順位なし。同じ監督、同じ主演俳優にならないよう選んだ。
- ジョーズ
- エイリアン2
- セブン
- スター・ウォーズ 帝国の逆襲
- ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間
- タクシードライバー
- シャイニング
- マトリックス
- 殺人の追憶
- クローバーフィールド/HAKAISYA
ジョーズ
初めて見たのはたぶん小学生の頃。以降何度も見た。サメ映画の元祖にして金字塔。「サメ映画にはあらゆることが可能だ──ただ一つ、『ジョーズ』を超えること以外は」と言ったのは誰だっけ?
肝心のジョーズがなかなか姿を現さないのがいい。ホラーもそうだけど恐怖の対象を想像している過程が怖いのであって姿を見せてしまえばあとはアクション(戦う、逃げるなど)にならざるを得ないので、その見せ方の上手い下手はあってもそこから先はまた別のジャンルだという気がする。
個性のベクトルがそれぞれ違う中年男三人が、海上の小さい船上という逃げ場のない状況で敵と戦う。伸びたロープに体を締められたり、飛んでいく樽に衝突したり、現場あるあるな小さいハプニングがリアリティあって楽しい。
何年も前、交際している女性と一緒に見たら(彼女は初見だった)ジョーズが船をバリバリ壊していくクライマックスのシーンで爆笑したのでびっくりした。理由を聞くと「サメの作り物感がバレバレでひどい」からだそう。それがいいんじゃないか、わかってねえな。所詮どれだけ一緒に時間を過ごしたところで他人は他人、わかり合えはしないのだ。ちなみに心理学者のウィリアム・ジェイムズによると好きなものを他人に笑われると腹が立つのは、「好きなもの」はその人の人格の一部を形成しているから。つまり自分を笑われたのと同じ気分になるから腹が立つ。
続編は未見。ジャンルとしてのサメ映画ファンではないけれどサメが出てくる映画では他に『ディープ・ブルー』と『ロスト・バケーション』が面白かった。
…と熱っぽく述べておいてなんだが『激突!』で代替可能。テレビの洋画劇場で放映していた徳光和夫吹替バージョンの録画を何度も見た。
エイリアン2
大好きな映画。初めて見たのは小学校高学年。近所にレンタルビデオ店ができて父親が借りてきた最初の一本。父と弟と三人で見た。めちゃくちゃ怖かった。ビショップのやられるシーンにはトラウマ的な衝撃を受けた。先日ブルーレイで見返したが相変わらず面白かった。
大好きな映画と言っておいてなんだが同じくキャメロン監督の『ターミネーター2』で代替可能。
俺の好きなキャラクターに「戦う強い女」がある。リプリーはたぶんサラ・コナーと並んでその原型だと思う。
『エイリアン2』も『ターミネーター2』もどちらも子を想う母の愛がテーマとしてある。でも前者でリプリーが冷凍睡眠中に子供を亡くしたのちに出会う少女をまるで我が子のように必死で守り戦うのに対して、後者のサラは実の子のジョンを愛情を持って守るというより夫の遺志を継ぐ、自らの使命を全うして世界を救うことを優先しているようで(T1000がある意味ジョンを母親的にお守りしている)その違いが俺に前者を選ばせる。
エイリアンクイーンもまた目の前でリプリーに子供を殺された恨みを晴らすために仇を執拗に追跡する。『エイリアン2』は子を亡くした母同士の闘争の物語でもあるのだ。
前作の緊迫感溢れるスリラーから脳筋なアクションになってしまったと否定的に言われることもあるけれど、前作では逃げる一方だったエイリアンを宇宙海兵隊が撃ちまくってぶっ倒していくのは爽快。バスケス大好き。「バスケス、お前男に間違われたことないか?」「ないね、あんたは?」
続編は前日譚も含めどれもパッとしないのばかりだったけど現在上映中の『エイリアン:ロムルス』はかなり面白かった。シリーズで2の次に好き。
セブン
キリスト教における7つの大罪の見立て殺人事件を追う二人の刑事の物語。ミルズ刑事を演じる短髪無精髭のブラピがめちゃくちゃかっこいい。当時美容室で同じ髪型にしてもらったが無惨なことになった。素材が違いすぎる、無茶しやがって…。猟奇殺人の犯人を追っていくうちに刑事たちが心理的に追い詰められていく展開は好み。あのラストを初めて見たときの衝撃はすごかった。裕福で教育もある、指紋は10本とも削り取っている、膨大な量の日記をつけている…犯人ジョン・ドゥの造形にも痺れた。
