人間が一日に使える時間は24時間。とすれば、16冊を読んだ11月は3冊しか読まなかった10月よりも読書に時間を割いたことになる(同じ本を読んでいるのではないから単純に比較できないが便宜上そう仮定する)。従来、俺が一日のうち多くの時間を費やしていたのはスマホ/パソコンでのインターネット閲覧だ。11月はこれまでインターネットを見ていた時間を意識的に読書にあてるようにした。
たとえば、俺のインターネット閲覧のメインサイトの一つであるはてなブックマーク。
すぐれたキュレーションサイトとしてつい次から次へと見てしまう。
このサイトを見て最近の自分がブックマークした数と読んだ本の冊数の相関を調べると、
8月 ブックマーク数43 読んだ本8
9月 ブックマーク数29 読んだ本5
10月 ブックマーク数22 読んだ本3
11月 ブックマーク数22 読んだ本16
だった。
9月の半ばから10月の半ばにかけての1ヶ月間は余暇の多くをホロウナイト:シルクソングに費やしたのでブックマーク数と読んだ本、両方とも8月より少ない。
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インターネットに費やす時間は徐々に減り、代わりにゲームや読書をする時間が増えている。実際、意識してインターネットから離れるようにしている。今更、そして何度目だよって感じだが、今のインターネット、とくにSNSは楽しさより負の感情を刺激されることの方が多い。メンタル的に悪影響。ただでさえ冬は寒さと日照時間が短いせいで気が滅入る。気分が下がるようなものは極力避けて暮らすべき。
政治といい経済といい事件といい、社会のニュースに関心を向けなくなると、いいか悪いかは別として平穏な気分で日々を送れる。はてブでエントリのタイトルを流し見るだけでも、今世の中で何が起きているか、何が話題かくらいはわかるし、最低限その程度の知識があれば問題なく社会人生活を送れる。
会社では仕事をし、余暇は本を読んで過ごすというシンプルな生活。似非隠者。
インターネットはどれだけやらなくてもやらなすぎるということはない。
本はどれだけ読んでも読みすぎるということはない*1。
最近、ホラー小説を100冊読むチャレンジに取り組んでいる。
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12/3現在、現代ホラー小説を知るための100冊のうち38冊を読了(途中で挫折したものも含む)。集中的に読んでみて、現代日本のホラー小説ってこんなに豊かだったのか、と感銘を受けている。語りの技法だったり、メタ的な視点だったり、SF的要素を用いたり、ホラーの意味について問うてみたり、挑戦的な試みで書かれた小説がたくさんあって面白い。
ホラー小説は恐怖を物語の軸とする。その恐怖とは基本的に怪異によってもたらされる。巻き込まれた登場人物たちは怪異の原因を突き止め解決しようと奮闘する。そのプロセスが、いわば事件の犯人を追う探偵や刑事のようで、ホラーにはミステリ的な面が多分にあるな、という気づきを得た。犯人は誰か(原因は何か)という好奇心がページを繰る原動力になる。だからこそ続きが気になって一気に読んでしまうし、面白いホラー小説が多かったからこそ11月は16冊を読了できた。エンタメの読書とはいえ、働きながらこの数は読めた方ではないだろうか。
以下、11月に読んだ本の簡単な感想。一応ネタバレにならないよう注意しているつもり。
- 京都新聞取材班『自分は「底辺の人間」です 京都アニメーション放火殺人事件』
- 三津田信三『厭魅の如き憑くもの』
- 名梁和泉『二階の王』
- 澤村伊智『ぼぎわんが、来る』
- 滝川さり『お孵り』
- 菊地秀行『幽剣抄』
- 森山東『お見世出し』
- 赤川次郎『怪談人恋坂』
- 朝松健『邪神帝国』
- 岩城裕明『呪いのカルテ』
- 平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』
- 倉阪鬼一郎『ブラッド』
- 辻村深月『闇祓』
- 新名智『虚魚』
- 斜線堂有紀『本の背骨が最後に残る』
- 冲方丁『骨灰』
京都新聞取材班『自分は「底辺の人間」です 京都アニメーション放火殺人事件』
事件を起こした犯人は統合失調症を病んでおり、そのせいで問題行動を起こしてしまい、周囲から見放されさらに孤独になる…という悪循環に陥っていた。事件前も死刑判決後も現実と妄想の区別がついていないらしく、いまだに「応募した小説を京アニにパクられた」と思っている。京アニ事件以前に前科二犯。いわゆる「無敵の人」だった。
「人とのつながりがなくなったとき、犯罪行為に走る」
「この年になって思うのですが、叱ってくれる人は大切だな、と思います」
犯人自身がそう述べている。人間関係の大切さ。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、そんなふうになってほしくないのに、特別な作品になってしまった。
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三津田信三『厭魅の如き憑くもの』
因習村ホラーでありミステリ。分厚いが面白くて三夜で読了した。
複数の視点人物の語りで物語は進行する。
血縁関係がかなり複雑、かつ同じ読みで漢字違いの人物がいる。結局覚えきれなかったが支障なく最後まで読めた。
