夏季休暇中に見た映画3本 『ミンナのウタ』『ヴァチカンのエクソシスト』『イノセンツ』感想

『ミンナのウタ』

『リング』と『呪怨』を足して薄めたような感じ。GENERATIONSのメンバーが本人役で出演して怪異に巻き込まれる。実質的な主人公は失踪したメンバーを探す探偵役のマキタスポーツ。汚ならしい中年の役がハマっていた。始まってすぐにGENERATIONSのメンバー紹介があったり歌が字幕付きで流れたりとプロモーション映画っぽいものの、むしろその先入観を逆手に取るかのように中盤以降は真っ当なホラーになる。今は廃屋となった家の佇まいの不気味さ、誘うように姿を消す少年の亡霊(?)、そして初めて中に入ったときに起きる異常現象…ここでのリピートはめちゃくちゃ怖かった。ありえない異常さも怖いし演じる女優の風貌もまたいい味を出していて…。ホラーとしてはここがピークで怪異の元凶であるさなが実際に登場するとそのビジュアルはむしろギャグのよう。掃除機のコードをあんなになるまで引っ張るってのもコントみたい。お化けは出てくるまでが一番怖い。出てきてしまえばあとは戦うか逃げるか和解するかしかない。

 

『ヴァチカンのエクソシスト

『ミンナのウタ』が肝心のお化けをなかなか登場させず影だったり姿の一部だけだったりを映してじわじわと恐怖を盛り上げていくのに対して、こっちは思いっきり悪魔をバーン! と登場させて、会話もして、と直接的(?)なホラー描写で対照的。ジャンルとしてはホラーなのだろうが爆発があったり悪魔憑きの人間が大暴れしたり悪魔祓いが派手だったりでアクション映画を見ているかのよう。教会関係者とのやりとりが多少だるいものの基本的にはテンポが良く最後まで飽きずに見られる。二人が協力してのラストバトルは盛り上がる。大きい体で窮屈そうに司祭服を着ていたりそれでベスパ乗ったりとラッセル・クロウのビジュアルがいい。

 

『イノセンツ』

北欧ホラー。夏休み、団地の子供たちが超能力に目覚める。子供は無垢である、ゆえに残酷である、そのことを示すシーンが印象的。冒頭でのミミズの踏みつけや猫への虐待(かなり残酷な描写なので猫好きの人は注意した方がいい。俺の横で見ていた女性は当該シーンで声を出して顔を背けていた)など。俺自身、もううっすらとしか覚えていないけれど小さい頃は面白半分に虫を殺したりしていたような記憶がある。子供なんてそんなもんだろう。善悪を知らない子供が超パワーを手に入れたら…。そしてその子供の家庭が問題を抱えていたら…。怖い。念力よりも人を操る超能力が手強い。自らは手を汚さずに気に入らない人間を次々排除していく。仲違いしてしまえば友だち相手でも容赦なく殺しにくる。そんな悪を体現する少年と対抗する自閉症の少女。主人公である少女の妹は超能力を持っておらず傍観するのみ。しかし土壇場で覚醒、姉妹二人が協力して戦いに勝利する展開はアツい。白昼の団地内でサイキックバトルが起きているのにあまりに静かな戦いだから周囲の大人たちは異変にまったく気づかない、赤ん坊や犬だけが本能的に異常を感じて泣いたり吠えたりするのみなのが面白い。ベランダに出てきて「観戦」していた子供たちはあるいは彼らも覚醒したのかもしれない。戦いは母親が買い物に言ってる間に始まり、終わる。この映画はかなりよかった。少し遠い映画館までわざわざ見に行ったのだが*1それだけの価値があった。

 

 

*1:時間に余裕のある休暇中でなかったら行かなかったと思う