一泊二日で銚子へ行ってきた。銚子へ行くのは初めて。千葉には行ってみたい場所がいくつかあるのだが埼玉からだとアクセスが不便なため行けていない。
土曜朝9時出発、圏央道経由で最初の目的地である一山いけすに昼過ぎ到着。広い駐車場に車を停めて降りたとたん、目の前の海から磯の香りが強烈に鼻をつく。海だ、と実感する。猛烈な日差しと暑さ。夏だ、と実感する。まだ一応6月なのに。
混んでいたので20分ほど待たされた。店内には店名のとおり大きないけすがあってユニーク。鉄火丼と焼牡蠣をオーダー。忙しいらしく提供に時間がかかった。食べてみると魚介はもちろんだが米が旨く感じた。牡蠣、俺は生より加熱調理されてる方が好き。安心感がある。
地球の丸く見える丘展望館へ向かう。紫陽花がたくさん植えられていてちょうど見頃だったのは予期しなかった収穫だった。
展望台からの眺望。
館内、アマガミの展示が目についた。タイトルだけは聞いたことがあるが内容は知らない。銚子はゆかりの土地らしい。なぜUFO? と思いあとで調べると銚子はUFOの目撃情報が多いんだとか。スタンプカードがあったので何も考えずに押す。
展望館を出る。犬吠埼灯台へ向かう途中にあった満願寺に寄ってお参り。
犬吠埼灯台。大勢の人で賑わっていた。99段の階段を上る必要があるので入るのはやめておいた。体調万全ならともかく長時間の運転と日差しと暑さでだいぶ疲れていた。
東映映画のオープニングで流れる荒磯に波が砕けるシーンはこの灯台下で撮られた。失念していたので当該場所の写真はない。近いイメージのが一枚だけ。
灯台のすぐそばにある絶景の宿犬吠埼ホテルにチェックイン。広縁のある和洋室。広縁はいい。温泉に入って汗を流す。露天風呂からは君ヶ浜がよく見えた。眠くなったので夕食まで少し横になった。
夕食はコース。各品が少量ずつ、だが食べているうちに腹が膨れていく。胃が強くない独身中年、量が食べられない。切ない。二人だったので気が大きくなってレモンサワーを頼んだ。一人旅のときと違い体調がおかしくなることはなかった。が、ソフトドリンクでもよかった、とあとで思った。あえて酒を飲む理由がない。
食後、部屋に戻るとすぐに猛烈な睡魔に襲われ、深夜2時過ぎまで爆睡。海からの日の出がみたく、4時頃支度を整え、車を出し、ホテルから目と鼻の先の君ヶ浜へ。ここは本州で一番早く日の出が見られるスポット。到着するとすでに先客が何人もいた。三脚構えた人も数人。この日の日の出予想時刻は4時24分。
日の出が近づくにつれ徐々に空がグレー→ピンク→オレンジへと染まっていく。思えば俺は本当の日の出を見たことがない。本当の、というのは海から今まさに昇ってくる瞬間の太陽のことで、埼玉には海がないから日の出が見られる海まで移動してさらに早朝にその場に居合わせなくてはならないわけで、それをやる機会が47年間の人生になかった。この歳になって初の日の出鑑賞体験である*1。地球にとっても太陽にとっても、人類が冬のある一日を元日として設定し一年のリセット日としたことなど無関係である。暦があろうがなかろうが天体は運行する。元日の日の出だからいっちょ頑張って綺麗なのを見せてやるか、なんてことは起きない。この日の日の出も元日の日の出も同じ日の出。そう考えれば6月29日の日の出を初日の出と俺が思い込もうと自由なのではないだろうか。そう思おう。この日君ヶ浜で、俺は人生で初めて初日の出を拝んだ。初・日の出。
念願の日の出を拝んだあとはその足で銚子電鉄の外川駅へ。レトロ感溢れる駅舎の写真を人がいないうちに撮っておきたかった。趣深い。素晴らしい。
外川駅からすぐの場所にある長九郎稲荷神社へも行くつもりだったがすっかり忘れていてホテルへ戻ってしまった。朝風呂に入り、朝食までの間、一日のプランを同行者と練る。
朝食はバイキング。かなり充実したメニュー。あれもこれもと欲を出して取ってしまう。食いまくって満腹。
この日の予定は、昨日地球の丸く見える丘展望館でなんとなく押したスタンプラリー(EeeE銚子 運気上昇の旅スタンプラリー)が5箇所を制覇するとグッズが貰えるそうなのでこれをやって、そのあと帰り道の途中にある成田山新勝寺へ寄って帰る、に決まる。
スタンプラリーの5箇所は地球の丸く見える丘展望館、犬吠テラステラス、飯沼観音、犬吠駅、銚子駅。このうち最初の二つはすでに押印済み。車で回った方が効率がよさそうだが、「崖っぷちライン」である銚子電鉄を応援したい気持ちがあり、あえて電車で回ることにした。
ホテルをチェックアウトし、最寄りの犬吠駅へ。車を停め、Suicaは使えないので一日乗車券を購入。三つめのスタンプを押す。犬吠駅は銚子電鉄のお土産が買えるほか、撮影用映えスポットや岩下の新生姜ミュージアム別館や写真展示やジオラマなどがあって楽しい。
電車は線路際に生えた木の枝を擦りながら走行する。窓の外にはトウモロコシ畑。ローカル感に和む。宣伝費として回収しているのか、各駅に妙な駅名表示あり。
観音駅で下車、飯沼観音へ。
午前中なのに暑さと日差しがやばかった。観音駅周辺は住宅街で、店はシャッターが下りていて眠ったような町。人の姿はほとんどなく車だけが走っている。本堂で四つめのスタンプを押す。一服できるような店が見当たらず、早めに駅に戻り、自販機でドリンクを購入してベンチで休んで電車を待った。
