6月は祝日がなく疲れやすいので毎年有給を取るようにしているが今年は遅くなって7月に入ってしまった。心身ともにしんどくなりかけていたので休めてよかった。GWの祝日を1日でいいから6月に回せばいいのに、と常々思っている。バランスが悪い。
先月読んだスズキナオ『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』にこんなくだりがある。
「とにかく大量の水が見たい」と思うときがある。海か、湖でも川でもいい、できるだけ大きな体積の水がある景色を目の中に収めたい。東京の池袋近くに住んでいた頃、近所には川が流れていなくて、大量の水が見たくなったときは地下鉄の有楽町線に乗って新木場駅まで行き、駅から少し歩いた先にある公園に突っ立って東京湾を眺めていた。
流れていく水が、その表面を波打たせたり、太陽の光を複雑な形に反射させたりする様子はいつまでも見飽きることがない。自分には到底力の及ばない圧倒的なものを目の当たりにすることで、心が静かに落ち着いていくように感じる。その静かな気持ちにたどり着きたくて、水を見に行くのだ。
だからそれは山でもいいし、広い草原でもたぶんいいのだが、私が住んでいた町からはなかなか簡単にそういった〝デカいもの〟を見に行くことができなかった。人間がつくった巨大なビルでは全然ダメだ。池袋の高層ビル「サンシャイン60」にはよく暇つぶしに行っていたが、その高さを下から見上げても、あの静かな気持ちはやってこない。
大量の水を眺めることからしか得られない滋養がある。せっかくの平日休み、無為に過ごすのももったいないので横浜へ海を見に行くことにした。わざわざ遠出しないと海が見られないのが海なし県在住者の哀しさ。
横浜を選んだのには理由がある。電車なら東武東上線が元町・中華街まで直通運転していること、80分ほどの距離なので*1朝起きたのが遅くても十分間に合うこと、前々から行きたいと思っていた施設があること、以上三点を考慮して決めた。
10時起床。11時出発。みなとみらい線馬車道駅到着は昼過ぎ。横浜へ来るのは2024年10月の安部公房展以来。
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改札から地上に出て赤レンガ倉庫の方へ歩く途中、橋の上から大量の水が見えた。おお〜と思わず小さな声が漏れた。ランドマークタワーやインターコンチネンタルホテルを見ると横浜へ来たなあって気になる。
ハンマーヘッド方面へ進む。平日ゆえ人出は多くない。

しばし佇み大量の水を眺める。この日は当初曇っていたがあとになって晴れてきた。念のため折り畳み傘を持ってきたが出番はなかった。

大量の水を眺めたあとはかねてより行ってみたかった海上保安資料館横浜館へ。北朝鮮の工作船が展示されている。入館無料。以下のリンク先に概要が掲載されている。

入ってすぐに展示があるが大きすぎて最初壁だと思い気づかなかった。

同じ横浜市内にあるJR鶴見線の国道駅にも戦争中の機銃掃射の弾痕が残っている。佇まいがユニークだから国道駅にも行きたいと思いつつ行かないまま何年も経過している。

生々しい。

最後は自爆したそう。しょうもな。


上の写真の右手前は扉でゴムパッキンが焼け焦げている。水漏れを防ぐのにパッキンは重要だな、と仕事柄頷く。


機銃。船内に隠しておいて使用時は甲板上に移動させるそう。パッキンといい機銃が載ってるプラパレといい仕事を思いださせる要素があり落ち着かない。

全長約30メートルなのでかなり大きい。
拉致問題をはじめとする現実の社会問題を意識せざるをえず、見学して思いのほかメンタルが疲れてしまった。
施設を出て赤レンガ倉庫の前を通り象の鼻パークを進んでいく。赤レンガ倉庫では酒イベントの設営をしていた。週末にやるのだろう。

次に来たのがここ。横浜税関資料展示室。ここも入館無料。
この施設については以下のレポートが参考になる。
館内、撮影自由だったのかな。わからなかったので撮らなかった。押収した偽ブランド品と本物を並べたコーナーがかなり面白い。全部やってみたけど俺の正解率は30%くらい。バッグは縫製が細部までしっかりしていて見分けがつかない。色味が違うから知識があれば容易に判別できるのかもしれないが。
しかし海保の施設といい税関の施設といい、どちらも現実の政治、社会問題、犯罪等の展示のため見学して疲れた。俺は社会に属する展示より歴史や芸術に属する展示の方を好む。殺伐とした現実の展示は今後控える方向でいこうと思った。知的には興味深くても感情的に疲弊してしまう。
横浜観光で行くべきは中華街でも赤レンガ倉庫でもなく『横浜税関資料展示室』 押収品展示やニセモノ見分けクイズなど、充実しすぎの展示品
本物と偽物を並べてるコーナー面白そう。ここと海上保安資料館横浜館をハシゴしたい。
2025/10/09 12:32
とりあえずかねての望みは実現した。
丹下健三設計の横浜美術館へも寄るべきだったか? いや、とても芸術鑑賞するような体力・気力は残っていなかった。
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象の鼻パークへ戻り、しばらく海を眺めた。港の黒ずんだ水だけれど、光を反射してキラキラ光るさまをぼーっと眺めていたら少し気が晴れてきた。2021年の記事に山下公園から見た海についてこう書いている。
結論を先に言うと、たしかに山下公園から海は見られたんだが、違う、これじゃない、俺は向こう岸なんてない海を、海岸から、あるいはビーチから見たかったんだ…と思ったが、同行者にそう言うと、港なのはわかってたことだろ、とピシャリ。俺が見たい海を見るなら千葉か茨城か伊豆あたりへ行かなくてはダメだった。
横浜へ行ってきた - 生存記録
まあ、わかっていたことだよな。お台場とかもそうだけど海に対して人工物が邪魔なんだと思う。もっと自然豊かな場所の大量の水の方が滋養がある。
晴れてきたせいで日差しがきつくなってきたので遅いランチをとって帰路に就くことにした。それほど空腹でもなかったので軽く食べられればいい。来た道を引き返し、横浜第二合同庁舎内の喫茶室へ。


店内にはビル・エヴァンスが流れていた。トースト2枚分のサンドイッチにドリンクが付いたセットで680円は良心的価格。思えばこの日は交通費とこの食事代以外は金を使わなかった。
今回の横浜滞在は2時間少々。再び馬車道駅から電車に乗って帰宅した。往復の移動時間の方が滞在時間より長くなった。歩数約8000歩。
横浜へは来月のお盆休みに今度は泊まりで再訪する。マリー・アントワネット展の開催時期なので混雑次第だが寄るつもり。あと一鶴で骨付き鳥をまた食べたい。
*1:所要時間だけで比較すれば仙台へ行くのと大差ない
