映画『望み』を見たが…

映画のストーリーに斬新さがあまりなく、この映画だから見られた、みたいな部分が少なかったように思う。見所は、中盤の、父親と母親で失踪した息子への想いが異なり、それが対立する場面。父親は最悪のケースをも想定している、母親はとにかく生きていて欲しい。その間で揺れる娘。彼女が車の中で、「お母さんには言えないけど」と前置きした上で本音を父親に吐露する場面はよかった。メディアによる過剰な取材、周囲からの誹謗中傷、仕事への支障などは、確かに現実その通りで、その意味でリアリティあるものなのだろうが、今更それを見せられても目新しさがなく、どうも…。隣の家の住人が、路駐したテレビ局のバンをどかせと電話してきたけど、あれはマスコミに直接言うべきでは? 隣家にあたるのは筋違いだと思う。報道陣が去った後、父親がゴミ拾いをするシーンはよかった。

 

妹は最初は結構うざいキャラだったのがだんだん事態の進展と共にシリアスになっていくのにやや釈然としないものがあり。堤真一石田ゆり子はどちらもそれぞれよかった。自宅に訪ねてきた女性刑事は棒読み過ぎで笑ってしまった。妹の塾の男子三人組も棒読み過ぎ。ああいう演技を見ると途端に映画という幻想の世界から醒めてしまう。

 

息子の失踪の真相は、イーストウッドの『チェンジリング』がより悲痛に描いていたのとほぼ同じような内容。善人は帰って来なかった、というやつ。いい子ほど親に心配をかけまいとするが、それが却って取り返しのつかない事態を招いてしまう、という刑事の発言は、実際そうなのかもしれない。息子の同級生の女の子は、冒頭の動画撮影者で重要な役なのかと思いきやそうでもなく肩透かし。結局この映画は何を言いたかったのだろう? 少年犯罪の悲惨さについて(竜雷太の、最近のガキの喧嘩は云々発言とか)? 家族の絆について? いまいち判然としなかった。