次の目的地は銚子駅だったが一つ手前の仲ノ町駅で下車。ここもレトロな駅舎なので写真を撮りたかった。降りるとすぐにヤマサの醤油工場。かなりの広さ。醤油か原料が入っているのだろうタンクがたくさん並んでいた。
仲ノ町駅から銚子駅までは650メートルなので徒歩で向かう。
銚子駅へ到着。駅舎に表示されているJRの緑の文字を見て見知った場所に帰ってきたような安堵を覚える。駅前とはいえたくさん店がある感じではない。いや、あったのかもしれないが暑さで探す気になれなかった。犬吠駅へ戻る電車まで50分。待っている間座って一服したく、待合室という喫茶店に入る。入るなりタバコの臭い。喫煙可の店らしいが、入れ違いで喫煙していた客は出て行き、あとは誰も吸わなかったのでよかった。やはり近くにお茶ができる店はないらしく、店内は満席、入店したものの諦めて出ていく客が数人。自分たちは運がよかった。アイスコーヒーを飲んで体力を回復させる。
銚子駅で最後のスタンプを押し、ミッションコンプリート。Xで調べたところマグやエコバッグなどが貰えるみたいなので期待していたが…残念ながらすでにグッズは頒布終了しており巾着をいただく。グッズが終了したならキャンペーンもやめるべきでは…とちらと思ったが、銚子電鉄へのお布施だと思い直した。何かと窮屈な今の世の中、これくらいのユルさでちょうどいいのかもしれない。
犬吠駅へ戻り、お土産にぬれ煎餅とまずい棒チーズ味10本を購入。まずい棒チーズ味はまんまカール。関東では食べられなくなった貴重な味。全然まずくないどころか旨い。車に戻って出発。ナビによると新勝寺まで下道で60kmほど。
道中スムーズに走れた。途中で成田空港のすぐ横を通過。こちら方面へは来る機会がまったくないので新鮮なドライブ。仙台から石巻へ行ったときと違い勝手知ったる自分の車だから知らない土地を走るにしてもストレスは少ない。朝食をたらふく食べたので昼食は抜く。というか俺は犬吠駅を出てからずっと胃のあたりがムカムカして気持ち悪かった。じじいだなあ。胃薬を持ってこなかったことを後悔。
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JR成田駅を出たあたりから長い参道に入る。立ち並ぶ店々には活気がある。参拝客も多く観光地として賑わっている。適当なコインパーキングに駐車し目的地へ向けて歩き出す。
しばらく歩くと到着。
初めて来たけれどここはすごかった。仁王門を潜り石段を昇って大本堂を見た瞬間、「すげえ」と思わず声が出た。広く開けた空間に佇む白と茶と薄い緑の大本堂の荘厳さ。「すげえ」と言ったきり言葉を失ってしばし立ち尽くした。陳腐な形容、その発語を禁じる厳粛な沈黙を纏っているかのような圧倒的な存在感。これまでたくさん神社仏閣を見てきたけれども、その場に建築物がただ在るだけで圧倒されるような経験は成田山新勝寺大本堂のほかには記憶にない。すでに15時を過ぎていたので内部の観覧は終わってしまっていたのがとても残念。中に入ってみたかった。
歴史、デザイン、スケール感。ここほど敷地が広い神社仏閣は日本にもそうそうないのではないか。その広い敷地内にたくさんのお堂や塔が建っている。こんなにすごい場所と思っていなかったので到着が遅くなってしまったのが悔やまれる。一つ一つ見学していたら半日くらい余裕で過ごせそう。
お参りを済ませ来た道を引き返す。新勝寺が閉まるのに合わせているのか、参道の店のいくつかも店じまいを始めていた。暑さで着ていたシャツが汗だくだったので、涼みたく、甘味処に入り、白玉あんみつを注文。同行者はわらび餅と抹茶。食べながら、ここから100km以上運転か、だるいな、旅行はいいが運転はだるい、などと考える。
店が17時までだったので少し前に出て、お土産を買い、車に乗る。終わってしまうと一泊二日なんてあっという間だった。せっかく温泉に入って体の強張りをほぐしたのに、帰りの圏央道の運転で首と背中が硬くなり、元の木阿弥。まったく、行きたい場所ややりたいことや調べたいことが人生には多すぎて、労働なんてやってるほど暇じゃないのに、生きていくために稼ぐ必要から働かねばならないのがただただつらい。
今回の旅行はなかなか充実していた。事前のリサーチをしっかりやってプランを立てておいたのが奏功したのだろう。やはり事前リサーチは大事だ。ぶっつけ本番では厳しい。何より、銚子が適度にローカルで、見どころの多いいい土地で、けれども人は多過ぎず、快適に過ごせたのが充実感につながっている。来た甲斐があった。
写真を撮るとき、老眼のためファインダーで合わせられないのでモニタで設定を確認しているのだが、だんだんモニタも見づらくなってきている。加齢とともにできることは減っていく。長時間の車の運転もだいぶ消耗するようになった(長時間運転をするたびに顔が老けていくような気がする)。40代、まだ体が動くうちに行きたいところへできるだけ行っておきたい。性欲も食欲も物欲も衰えていく今、かろうじて残っているのは美しいものや珍しいものを見たいという欲望と何か表現をしたいという欲望だ。それがある限りは旅行やカメラ趣味は続けられるものと思うが、それもいつまで可能かはわからない。できることはできるうちにやっておく。悔いの少ない人生のために。
*1:毎年元旦は起きるのが遅いのと寒い中出かけるのが嫌いなので人生で一度も初日の出を拝んだこともない