10連休最終日 阿佐ヶ谷、高円寺へ行く

12月27日から始まった年末年始の10連休も気付けば最終日。過ぎてしまえばあっという間だ。とくに年が明けてからは早かった。

 

年末は27日にちょっと出かけたらあとは30日までいろいろ家のやることがあり(実家で老親と暮らす者の義務)休んだ感ほぼなし。会社行ってる方が気楽だとすら思った。31日と1日は酒飲んでおせち食ってゆっくりした…というかだらだら過ごした。2日から大塚に1泊。4日もだらだら。Switchのスレイザスパイアをプレイしたら時間が溶けた。そして今日、最終日である。

 

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去年、春日武彦先生の『死の瞬間』というエッセイを読んだ。

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その出版記念トークイベントが本日阿佐ヶ谷であったので参加してきた。

 

南阿佐ヶ谷に東奔西走といううどん屋がある。前に誰かがXで旨いと絶賛しているのを見てから気になっていた。南阿佐ケ谷駅のすぐそばだが阿佐ヶ谷駅からでも歩いて行ける距離にある。

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店のオープンは11時半。トークイベントは12時半開場の13時スタート。オープンしてすぐに入店すればイベントに十分間に合う。そう思って寄っていくことに決めた。2025年のうどん初め。あんまり早く行ってもアレだから11時半に阿佐ヶ谷駅に着けばいい、そこからイベント会場の前を通って場所を確認してから南下すれば11時45分頃には店に着くだろう。食ってから開場時間まで時間が余るようならそのへんをぶらついて時間を潰せばいい。そう考えていた。

 

TOKYOの有名店の人気を侮っていた。予定どおり11時40分過ぎには店に着いたがすでに店外に行列。うどんは並んでまで食うもんじゃないだろ…と思いつつ、時間の余裕があるし、むしろ潰す手間が省けると思い直し、最後尾につく。10人目くらいだったか。この時間で店内は満席、外にも行列ということは1番の客は開店前から並んでたのかもしれない。

 

20分くらい待ったのち通された。

 

食券制。温かい天ぷらうどんの並をオーダー。店内はカウンターのみ11席くらいで広いとは言い難い。隣の客との距離が近い。お洒落な感じのBGMがかかっていた。

 

5分くらいで提供。ヴィジュアルきれい。例によって馬鹿舌のわたくし、出汁が何かわからない。昆布じゃない。普段口にしない出汁な気がする。この出汁のうどんつゆがめちゃ旨い。最初に一口啜ってそのまま何杯も飲んでしまった。麺は普通というかとくにインパクトなし。コシは強くない。天ぷらは半熟玉子天がよかった。結果的には大盛でも全然いけた。無料だからそうすればよかった。俺が今まで食ってきたうどん屋(そんなに多くないけど)の中でも1番旨かったかも。行列できるわけだ、と納得。

 

退店したときにはすでに12時半を回っていたので会場へ向かう。

 

会場、阿佐ヶ谷ロフトA。陰の者としてはここに入るのは勇気が要った。なんか怖そうに感じてしまった。バーって書いてあるし、ライブハウスっぽいし(もちろん行ったことないけどぼっちざろっく!で見た)、ハードル高い。しかしチケットは買ってしまっている。勇を鼓して階段を降りた。思ったとおりライブハウスっぽい内装。すでに席は8割方埋まっていた。最終的に満席になったのかな。

 

定刻に春日先生とゲストの平山夢明さんが登壇。死というテーマは深刻だけれど平山さんの軽妙な話術によって会場は終始和やかな雰囲気だった。途中休憩を挟んで2時間。始まる前は2時間もトークが持つのかなとか尿意に襲われたらどうしようとか思ったけれどどちらも杞憂に終わった。とても楽しかった。

 

以下、印象に残った話。

臨死体験は「座ろうとした椅子を後ろに引かれてそのまま転倒する感じ」「それまでは苦しいのに倒れると楽になる」、あるいは「ボートが音もなく出ていく感じ」。そういうものと言われるとそうなのかもしれないという気になる絶妙な喩え。どれも平山さんの発言。

 

来場者からの質問。「狂わないでいるためにはどうしたらいいか」

質問を聞いた瞬間、45歳独身狂う説を連想してちょっと可笑しくなった。春日先生は「孤独を避けろ」、平山さんは「日光を浴びろ」。

 

来場者からの質問。「死にたいと思ったことはあるか」

自分の限界を超えた圧を感じるとき人は死にたいと思う。自分で自分を許せなくて死にたくなる。限界を超えた圧は傷になる。でもその傷は時間の経過とともに瘡蓋になりやがて癒える。最中は大変だがいつか乗り越えられる。死んでしまったら終わり。もしかしたらその先に逆転の目があったかもしれないのにもうカードは引けない。

だから生きていた方がいい。

 