名梁和泉『二階の王』
タイトルがいい。表紙もいい。面白くて一晩で読了した。
自宅の二階に引きこもり、何年も家族の前に姿を見せない兄に悩む妹の話と、世界に破滅をもたらす「悪因」を探索する悪因研の話が交互に展開しながらやがて合流する。
引きこもりを抱える家族の葛藤と世界を救う戦いという、ミクロとマクロの物語が同時進行するのが面白い。
元引きこもりの一人として、この小説の引きこもりに対する目線の優しさが嬉しかった。
澤村伊智『ぼぎわんが、来る』
映画『来る』公開時に読んで以来の再読。そこまででは…とそのときは思って、今回の再読でもそうだった。
化け物の怖さ、人間の嫌らしさ、霊能バトルの派手さ、キャラ立ち、どれも映画の方が上回っている。
怪異の民俗学的な由来については小説の方が詳しい。
滝川さり『お孵り』
因習村ホラー。
設定にやや無理があるがテンポがいいので飽きずに読めた。
終盤は怒涛の展開。
菊地秀行『幽剣抄』
長めの短編と掌編が交互に収録されている。
ホラー小説というよりはホラーで味付けされた時代小説という感じ。怖くはない。侍が怪異とチャンバラする話が多い。
時代小説、たぶん初めて読んだ。徹底した身分社会、上からの命令は絶対、失態の償いは死、という武士の世界は現代サラリーマンの日常を先鋭化したもののように思えて少し親近感を持った。
森山東『お見世出し』
短編二つと中編一つを収録。どれも京都が舞台、一人称話者の京言葉による語り。
花街が舞台の「お見世出し」と「お化け」、どちらも怖くはない。一転して「呪扇」は凄絶。ほどよいエロさとスプラッタが一体となり、そこに芥川の「地獄変」めいた職人の狂気が絡み合う。
赤川次郎『怪談人恋坂』
何十年ぶりかで赤川次郎を読んだ。展開がスピーディで一晩で読み終えるくらいには面白かった。が、怖さはあまりない。
瀬名秀明の赤川次郎リスペクトに溢れた解説は読み応えあり。
朝松健『邪神帝国』
ナチスとクトゥルー神話を組み合わせた短編集。
横山茂雄『聖別された肉体』などナチスとオカルトの関わりは史実。そこにクトゥルー神話が絡む虚実入り混じった歴史物として楽しく読んだ。切り裂きジャックや東欧の吸血鬼も出てくる贅沢ぶり。悲惨な目に遭っても、どうせこいつらナチだしな…と流せる。
巻末の詳細な注釈がすごい。
岩城裕明『呪いのカルテ』
幽霊とは人の生の痕跡、ぬくもりや香りや日焼けのあとと同じ名残のようなもの。それを残留思念体と呼ぶ。残留思念体は無害な存在。しかし心的外傷等によって干渉型思念体へと変容することがある。干渉型思念体は放っておくと悪霊になり身近な人に憑くようになる。
というのが本書における幽霊/悪霊の定義。
心霊科医の主人公が遭遇する幽霊のケースがどれもひねりがあって面白い。
幽霊はなぜ服を着ているのか? 幽霊は時間とともに成長するのか? 自分を人だと思い込んでいる犬が死んだら犬の幽霊になるのか、人の幽霊になるのか? 等々の問いに対して合理的に解釈していくところがとても好みだった。
平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』
衒学的、饒舌な文体。
「Ωの聖餐」「無垢の祈り」「オペラントの肖像」表題作がよかった。
倉阪鬼一郎『ブラッド』
次から次へと人が死ぬ。
辻村深月『闇祓』
闇ハラスメント、略して闇ハラって語が素晴らしい。
「精神・心が闇の状態にあることから生ずる、自分の事情や思いなどを一方的に相手に押しつけ、不快にさせる言動・行為」
学校、住居、会社を舞台にしたモラハラの数々。相手を支配してコントロールしようとするサイコパス的な「家族」たち。読みながら嫌な気持ちになるが面白すぎて読むのをやめられない。一晩で読了した。映画化してほしい。
絶妙に現実にありうるハラスメントを描いているからリアリティがある。恋人からのモラハラ、軽薄で非常識なグループライン、ママ友間のヒエラルキー、年上の部下へのパワハラなど。モラハラ男、くそうぜえ。俺好みの髪型にしろとかスカート履けとか圧かけてくる男、実際いるよな。鬱陶しい。自由を阻む奴は敵だ。
新名智『虚魚』
ホラーは人の不幸や死を娯楽として消費するジャンル。それについてメタ的な視点から考察される。俺が『文庫版 近畿地方のある場所について』を読んで思った違和感が書かれていて嬉しくなった。
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人はなぜ怪談を求めるのか、についても言及される。人生にも世界にも意味なんてない。でもそれじゃ救われないし怖くて耐えられないから、人は無理やりにでも出来事に意味を見出そうとする。偶然も呪いも本質は同じ、ただ解釈が違うだけ。
斜線堂有紀『本の背骨が最後に残る』
耽美的、幻想的な短編集。文章が素敵で酩酊する。ホラーとしてはあまり怖くない。が、収録作すべて面白かった。
表題作、「痛妃婚姻譚」「『金魚姫の物語』」「本は背骨が最初に形成る」がとくによかった。どの話も女性キャラクターが魅力的。
冲方丁『骨灰』
東京の地下のあちこちに祭祀場があるという設定は事故物件ものへのアンチテーゼともとれる。江戸時代の火事から関東大震災、東京大空襲と、東京は人が死んでいない土地がないくらいのものだろう。その上に建築しているのだからどこの家も事故物件みたいなものだ。
*1:そうか?
















