすれば台風シーズン、これもどうなるか心配である。
夏季休暇中はステイホームでいつもの休日と同じく映画視聴と読書をして過ごした。『ドント・ブリーズ2』を見に映画館へ一度だけ行ったら結構混雑していた。
hayasinonakanozou.hatenablog.com
最近、自宅で映画を見るのにも飽きつつある。飽きたら途中で見るのをよして、昼寝したり読書したり。本は六日間で四冊読んだ。自分にしては多い。『残酷物語』『エセー抄』『車谷長吉の人生相談』『悪と全体主義』。
hayasinonakanozou.hatenablog.com
hayasinonakanozou.hatenablog.com
午後三時を回ったら酒を飲み始めた。朝食はヨーグルトとコーヒー、昼は適当に近所のチェーン店(松屋とかマックとか)、夜はスーパーの惣菜だったり、カップ麺だったり、テイクアウトだったり。さほど量を食べていないのに体重は一向に減少しない。中年ボディの燃費のよさ、素晴らしい。以下、休暇中視聴した映画の感想。
『カポーティ』
U-NEXTで。『セント・オブ・ウーマン』でフィリップ・シーモア・ホフマンを見て、懐かしくなって視聴。『冷血』執筆時のカポーティの話。冒頭の農家や殺人現場のショットが素晴らしいのでワクワクしたが、そこから先は単調な展開でつまらなかった。事件を追ううちにカポーティが犯人の一人に自己投影していく様子はいまいち伝わってこなかったし、彼に友情を感じながらも本を発表するために早く死んでほしいと願う矛盾した感情の葛藤も切実さは感じられなかった。殺されたクラター家がなおざりにされて、犯人側、とくにカポーティが自己投影したペリーにばかりフォーカスしているのに違和感を覚えた。カポーティが描いたのとは違う真実、クラター家にフォーカスしたこの事件のドキュメンタリーがあるようだが日本では見られず残念。カポーティの『冷血』は20年くらい前に読んだけれど内容すっかり忘れている。つまらなくはなかった。映画『冷血』を続けて見るつもりでいたが、こちらがつまらないのでよした。
『ヴィジット』
U-NEXTで。ぜんぜん期待せずに見たら凄い怖かった。序盤はだるい。別に異常も感じない。POVなのにテロップ入って編集済みじゃねえか、とかそんなこと見終わって考察サイトを見るまで全然気にしていなかった。というかそういう粗を気にして見ると冷めてしまって楽しめないと思う。こまけえことはいいんだよという大らかな心で見た方が楽しめる。自分、迂闊な阿呆でよかった。床下の追いかけっこ、その去り際の婆ちゃんの後ろ姿が映るシーンから祖父母に違和感を覚え始めた。この映画、恐怖と笑いが紙一重なところがある。怖いんだけどちょっと見方を変えると笑える、みたいな。最終日のゲームの最中の婆ちゃんのクッキードカ食いとか石化とか、怖いんだけど笑えるといえば笑える。隠しカメラのシーンでは驚きのあまり思わず大声を出してしまった。映画館で見ていたらやばかった。あの夜の一連のシーンは怖い。その後の展開はまあまあ。主人公の姉弟がどちらともいいキャラで見ていて楽しかった。しっかり者のお姉ちゃんとワルぶってる弟。でも二人とも過去の出来事で傷を負っている。祖父母の家での体験によって過去の傷を克服する展開は感動的。ラストシーンの、何これ? 感もいい。
U-NEXTでヴィジット視聴。婆ちゃんがめちゃくちゃ怖かった。隠しカメラに気付いたアップのシーンで声が出た。これメタ的な構造になってるぽいが今は動揺し過ぎて頭の整理がつかない。ストーリー自体は大したことないがシャラマンの見せ方がうまいから怖いんだな。
— Hhh (@eleintheforest) 2021年8月12日
意思の疎通ができない、何をするか予想がつかない、これが一番自分にとって怖い存在。話しかけても無反応でこちらを凝視する人間と、話しかければべらべら喋る幽霊だったらどちらが怖いか。
— Hhh (@eleintheforest) 2021年8月12日
シャマラン、な。
『ヴィレッジ』
『ヴィジット』が素晴らしかったので続けてシャマラン監督のこれを見ようと思ったらU-NEXTでもアマプラでも見られず、これを見るためだけにdTVに加入。無料期間終わったら解約するが。これはすげー退屈でつまらなかった。19世紀風の暮らしをしていたけれど実は現代だった、という。なんかこういうの見たか読んだことある。箱庭の向こうの世界という設定は『進撃の巨人』と通じる部分があるか。結構ツッコミどころが多い。ガッツリ刺されたのに生きているホアキン・フェニックスとか、盲目の女性一人に森を抜けさせようとするとか、特に後者は不可能でしょ。目が見えていても迷うのが森なのにあり得ない。全体的に展開が単調で眠くなってくる。音楽もよくない。『ヴィジット』の感動が一気に冷めてしまった。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