この最後の自殺に関する平山さんの発言、俺も同じように考えている。金と健康以外の問題は大抵時間が解決してくれる。解決しなくてもうやむやにして弱めてくれる。生きていると後悔の連続じゃないですか。やらなきゃよかった、あるいはやっときゃよかった。自殺も同じだと思うんですね。やってしまってからやらなきゃよかったと思うかもしれない。でも死んでるからもうやり直せない。やり直せないことってのは基本的にやらない方がいいと思います。人間は時とともに変わっていくもの。不変じゃない。死んでから考えが変わって後悔しても生き返れない。合理的に考えれば、人それぞれ事情はあるでしょうが、死ぬより生きてる方がいい場合が多いんじゃないでしょうか。

 

過去にも似たようなことを書いている。

そんなことは不可能だと承知の上で思う。(未遂ではなく)自殺してしまった人に、本当に自殺してよかったか、と聞いてみたいと。もしも死後の世界なんてものがあったとしたら、そこには自殺を後悔している自殺者が意外といるんじゃないだろうか。生きていると、自殺に限らず発作的にしてしまった行動に対して後悔するケースは往々にしてある。自殺も例外ではあるまい。後悔する可能性がある以上、そしてやってしまえば取り返しがつかない以上、自殺はするべきじゃない、というのが今の俺のスタンス。

 

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平山さんはトークが巧みで場を盛り上げるのがうまかった。春日先生は、著作を読む限りだと意地悪で偏屈な感じなのかと思いきや終始ニコニコしていて声も険がなく、そばの観客が漏らしていたが「春日先生ってかわいいね」という感じだった。

有意義な2時間だった。

 

阿佐ヶ谷での予定は終わり。隣駅は高円寺である。蟹ブックスがある。Xアカウントを見ると本日はphaさんの勤務日。せっかく遥々ここまで来たのだから寄っていくことにする。

 

ビルの階段を上がったドアの向こうがお店。新刊とZINEが一緒に並んでいる棚作り。6人くらいお客がいた。皆さん静かに棚を見ていた。俺は本に詳しくないけれども現代を見据えつつ意識高過ぎない、しかし俗に媚びてはいない、センスのいい選書。棚と棚の間に人がいるとすれ違えないので全部の棚は見られなかったけれども、そう思った。もう少し若ければ色々買っただろうけれどもうそういう歳でもないので迷った末今の自分の心境に合った本を2冊購入。そのうち1冊はphaさんの「やる気のない読書日記」。カウンター越しに、テレビや動画配信で見たあのphaさんがいることが不思議だった。俺が舞い上がっていただけか。

「『パーティーが終わって、中年が始まる』、感傷的でない諦念にカタルシスを覚えました」「文學界に寄稿された「インターネットが現実になるまで」、懐かしい気持ちで読みました、自分も同じようなことを日々感じています」…言いたいことはあれど仕事中、他のお客もいるのにいっぱい話しかけられるはずがなく、ブックカバーをかけてくれたphaさんに、「いつも読んでます」と言うのが精一杯だった(たぶん挙動不審だったと思う)。サインをお願いしたら快く応じてくれた。生で猫のイラストを描いているところを見られて感動。ありがとうございました。

 

蟹ブックスを出たあと、駅そばにあるぽえむという喫茶店がお洒落だったので寄ってケーキとコーヒーを飲んで行きたかったんだけど、蟹ブックスへ行く途中も出てきたあとも店外に待ち客がいたので諦めた。向かいにある高円寺氷川神社へお参りした。

 

氷川神社の横に、NHKドキュメント72時間でも取り上げられた日本で唯一の気象神社がある。由緒を調べると帝国陸軍が戦争中に気象予報的中を祈願して造営したものが戦後撤去を免れこちらに遷座されたとのこと。ここにもお参りした。

 

この時点でちょっと疲れていた。歩数を見ると10000歩弱だった。腹も少し減っていた。やっぱりうどん大盛にしておけばよかった*1。明日も休みなら、そしてもう少し元気なら、西荻窪まで行って鳩羽つぐの聖地(?)であるそれいゆへ行ったのだが、そこも満席で入れないかもしれず、休暇最終日だし、というわけで帰ることにした。西荻窪まで行ったらせっかく来たんだからと盛林堂書房や古書音羽館へも行って帰る時間が遅くなる可能性もあった。

 

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途中新宿に寄って用を済ませた。新宿は普段の土日と変わらぬ人出で少し歩いただけなのに一気に疲れてしまった。

 

従来、長期休暇の最終日は翌日からの勤務に備え、体を休め英気を養うとの名目で自宅にこもるケースが多かった。こもって何もしない。ベッドに寝そべってスマホいじってSNSのネガティブな投稿をだらだら見てるうちに一日が終わる。英気を養うどころか消耗している。それなら外に出て本の著者としてしか知らなかった人の話を生で聞いたり、勇気を出して憧れの人に声をかけたりした方が精神的にリフレッシュ効果があってよかったんじゃないかと思う。足は疲れたけど。

 

「外へ出る」は去年に引き続き今年もテーマ。この先インフレが続くなら何をするにもどこへ行くにも今以上に金がかかるようになる。金銭的にも体力的にもやりたいことは早いうちにやっておいた方がいい。悔いなく人生を生きるために。40代の残り3年、時間を大事にして、積極的に生きていく所存。

 

 

*1:大盛にしていたら満腹になって並にしておけばよかったと後悔する人間である、俺は