高校時代の友だちと池袋の映画館へ見に行ったんだがどこだったか覚えていない。サンシャインだったかなあ。もう30年近くも昔のことだ。
当時は池袋の映画館であっても入替性ではなかった(あるいは入替性だったが確認がザルだった?)。俺は初見でどハマりし、エンドロールが終わっても席を立たず、もう一回見ていきたいと同行のS君に言った。そうしたらS君は嫌な顔せず付き合ってくれた。俺の生涯で数少ない親友と呼べる存在。その後進学や就職したあとも付き合いをしばらく続けていたが俺が引きこもりになって人に会うのが恥ずかしくなったのもあり、顔を会わすことがなくなり、メールもしなくなり疎遠になってしまった。俺にとって最後の友だちだった。
『セブン』の日本公開は96年。90年代は心の闇という言葉が盛んに言われた時代だったように思う。80年代の終わりに連続幼女誘拐殺人事件が起き社会を震撼させた。当時小学生だった俺が初めて事件の情報を知りたく新聞を読んだ事件でもある。あの事件とあの犯人が準備したかのように90年代はサイコサスペンス的な作品が目立つようになった。『セブン』に先立つ洋画として『羊たちの沈黙』があった。『セブン』と同時期には『コピーキャット』や『ツイン・ピークス』、『氷の微笑』もか? 日本のテレビドラマでは『ずっとあなたが好きだった』(冬彦さん!)や『沙粧妙子 最後の事件』や『ケイゾク』があった。サイコサスペンスではないけれど人間の心の問題を扱った映画としてエヴァの旧劇場版も。今思うと90年代のあの躁的な空気はなんだったんだろう? 異常だったように思えるのだがそれとも当時の俺がちょうど思春期だったから特別視してしまっているだけなのか。
この映画も『羊たちの沈黙』と代替可能…かもしれない。いやどうだろう?
スター・ウォーズ 帝国の逆襲
10代の俺がもっとも繰り返し見た映画。シリーズに思い入れはない。でもシリーズ中この映画だけは何度も見た。ルークの修行、ハン・ソロの石化、ベイダーとの対決、「私はお前の父だ」「嘘だ!」、右手の喪失。R2-D2とC-3POは最高のコンビ。チューバッカやジャバザハットやイウォークなどスター・ウォーズには人間とは異なる外見の宇宙人がいっぱい出てくる。そのカオスな世界観が、やはり10代で夢中になったSaGaシリーズと共通するものがあり好きだった。
俺の中ではもうとっくにスター・ウォーズはオワコン。せいぜいアナキン三部作までで十分。エピソード7以降は見られたもんじゃない…が、公開当時は789が公開されるたび大晦日にレイトショーで見にいく、ということを儀式のようにやっていた。映画館を出た帰りの車中で元日を迎えた。
「フォースを身につけたようだな、スカイウォーカー」の声に振り向くルーク。ダースベイダーが立っている。「だがまだジェダイではない」からのライトセイバー戦。傘をライトセイバーに見立てて友だちと学校帰りにチャンバラやったりしたなあ。アバンストラッシュとかダイの大冒険的遊びもやった。
ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間
『ツイン・ピークス』、当時めちゃくちゃハマった。でもエヴァもそうだったんだけどレンタルショップへ行っても借り出されていることが多くてもどかしかった。シーズン1までは話についていけたけどシーズン2以降、ボブが出てくるあたりからだんだんついていけなくなった。ラストは意味不明。でもまさかあれから25年経って、本当にローラの言ったとおり続編が作られるなんて未来は何が起きるかわからないものだ。ローラもドナもオードリーも綺麗だったけど俺の推しはシェリー。缶コーヒーのCMやってたなあ。
デヴィッド・リンチが好きな時期があった。あのシュールで不条理でユーモラスな世界観がクセになった。都会じゃなく地方が舞台になることが多いのもなんかよかった。
この映画はドラマの発端にして事件の真相、ローラが殺されるまでの話なので描かれるのは彼女の日常シーンがほとんど。クーパー捜査官はほぼ出てこない。なので退屈。ドラマを見ていないと途中で脱落しそう。この映画のクライマックスはローラが廃列車の中で殺されるシーン。二人の被害者が恐怖の叫びと命乞いをするなか、突如静寂が訪れ天使が現れる。そして明滅する光に浮かび上がるローラの顔。恐怖と苦痛に歪む顔。悪夢のような恐ろしさ。
