2025年は30本を映画館で見た。
たった30本からベスト10というのもアレだが選んでみた。

以下、一部ネタバレあり感想。鑑賞順。
- I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ
- 教皇選挙
- サブスタンス
- 海がきこえる
- 近畿地方のある場所について
- 秒速5センチメートル
- WEAPONS/ウェポンズ
- エディントンへようこそ
- 爆弾
- ボディビルダー
I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ
映画オタクの高校生が高校やバイト先の人たちとの人間関係を通じて成長していく青春映画。
序盤はユーモラス。勘違いしたオタクの痛い言動が共感性羞恥を呼ぶ。
中盤、親友から愛想尽かされたあたりから徐々にシリアスさが増してくる。 高望みな夢、経済的な問題、心の傷、プライドの高さゆえ素直になれない性格。映画の虚構によって主人公ローレンスはつらく厳しい現実から目を逸らしていたようにも見える。
挫折や失敗を経て、彼は少しずつ現実世界と折り合いをつけていく。身の程を知っていく。 ラストは意外にも爽やか。
教皇選挙
教皇を選ぶおっさんたちの選挙模様なんて退屈かも…と怪しんでいたがミステリー要素が強く最後まで飽きずに楽しめた。
教皇選挙、外界と完璧に隔離された環境で、投票者の3分の2の得票者が出るまでひたすら続けられるとは知らなかった。
選挙は生もの、スキャンダルや事故によって有力者が二転三転する。途中も、なんなら結果が出てからも油断できない。 シスターの告白、報告書、前教皇の手帳、ラストの煙など肝心な部分を暗示に留める手法に品のよさを感じた。
画面がいい。バッチリ構図が決まっている絵は見ていて気持ちがいい。終盤の傘のシーンはとくに美しかった。
音楽もよかった。
サブスタンス
今年のベストを選ぶならこれ。
加齢により商品価値がなくなった落ち目のスターが危険な若返りに手を出す、それには代償があって…という話だったら斬新さないなあと思っていたが、いざ見たらさらにその先へ突き抜けるとんでもない映画だった。
若返りではなく分身だから人格が異なる。だから分身は本体を犠牲にしても構わないと考えられる。一方で本体の方は上位互換である分身に嫉妬し、自分には価値がないと思い込み追い詰められていく。上位存在への嫉妬と絶望はルッキズムの話であるとともに他人のキラキラが誇示されるSNS社会の話でもあるのだろう。
老婆になったあとで50歳の若さに気づいて接種を後悔するのかと思いきや、そんな退屈な教訓物語にはならない。終盤は怒涛の展開。あのビジュアルを子供の頃に見たらトラウマになりそう。写真を顔に貼り付ける発想がやばすぎる。大晦日のショウの登場シーンはひどすぎて笑いが出た。
デミ・ムーア、久々に見られて嬉しかったけど、よくこの映画に出る気になったなあと感心。
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海がきこえる
リバイバル上映だけど初見なので入れた。
名作と聞いていたが実際よかった。 甘酸っぱい青春。
ただ、ヒロインの性格がキツすぎる。一歩間違うと不快なだけのキャラになっただろう。何ヶ所か、なんだこいつ? と思った。気が強いとかいうレベルじゃねえ、出会う奴すべてに噛みつく狂犬じゃん。男を黙らせるために生理を持ち出したりするところがまた…。個人的には絶対関わりたくないタイプ。
主人公が親友に遠慮していたところがいい。若い時期だからこその友情の尊さ。
主人公とヒロインはお互いをいつから意識するようになったんだろう? 東京へ行ってから? そのあたりは読み取れなかった。
主人公がヒロインに元彼だかを見せつけられて、嫉妬するどころか逆に、この女は東京でこんなつまらねえ男とつるんでたのか、と急速に冷めていくのは面白かった。
ラスト近くの、同窓会帰りにライトアップされた高知城をみんなで見上げるシーンが好き。このまま再会せず片思いで終わってもいいんじゃないの、と思ったけどそれだと新海誠になってしまうか。
近畿地方のある場所について
中盤あたりまではアレンジしながら原作に忠実な展開、失踪した編集長の所へ行くあたりから映画オリジナルな展開になっていく。ましらさま? は白石監督っぽい造形。
終盤はちょっと勢いが落ちた印象。原作知らないと石の話になってしまい、女と了が何だったのかわからなさそう。
モキュメンタリー的な映像はどれもクオリティ高かった。ニコ生の首吊り屋敷凸と見たら死ぬ動画は怖かった。まさるさまのアニメは見入った。
ふだんガラガラな映画館なのに50人くらい入っていた。若い女の子グループもいたりしてホラーブーム来てるんだなあと感じた。
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秒速5センチメートル
かつて原作を見て種子島まで「巡礼」したくらいの原作ファン。今はかつてほど思い入れはないけど。当時は不器用な貴樹が他人に思えなかった。 君の名は。以前の新海誠監督の作風が好きだった。