アマプラ見放題だったのでエヴァを知らない女の人と、タイトルから最初の農業パートまでだけ一緒に見た。いわく、すごいいい、とのこと。一人で楽屋パートを適当に流し見していたら、あのあたり思いっきり旧劇のセルフパロディやってたんだなと今更気付いた。映画館で映画を見ている時って多少なり興奮して舞い上がっているらしく冷静でない。見落としが多い。
『8mm』
U-NEXTで。20年くらい前にレンタルで見た。結構怖かった記憶があったが今見ても怖かった。上級国民と庶民との対比(上級国民は自分の快楽のために庶民の生命まで搾取する)とか、怪物のような男の正体が冴えないこどおじだったりとか、設定が古びていない。ポルノ写真やビデオの闇販売所みたいなところを案内する若きホアキン・フェニックスが「いずれネットが取って代わる」と言っていたのはまさにそうで、ファイル共有ソフトからの漏洩事件とか昔あったなあと懐かしくなった。このホアキン演じるエロ本屋がエロ小説のカバーをつけて読んでいるのが『冷血』。主人公ニコラス・ケイジの妻役が『カポーティ』でネル役だったキャサリン・キーナー(この人全然変わらない)。暗合が可笑しい。ノーマン・リーダスもチョイ役で出ている。終盤のダークヒーロー的展開は爽快感はあるけれど実際あれやったら即逮捕されるだろう。
『エル ELLE』
U-NEXTで。冒頭からわけわからん展開。普通もっと感情的になるだろうにそういうのが一切ない主人公。彼女の行動原理が謎。のこのこ地下室についていくとかあり得ない。過去の事件がトラウマというか彼女の人格形成に影響しているらしいが、それで辻褄が合うだろうか。ユーモアは結構ある。生まれてきた赤ちゃんの肌の色とか、90歳くらいの母親が若いツバメと再婚するとか。でも最初から最後までどういう心理・行動原理で主人公が生きているのかが見えてこなくて困惑し通しだった。落ちをどうつけるのか、それが知りたくて結局最後まで見てしまったが、最後まで見ても腑に落ちない。解説している動画とか見て知見は得られたけれど納得はしていない。これ、そんな話題にするほどの映画かなあ。イザベル・ユペールがあれだけモテる設定は無理がある。40代後半くらいの方がストーリー的に無理がなかったのでは。向いの家の奥さん役の女優を見たことあると思ったら『シンク・オア・スイム』のコーチ役の人だった。
『アイ・アム・レジェンド 別エンディング』
U-NEXTで。序盤の、戦闘機の上でゴルフやるシーンまでは素晴らしい。本当素晴らしい。世界から人が消え、誰もいなくなった大都市で犬とともに孤独に生きる男。大きな家に住み、レンタル屋で映画をAの棚から順番にレンタルし、野生動物を狩る。ドライブとか釣りとかもきっとしてるんだろう。ダークシーカーが出てきてからはどこかで見たことあるパターンになってしまってつまらない。ビルの暗がりでダークシーカーが集まっていたシーンは彼らの生態を描いていてちょっとよかったが。蝙蝠みたいなもんだな。相棒のシェパードは殺さなくてよかった。最後まで生きていても全然いけたでしょうに。ダークシーカーなんて出さず終末後のサバイバル生活だけを描いてくれればそれでよかったのに。
少し家族と会話し、少し女の人と会話し、あとは買い物以外他人との接触がなく六日間引きこもっていると、物忘れが多くなったり、言葉が咄嗟に出てこなかったり、どんどん阿呆になっていく気がする。自分一人だけの世界に閉じこもるともともとあるかなきかの社会性が更に失われて、人前で平気で独り言言ったり、気に入らないことがあればすぐ怒鳴りつけるようなヤバい人間になりそうな気がして恐怖を覚える。さっさと労働から解放されてえと思っていたが、会社を辞めても社会とは何らかの接点を持つようにしないとマジであたおかな人間になってしまいそう。金があればいいとか趣味があれば大丈夫とか、多分そういう問題じゃない。
緊急事態宣言と雨でほぼ引きこもりの休暇を過ごしたが、人と会わず会話せず、家ではだらだらして1日1タスクがせいぜい、暇になると寝るか酒飲むかって過ごし方してると阿呆になっていくのがわかる。リタイア願望強いが、定年しても何らかの形で社会と接点ないとヤバイ人間になりそうで怖い。
— Hhh (@eleintheforest) 2021年8月17日