『ツイン・ピークス』も90年代のサイコサスペンスブームの流れに含まれる作品。今プライムビデオで見放題配信しているので懐かしくなって見返している。車の運転中はサントラをかけている。さすがに運転しながらスマホ片手にダイアン…と喋ったりはしていない。オリジナルシリーズでは名前だけだったダイアンは新章で遂に登場する。演じるのはローラ・ダーン。
タクシードライバー
高校生くらいの頃にレンタルで見たのかな。忘れた。
トラヴィスは『罪と罰』のラスコーリニコフと並んで俺の中でヒーローの原型。いやこんな男たちをヒーローとして見てはいけないのかもしれないけど、自分の正義や理屈のためなら法を冒しても実行する行動力の持ち主として眩しかった。元総理銃撃事件の犯人に対して俺が全否定できないのも彼らを是とするような考えがあるせいかもしれない。
武器を買うシーン、買った武器を改造するシーン、筋トレするシーン、鏡に向かって当日の「予行演習」するシーンが大好き。
シビル・シェパードが美しすぎて見ていて動悸がする。ジョディ・フォスターが少女なのに時間の流れを感じる。いや、今や『レオン』のマチルダももう40代なのだ。俺もあと何年かで50歳! 恐ろしい。中学生の頃からまったく成長していない気がする。
シャイニング
これも高校生くらいで見たんだと思う。キューブリックの名前は赤川次郎の『三毛猫ホームズの映画館』という映画エッセイで知った。この本が俺の読んだ最初の映画エッセイ、映画評論の本。キューブリックは『2001年宇宙の旅』も『時計じかけのオレンジ』も『フルメタル・ジャケット』もどれもすごかった。でも一本選ぶならこれ。
冒頭の流れるような空撮から始まって最初から最後まで画面を見ているだけで気持ちいい。坊やの漕ぐ三輪車を追っていくシーンといいカメラの魔力を感じる。三輪車が角を曲がった先に突然現れる二人の少女。彼女たちが真っ赤になって横たわるヴィジョン。入ってはいけない部屋のバスタブから伸びる手、着ぐるみ男と燕尾服の男がしていた行為を中断してベッドからこちらを見つめるあの顔、どれも気持ち悪くどれも怖い。奥さんの脅えた表情に見ているこっちまで不安になる。実際、撮影中のキューブリックは彼女にストレスを与え続けていたとか。あの恐怖の表情は半ば本物だったのかもしれない。斧を持った男に非力な女と子供で立ち向かえるわけなく逃げるしかない。迷路のあとの脱出は結末がわかっていても追いつかれるんじゃないかと見るたびヒヤヒヤする。
なお続編の『ドクター・スリープ』はゴミだった。
マトリックス
三部作(レザレクションズは除く)だけど無印がいちばんいい。無印だけでいいとすら思える。
この映画の映像の斬新さを公開から25年が経つ今言ってもしようがない。今の目で見ればバレットタイムもワイヤーアクションもしょぼいかもしれない。いや、でもモーフィアスを助けるためにネオがヘリからガトリングガンを撃ちまくるシーンで薬莢が落ちていくところは今見ても感動的かもしれない。少なくとも俺はそう。
無印だけ公開時に映画館で見ていない(数年前にリバイバル上映でようやく見た)。リローデッドとレボリューションズは『セブン』を一緒に見にいったS君と映画館で見た。見てもさっぱり内容は理解できず、ただアクションに感心しているだけだった。ストーリー、難しい。でも何年か前に見直したときネットで解説をいろいろ読んで「なるほど、そーゆーことね、完全に理解した」状態になった。今はもう忘れている。
レッドピルとブルーピル、俺がアンダーソンだったらどっちを飲むだろう。
殺人の追憶
2000年頃、『シュリ』や『JSA』が日本で公開されて韓国映画すげえ的な声を聞くようになった。今は忘れられてるっぽいけど『カル』って怖い映画もあった。日本に輸入されるのは上澄みだからかもしれないが、当時から現在に至るまで面白い韓国映画が多数あるのは間違いない。その成果が『パラサイト』だろう。
同じ監督が撮った『殺人の追憶』が俺が初めて見た韓国映画だと思う。見始めたらいきなりセックスシーンでびっくりした。昔の田舎の警察のモラルの低さに何度も苦笑した。猟奇殺人の話なんだからシリアスになりそうなのに常にユルい不思議な世界。「ナイキじゃなくてナイスだ」。