怖いもの見たさな気持ちで実写版を鑑賞。しかし思っていたよりずっと満足できた。原作のマインドを踏襲しつつ独自の要素として明里の人生が丁寧に描かれる。そのオリジナル部分がとてもいい。
原作は3章に区切られているが実写版は3章の時間軸(2009年)をベースにして回想として1章、2章が描かれる。この流れがシームレスで違和感がない。構成も少し変更されており1章の別れのシーンが終盤にくる。これがとても効果的。構成に関しては原作よりいいと思う。
60分ほどの原作を倍の120分にどう引き延ばすのかと興味があった。延びた分は原作では描かれなかった貴樹と明里の日常。山崎まさよしが流れるMV的な箇所をドラマとして描いている。明里が結婚するまで何の仕事をしていたのか、原作だと掴みどころがなくて気になっていた。新宿の紀伊國屋書店で働いていたら、ばったり貴樹と出くわしていそうだが。
飲み会といい、プラネタリウムといい、出会いそうですれ違うもどかしさが楽しい。花苗の姉がこんなに丁寧に描かれたのは意外。既存のキャラクターをうまく使って物語を膨らませるのに成功している。唐突に明里の恋人が出てきたのには笑ってしまったが。
原作の予告編でタイトルが出る電車のシーン、種子島の電線越しに見える月、踏切の遮断機。他にもたくさん原作と同じカットが出てきて、ああ、現実で見るとこんな感じなんだなあ、と思った。ロケットのシーン、今思うとあんな夕方にロケット打ち上げないよな。午前中にやるもんじゃないのか。
キャストでは森七菜演じる花苗が恋する女子高生の感じが出ていてとてもよかった。応援したくなる。
総じて満足。見てよかった。俺の中の貴樹も成仏できそう。
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WEAPONS/ウェポンズ
ワーナーブラザースジャパン最後の配給洋画と聞き思い出作りで遠出して鑑賞。
バーバリアンの監督らしいひねった構成。魔術が万能で都合よすぎの感があるけど、謎解きのスリルやところどころのジャンプスケアなど楽しめた。シャイニングのオマージュシーンに笑った。ただ、128分は長い。終盤ケツが痛くなった。
ラストシーン、笑うと聞いて不思議だったけど見て納得。劇場内のあちこちから笑い声が起きた。
エディントンへようこそ
序盤は退屈で寝そうになった。コロナ禍でのマスク強制が懐かしい。3年くらい前まではあんな感じだったのにもう忘れかけてる。
主人公が市長選に出馬したあたりからだんだん面白くなる。コロナ禍、陰謀論、人種差別、カルト団体、SNSによる情報拡散など、現代アメリカの社会問題がふんだんに詰まって大渋滞。
終盤、爆発からの銃撃戦シーンは迫力あった。あそこで終わってもよかったのでは。エピローグ的な部分は蛇足に思えた。結局義母と暮らすんかい。アリ・アスターの家族観って独特な感じ。
ストーリーはかなりわかりやすい。ユーモラスなシーンもたくさんもあった。アリ・アスター作品はすべて映画館で見ているが、世間(というかネット)で話題になるほど面白いかな? と思っていたけど、この映画は面白かった。今後はこういう理不尽な味わいのサスペンスドラマの方向でいくのかな。
爆弾
冒頭から佐藤二朗の怪演に引き込まれた。取調官が交代していくのは対戦してる感があって楽しい。等々力、清宮、類家それぞれキャラが立ってる。ただ類家はなあ…あえて秩序の側に立つけど本来は闇属性、みたいなキャラ設定が若干なろう的なチートに思えて微妙。
警察の上層部は、自分は事務室から偉そうに命令するだけで、取り調べも解決も責任さえも現場の清宮に押し付けていて、組織ってほんとこんなだよなーと思った。警察官も所詮リーマン。中間管理職の清宮、ストレスやばそう。
シェアハウスにたどり着き、侵入したあたりが面白さのピーク。ゴミだらけの一軒家、リビングには実験道具が散乱、へんな動画が壁に写され、ビニールカーテンが垂れ下がっている。絶対やばいとこだここ、と見ながらワクワクした。一般家庭にビニールカーテンなんてあるわけねえんだよなあ。めくれば絶対その向こうには怖い何かが待っている。案の定…。
終盤、事件の真相が明らかになるにつれボルテージは下がった。真犯人には少し白けた。巨大で異常な悪の話であってほしかったので人情話っぽくなったのは残念。スズキタゴサクは他人由来の犯行にも関わらずあんなに見事に犯人を演じるのだからただのホームレスじゃない。めちゃくちゃ頭脳明晰な、こいつもチートキャラだ。
ボディビルダー
ボディビル版ジョーカーの謳い文句どおりの内容。主人公のキャラ設定も似ている。ナルシスト、低賃金労働者、実家暮らし、父親の不在、家族の介護者、片思いの女性がいる、メンタルのカウセリングを受けている、笑顔、など。
ボディビルで体は鍛えてもメンタルが弱い。動画アップロードして非モテ臭やばいと書き込まれるのは気の毒だけど、娼婦とのやりとりとか見るとたしかにそう見られても仕方ない。緊張して勃たなかったってことでしょ? それともキスして怒られて萎えた? ステロイドの影響?
デートの場面、きつかった。コミュ障ぶりに見ているこっちがいたたまれなくなる。全然相手を見ていない。自分が興味ある筋肉のことしか話せない。手紙もそうだけどコミュニケーションが常に一方通行。父親が母親を殺したあと自殺したと初デートで話すとか、完全にやべー奴なんだよなあ。ジェシーがいかにも、自分に自信ない系男子に「俺でもいける」と思われそうな外見なのがリアル。スワロウの人だって気づかなかった。デートのあと職場で気まずくなるシーンも見たかった。
食堂での場面は大事なもの守りたいものが何もない無敵の人っぷりを発揮していた。こんなやばいメンタルの人がスーパーで働いちゃダメでしょ。接客業できるタイプじゃない。
ラスト、暴れればありきたり、暴れなければ物足りない、でどっちを選ぶにしろ退屈さは避けられない展開だと思った。結局は爺ちゃんが社会から足を踏み外すのを防ぐアンカーになってくれた。やはり人を社会に繋ぎ止めるのは自分を承認してくれる他者の存在。孤独は人を狂わせる。
2025年は映画オタクの映画に始まってボディビルオタクの映画で終わった。
インフレの波は映画にも来ている。鑑賞料金が高くなった。割引なしの一般だとMOVIXが2100円、Tジョイが2200円。TOHOが2000円なので、以前は高いと感じていたTOHOを超えた。映画一回につきアマプラ3ヶ月分以上の出費とは、映画鑑賞は贅沢な趣味になりつつある。イオンシネマやユナイテッド・シネマはイオンカード利用や会員になることで比較的まだ安く見られる。
2025年は自宅で映画配信を見ることがかなり少なかった。アマプラを解約したのもあるかもしれない*1。GEOの会員になってン十年ぶりにディスクをレンタルするようになった*2。
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配信では見られないけどディスクでは見られる映画って結構ある。北野映画、伊丹映画、ジブリ映画はその代表。見たいと思っていたレイク・マンゴーをレンタルでようやく見られた。ブレア・ウイッチ・プロジェクトと双璧をなすくらいのモキュメンタリーホラーの傑作だと思う。ちょっとツインピークスを意識しすぎな感があるが…。ブレア・ウイッチ・プロジェクトは公開当時の宣伝手法も含めて、俺にとって海外ホラー屈指の名作。
安く中古ディスクが買えたおかげでフロンティアもようやく見ることができた。これにて4大フレンチホラー制覇。全部見るのに一体何年かかったか。マーターズが頭抜けていて、あとはフロンティア、屋敷女、ハイテンションの順。
レイク・マンゴーとフロンティアを見て、見たいと思っていたホラー映画は大体見られた。残ってるのはコリアタウン殺人事件くらい。
近畿地方を見て白石監督の過去作に興味を持ち、ノロイとオカルトを見た。感銘を受けた。ノロイは日本のホラー映画で一番怖いんじゃないか。ブレア・ウイッチ・プロジェクトといい、モキュメンタリーホラーが俺に刺さる。怖さはノロイ、映画としてはオカルトの方が社会性があって面白かった。
hayasinonakanozou.hatenablog.com
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