『パラサイト』を見たあとだと『殺人の追憶』は見ていてだるくなる。2020年に新宿のシネマートで見ていたら途中退屈を覚えた。映画館で見ているのに退屈するなんて! それほどまでに『パラサイト』はスマートに作られている。洗練されている。でも『殺人の追憶』には『パラサイト』にない勢いがあるように思う。洗練されていないからこその荒々しいパワー。殺人者が女性を襲撃するいくつかのシーンの怖さといったら。そしてあのラスト。元刑事と少女のやりとり。「どんな顔だった?」「なんていうか普通の顔」。真っ直ぐにこちらを見つめる目。映画のモデルである華城連続殺人事件の犯人が特定されたのは時効成立後の2019年だった。彼は獄中でこの映画を見たと発言している。
クローバーフィールド/HAKAISYA
POV形式の映画が好き。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と迷ったけど(あっちはあっちで当時身近になりつつあったインターネットを利用して実際の事件風に演出した宣伝の斬新さが印象深い)公開当時映画館で見ているのでこっちにする。
当時の俺は転職したばかりで、その会社で初めて週休2日と社会保険加入の身になれた。お盆や年末年始の休暇はなかったけれどそれまでは週休1日、社会保険未加入が当たり前だったのでえらく高待遇な気がして嬉しかった。その会社も3年ほどで辞めてしまったが。
もしかしたら初めて一人映画鑑賞をした映画かもしれない。映画は大抵S君と見に行っていたが再就職前に俺が引きこもったので疎遠になっていた。だから一緒に行く相手がいなくて一人で行ったような気がする。もう何年も前から、俺の中で映画は「基本的に一人で見にいくもの」になってしまったが、当時は一人で行くのに結構勇気が要った。「一人で来て変に思われてないかな」と。気にしすぎである。スタッフも他の客も俺なんぞに関心を持つわけないのに。この映画館は今も健在で変わらず利用している。俺が人生で一番通っている映画館だ。
POVのよさって臨場感にある。あと、肝心のところがフレームの外だったりボケたりして映らない、その断片的な情報を組み立てて理解していくパズル的な楽しさもある。この映画は災害が起きるまでは男女のだらだらした会話がひたすら続いて退屈なんだけど、いざ起きたあとは迫力があってすごい。自由の女神の頭部がぶっ飛んでくるシーンは鳥肌が立った。最後の最後になるまで敵の正体は目視できない。目視できたと思ったらそんなオチかい、という。
続編の『10クローバーフィールド・レーン』は、趣向は変わったけれど心理劇として楽しく見た。
以上、小学生の頃から31歳までに見た映画を挙げた。『タクシードライバー』ではなく『サスペリア』を入れようか迷ったが(『サスペリア』にも思い入れがある)、こないだ久々に配信で見返したら途中で寝てしまったので外した。
オールタイムベストと言いつつ代替可能だったり、もっと面白かった映画もあるんだけど、自分の人生との関わりという条件で選ぶとこんな感じ。一般的に感受性が豊かな20代くらいまでに見た映画がその人の人生に強い影響を与えるのではないかと思う。それが「オールタイムベスト」の定義に適うかどうかはともかく。40代後半の今も映画を見て時間を忘れたり叫びたいほどの興奮を覚えたりすることはあるけれども、映画を見たことによって考え方や趣味嗜好が変わったりトラウマ的な記憶が残ることはもうない。それは映画に限らず小説を読んでも同じ。20歳で読んだ『カラマーゾフの兄弟』を超える小説との衝撃的な出会いは死ぬまでないだろう。
hayasinonakanozou.hatenablog.com
作品としての面白さや感動を基準にしていない。そもそも不可能だ、『ミツバチのささやき』と『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のどっちがいい映画かなんて、誰にジャッジできる? 比較するだけ不毛、最後は世界観の衝突になるしかない。世界観の衝突に正解はない。戦争があるばかりだ。戦争はやめようじゃないの。
自分で挙げといてこう言うのはおかしいがSF映画が複数選ばれているのがかなり意外。俺はSF者では全然ないので。刑事ものが選ばれているのは納得できる。俺のもっとも好きなジャンルだから。
邦画オールタイムベストも選びたいけど難しい。俺は邦画をろくに見てこなかったので。とくに若い頃、俺にとって映画とはテレビの洋画劇場で見るものだった。週末に、あるいは深夜に。